【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第383回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、3月31日に公開となる『ANIMAを撃て!』を掘り起こします。
“ANIMA=魂”の躍動を描いた青春ダンスムービー
クラシックバレエのカンパニーに所属し、ダンサーとしての将来を嘱望されている果穂は、留学支援のための試験に挑むものの、クラシックなダンスを踊っている自分自身に違和感を抱いていた。そんな果穂の耳に飛び込んできたのが、ホールの倉庫から聞こえるドラムの音色。その音の主は、ホール職員で元ドラマーの伊藤。一次試験直前に倉庫の中で、トウシューズを脱いで思うままに踊る果穂の姿を目撃し、伊藤は音楽への情熱を触発されたのだった。
そして果穂も伊藤が叩くドラムの前では、ありのままの自分を自由に表現して踊っていたことに気づく。果穂は最終選考の自由演目を、伊藤のドラム演奏でクラシックバレエではなく、コンテンポラリーダンスで挑むことを決意するが…。
コンテンポラリーダンスを通して本当の自分を見つけるヒロインの成長を描いた映画『ANIMAを撃て!』。
主人公の果穂役に新人女優の服部彩加、ドラムを通じて果穂と交流を深める伊藤役に小柳友を配し、ダンスとビート、言葉ではないコミュニケーションを瑞々しく表現した、爽やかな青春ダンスムービーが誕生しました。
「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017」のオープニング上映作品としてお披露目された本作。同映画祭は、埼玉県川口市にある映像制作の総合施設「SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ」で、毎年夏に開催され、地元の住民たちが家族連れで訪れています。
世界に先駆けてデジタルシネマにフォーカスを当て、これまで世に送り出したクリエイター陣も、アカデミー外国語映画賞を受賞したスサンネ・ビア監督やカンヌ映画祭パルム・ドール受賞のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、国内では『孤狼の血』の公開を控える白石和彌監督や『湯を沸かすほどの熱い愛』で国内の映画賞を総なめにした中野量太監督など、錚々たる顔ぶれ。
そんな中、本作は「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が若手映像クリエイターの発掘・育成を目的に長編映画を製作する企画の第3弾として誕生。
本作のメガホンを取った堀江貴大監督は初の長編映画『いたくても いたくても』が2016年の同映画祭コンペティション部門にノミネートされ絶賛された逸材。今作が商業映画監督デビュー作となります。
同映画祭ではこれまでにも、映画祭出身監督がプロの映画監督として活躍する活路を見出すべく、様々なプロジェクトを打ち出しています。私は映画祭の開催初期、数年にわたってオープニング&クロージングセレモニーで司会を務めさせていただいたのですが、その当時から、いかに映画祭で受賞した監督をサポートしていくか、そして彼らの作品を“映画興行”として成立させていくか…という課題を耳にする機会がありました。
どんなに素晴らしい映画でも、観客の元に届けるべく上映されて、初めて“映画”としての意義を果たします。映画祭発で企画・製作された『ANIMAを撃て!』が劇場公開されるのは、映画祭の将来への大きな布石となることでしょう。
ANIMAを撃て!
2018年3月31日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:堀江貴大
出演:服部彩加、小柳友、黒澤はるか、藤堂海、中村映里子、大鶴義丹 ほか
©2017 埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
公式サイト http://anima-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/