改正入管法に対する2つの疑問

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月11送)にジャーナリストの有本香が出演。昨日閉会した臨時国会について解説した。

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政治 参院法務委員会で出入国管理法改正案の採決が行われ横山信一委員長へ詰め寄る与野党議員ら=2018年12月8日未明、国会・参院第23委員会室 写真提供:産経新聞社

臨時国会が閉会~安倍総理が会見

安倍総理)年内に政府基本方針や、分野別運用方針、そして外国人の受け入れ、共生のための相互的対応策をお示しするとともに、本改正法を施行前には、政省令事項を含む法制度の全体像を国会に報告し、制度の全容をお示しします。

臨時国会は昨日48日間の会期を終え、閉会した。改正入管難民法や、改正漁業法、さらに先の通常国会から積み残しとなっていた改正水道法などが成立している。

飯田)これを批判的に見る新聞の社説などは、「日程ありきだった。日程がつまって来たから最後は強行採決も連発だったのだ」というような書き方もありました。ご覧になっていかがでしたか?

有本)私は今回の国会では、本来であれば、安倍総理もそう考えていたと思いますが、自民党は憲法改正の草案を出すことを目標にしていたはずです。それが出せなくて、結局いちばんの目玉が改正入管法になった。政治的立場によって見方は違うかもしれませんが、改正入管法に関しては、右も左も両方から疑問の声が上がった。でもこの総理の会見のなかにもあったように、これから詳細を詰めます。しかもそれは「いろいろな省令で決めて行く」と言っています。こういう余地のあるものを決めたことには疑問が残りますよね。

飯田)省令ということは、この先何が決まったかなどは、決まった後に出されることはあっても…。

有本)そういうことなのですよね。しかも、省令ということはいまの政権だけでなく、これから将来政権が変わって行く、そのときの政権の法務大臣の裁量でいろいろなことが変わって行く可能性があります。時間の制限がありますが、2つほどポイントを申し上げたい。まず1つは、「省令でいろいろ決まって行きます」というのはかなり怖いことです。過去にも、改正入管法と近い意味で言う、一般永住権の永住資格を取得する要件、これが全く国会の議論や法律改正を経ないで緩和された経緯が、この10年以内にもあります。こういうことも起こり得るのです。

飯田)気付いたら変わっているということですよね。

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政治 参院本会議で出入国管理法改正案について答弁を行う安倍晋三首相=2018年11月28日午後、国会 写真提供:産経新聞社

183万人いる追加就労希望就業者に働いてもらうことで人手不足は緩和される

有本)そうです、かなり重要なことなのに。
もう1つは、改正入管法で、私も反対の立場で取材をして来ました。早い段階で気付かなかったのは痛恨だなと思っているのですが、まるで金科玉条のごとく、人手不足ということをすごく言われた。だから外国人を入れないといけないということになっていた。34万人を上限にするということに一応なっていますが、その14の分野も含めて、全国で183万人の追加就労希望就業者の方がいるのです。

飯田)追加就労希望。いまは働いていない方ですか?

有本)いや、いまも働いています。いま働いてない人だと、その業種でひょっとしたらお仕事が難しいということもありますけれど、そうではなくて。現在、その14業種で働いていて、もっと働きたいのに働かせてもらえない、「働かせ止め」にあっている人がいるのです。確かに残業などが多くなりすぎると、労働法に違反することになるから、という問題もあるのですが。もう一方では、残業になれば賃金割り増しになりますよね。これを経営者が嫌がるというケースもあります。だけど、人手不足と言われる業界のなかにも、いま本当に人手不足のピークで、この先ずっとこの状況が続くわけではないという業種もあるわけじゃないですか。例えば建設関係などはその可能性が高い。オリンピックが終わったらどうなるのかという。そういう点から考えても、この「追加でもっと働きたい」と言っている人たちを、もっと働いてもらえるような工夫はできないのか。例えば賃金の件で言うのならば、それを助成する助成金というものがあります。ただ、この助成金の使い勝手が悪くて、ほとんど使われていないのです。これは私も、もうちょっと早く分かるべきだったなと思うのですけれどね。それらの工夫をして、もちろん183万人と言っても地域の偏在があるから、必ずしもこれで183万人分を解決できるわけではありませんが。そういう人たちにもう少し多く働いていただくことで、大分人手不足は緩和されるのではないですかね。

飯田)しかも、これから教育するわけじゃないから、すでにスキルはある。それを見ると、経済界が人手不足人手不足と言ってこの法案をどんどん後押しして、「結局安い労働力が欲しいだけでしょう」って思ってしまいますよね。

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政治 外国人労働者・野党合同ヒアリングで技能実習生ら(左)から聞き取りを行う野党議員ら(右奥)=2018年11月8日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

いまの日本人の労働者がより働けるためにコストを使うべき

有本)そうだと思いますよ。安く使い倒せると言うと言葉は悪いですけれど、そういうことなのです。それと、飯田さんともこの番組で話題にしたと思いますが、例の「働き方改革」が今年あったでしょう。これもまた評判が悪いのです。だからこれとの兼ね合いで考えると、いまいる従業員、大半が日本人でしょうけれど、そういう人を働かせられないという状況があって、ましてや賃金の問題もあって、それで外国人を入れると言う。
だけど、社会全体として考えたときに「入管庁」というものを今度作りました。入管庁を作ることに一定の意義はあると思います。いままでの出入国管理が緩かったことを考えると、厳しくするためには、そういう庁を作るのは良いと思います。だけど早くも近い将来、省に格上げしたほうがいいのではないかという意見があります。それはちょっと本末転倒じゃないですか。これは移民政策です。移民を受け入れる為に莫大なコストがかかるわけでしょう。それならば日本人の従業員により働いてもらうために、そこにコストを使う方が良くないですかね。あるいは、もっと根本的な問題として、少子化対策に大きな国としてのコストを割くべきなのです。そうすることで、若年労働人口の減少ということにも歯止めをかけて行けるのではないか。それをやらないで、外国人を入れることに莫大なコストを使って行くというのはどうなのだろうと思いますね。

飯田)働き方改革の話もありましたが、これも残業ばかりが取り上げられますが、本来は例えば、いま働いていないロストジェネレーション世代の人たちを、もっと社会に出て来てもらおうという部分も本当はあったはずなのですけれどね。

有本)そこがかなり大事なところだったのですが。

飯田)そうすれば30万人はまかなえるのではないのかと思いますけれどね。

有本)どうも、目先の利益だけ見ていて、いろいろなところでちぐはぐなことが起きていると思うのです。もっと言えば、働きたいけれど事情があって働けない人が200万人以上いると言われています。例えば親の介護を抱えているとか。こういうところをマクロで見て、大きく見直すことをしないと、よく分からないけれど対処療法とか、声の大きなところに答えて行くということをやっていると、非常におかしな方向に歪んで行ってしまうと思いますね。

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