佐藤優 テロリストを生み出すメカニズムとは?

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8/24(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

テロにも流行がある
6:29~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

スペイン バルセロナ テロ現場

スペイン・バルセロナのテロ現場では市民らが追悼の花や「テロに屈せず立ち上がって団結しよう」などのメッセージをささげ、冥福を祈った(バルセロナのランブラス通り)2017年8月18日 写真提供:産経新聞社

スペイン連続テロ事件 爆発物を使わないテロは個人やローカルネットワークの犯行

今月17日にスペインのバルセロナで起きたテロ事件。乗用車が暴走し、路上の人々が次々となぎ倒され合わせて100人以上が死傷しました。作家で元外交官の佐藤優氏は、今回のテロは爆発物によるテロとは少し違うと指摘します。さらにテロリストが生み出される過程には刑務所や貧困など様々なメカニズムが存在すると言います。

高嶋)相変わらずテロがすごいですが、先週末に起きたスペインの連続テロ事件は車が繁華街に突っ込んだという。以前日本の秋葉原で同じようなのがありました。

佐藤)ありましたね。ああいう車で突っ込むという形が最近のテロの流行になっていますよね。

高嶋)そうですね。ニュースでもすごいのがありましたし、各地で起きています。

佐藤)これはどういうことかと言うと、組織的な関与が薄いテロということなのです。つまり個人が思い詰めて行う、あるいはローカルネットワーク、要するにイスラム国本体から指示を受けるのではなくて、数人~十数人のネットワークで自分たちの判断で行っているテロで、爆発物を入手するのは簡単ではないですから、爆弾を使わない形でのテロが起きるということですね。


テロリストは刑務所の中でスカウトされる

高嶋)服役中の受刑者と刑務所で接点があったと報じられていて、それが指導的な役割を果たしているというような。これはどういうことなのですか?

佐藤)日本の刑務所のイメージだと、例えば拘置所というのは独房に入れられて外部との接触が厳しい、ところがヨーロッパの拘置所は電話ができますからね。さらに刑務所は懲役(服役中の労働)が無いのですよ。だから昼間は自由で、皆で映画やテレビを観たりスポーツをしたり会合をしたりしているのです。
その中にコソ泥とか薬物で入って来た人がいるでしょう。そういった人たちに服役中のテロ事件の親分が「お前な、そんなちっこいことやるんじゃない。歴史に残るでかいことをやれ。それで男になるんだ」というような感じに囁いて。
日本だと大体刑務所で広域団体や広域暴力団にリクルートされるというのがあるのですが、それと似たようなことが起きている。テロリストが刑務所の中に入ってしまうというのがけっこう多いのですよ。

高嶋)刑務所の中で話をしている時間もけっこうあるのですね。

佐藤)しかもそれは言論・表現の自由だから保障されていると。

高嶋)それで語る方は、自分が5の罪を犯したとしたら話を盛って10くらいで「俺はすごいことをやってきたぞ」と。

佐藤)それと同時に「聖戦(ジハード)に加われば死なないんだ。永遠に生きられる、天国に行けるんだ」とこういうことを言うと、1回刑務所に入ってしまって人生ドロップアウトしたという人間は新しい救いの道ができたように思えてしまうのですよね。


テロ集団はISだけではない テロリストが生まれるメカニズムとは?

高嶋)それで今回のモロッコ系というのは何を意味しているのですか?

佐藤)例えばジブラルタルはイギリスの植民地ですが、そこからフェリーで30~40分でセウタというモロッコの対岸のスペインの植民地に行けるのですよ。そのセウタからまた少し行くと、生活水準が全然違う。ものすごく低い、そういう状況のところですから。
アフリカと比べれば高いですが、しかしヨーロッパの中で比べれば低い、そういったところで当然経済的な理由での移住者が増えて来るわけですよね。しかし肌の色が違う、言語・習慣が違う、だから差別に晒されるわけですよ。その中で「いつか見ていろ……!」というような気持ちを持っている人たちが出て来るわけですね。

高嶋)そういうのとさっきの刑務所の話が合体してしまうと。

佐藤)結合します。そういう不満を持っていた人たちはかつて共産主義の方向に行ったのです。共産主義的な過激派になるのです。
過激派って流行があるのですよね。あるときは共産主義が最高で、日本でもそうだったじゃないですか。学生運動でも60年代は共産党ではなくていろんな過激派のセクト、ところが70年頃になるとノンセクト・ラジカルという組織に加わらない黒ヘルの人たちが流行する、ところが今度は90年代くらいになると宗教、オウム真理教とかになってくる。だからこれは考え方からすると過激派が宗教家していると見ることができるわけですよね。
だから一定の数がいれば、小学校や中学校でも学年で1人や2人すごく極端で変わった奴がいたでしょう。日本の国全体でもスペインの国全体でも、過激な思想を持っている極端に変わった人っているわけですよ。

高嶋)それが今IS―イスラム国というのが世界を席巻したので、そこにぶら下がっちゃう奴がすごく多いのだと。

佐藤)だから別にISの理屈をよく知っているとかではなくて、それが何となく格好良いと。

高嶋)逆に言えばISを壊滅させたってそういう一定程度いつもいる不満分子や過激な奴というのは必ず他にすがって出て来るということですね。

佐藤)ただし、例えばマルクス主義系の過激派だったら過激な思想を持っていることと行動に移るまでの距離がありますよね。イスラム国はそれが近すぎる。思想=即行動になる、だから危険度は大分違います。

高嶋)そうか、じゃあ世界中に一定程度そういうものすごく影響を受ける奴というのは必ずいて。それにも流行があるというのが面白いですね。

佐藤)だから今イスラム国というのは流行なのですね。これが思ったらすぐ行動という方向でやって、しかも共産主義系の過激派だったら市民社会で命が大切ですから。この人たちは「死後の命」と言ってちょっと違う理屈まで入ってしまっていますから面倒臭いのです。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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