なぜプーチン大統領がシリアで停戦命令を出すのか?
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2月27日(火)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!④
東グータ地区での一時停戦命令
7:17~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター高橋和夫(国際政治学者・放送大学教授)
プーチン大統領がアサド政権軍へ停戦命令
ロシアのプーチン大統領はシリアの首都ダマスカス近郊の反体制派地域で続く戦闘を現地時間の27日から毎日、時間帯を決めて停止するよう命じた。この地域では市民が巻き添えとなる空爆が続いていて、停戦となる時間には民間人の脱出ルートが設けられる。
シリアでは過激派組織IS(イスラム国)やアルカイダなどを標的にした軍事作戦以外に、アサド政権軍が最近、首都ダマスカス近郊で反体制派が支配している東グータという地域を激しく攻撃しています。この東グータというところは反体制派にとっては首都ダマスカス近郊に残る最後の主要拠点でして、反体制派のイスラム軍や、国際テロ組織アルカイダの流れをくむ過激派ヌスラ戦線などが立て籠っています。
そこにアサド政権軍は空爆を続けていまして、市民の死者の数が今月18日以降で560人を超えています。国連のグテーレス事務総長はこの地区を「地上の地獄」と形容しています。25日の爆撃では周辺の住民ら14人が呼吸困難の症状を示し、内子ども一人が窒息死しています。爆撃をどこが行ったかわかっていませんが、症状から化学兵器が使用された可能性があります。反体制派はアサド政権軍が化学兵器の塩素ガスを使ったと訴えています。
国連安全保障理事会は24日に停戦決議を採択しましたが、その後も市民が巻き添えになっているということでロシアのプーチン大統領は、この東グータ地区での戦闘を現地時間の27日から毎日午前9時から午後2時まで停止するように命じています。この停戦時間中に民間人がこの地区から脱出するルートをつくるということです。
高嶋)「化学兵器使用か」という、前にもありましたが、これは全体的に言うと終局に向かっているのですか、シリアの問題というのは? どうですか。
終局へ向かうIS対策、新たなる段階と問題へ
高橋)IS対策という意味では終局に向かっています。また新たな段階にも入っている。新たな段階というのは2つあって、1つはアメリカがIS対策のために使ったクルド人です。クルド人をどうするのか、済んだから捨てちゃうのか、これまで戦ってくれたのだからクルド人の権利を認めるのかという問題。
もう一つはこのアサド政権を支援してイラン軍がシリアに入って来たわけですが、それをイスラエルは脅威だと感じている。だからシリアにおけるイラン軍の存在をイスラエルはどう見るのか、どこまで許すのか、そういうイランとイスラエルのシリアでの綱引きという2つのポイントがあると思います。
このグータは実は既に内戦が終わりつつある前の、最後の段階だと思います。グータにはお話にあったようにヌスラ戦線というかアルカイダ系のテロリストが立て籠っていますから、そういう意味ではアサド政権側としては停戦違反じゃないと、国連決議はテロリストとの戦いを続けて良いと言ってるじゃないかということなんですけどね。象徴的なのは停戦命令というのは良いですよ、良いですけどね、シリアで戦争してるのにロシアが出すこと無いでしょ。アサド政権とロシア、クルド人とアメリカ
高嶋)指図をね。
高橋)だからやはり、この戦争はロシアが仕切って来たっていうのが如実に出ましたよね。
高嶋)アサド政権はロシアを頼ってずっとやってきて、相当追い込まれましたが、結局は生き延びちゃうようなそういう感じですよね。
高橋)そうですね。ロシアのお陰で生き延びたから、ロシアが停戦命令を人の国に入って来てやってるわけです。ロシアとしては俺が助けてやったんだからといことでしょう。
高嶋)そうすると、西側の方はこれで仕方ないなと下がるんですか?
高橋)クルド人の地区はアメリカが支援しています。アメリカがどうするかということでしょうね。アメリカがもうひと勝負仕掛けるのか、ごめんなさいと言って出て行くのか。もうひと勝負する元気をトランプ政権からは感じないですね。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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