安倍内閣が入管難民法改正案の成立を急ぐのはなぜか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月29日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。外国人労働者受け入れ拡大問題について解説した。

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政治 参院本会議で出入国管理法改正案について答弁を行う安倍晋三首相=2018年11月28日午後、国会 写真提供:産経新聞社

入管難民法改正案が参議院で審議入り

外国人労働者の受け入れ拡大へ向けた入館難民法改正案の審議が、昨日参議院で始まった。安倍総理は今国会での法案成立と、来年4月から新たな制度を導入する必要性を強調している。

安倍総理)新たな外国人材の受け入れが、我が国の社会、経済活動に一定の影響を及ぼすことに鑑み、ご指摘の通り外国人材受け入れの規模、必要性等をよく見通しながら、制度を運用していく必要があります。そのため、政府基本方針においては、特定技能の在留資格にかかる制度運用の分野横断的な基本方針を示すとともに、分野別運用方針において、業界ごとに異なる雇用情勢、政策的要素、業界の特性や需要等を勘案しつつ、5年ごとに、向こう5年間の受け入れ見込み数を示し、基本的な受け入れ数の上限として運用して参ります。

飯田)衆院を通過して、今度は参院です。メールでいろいろなご意見をいただいています。群馬県館林市在住のラジオネーム“サバ缶”さんから、「入管難民法が参院に移ります。野党はこの法案を『スカスカだ』と批判していますが、それならなぜ中身を詰め込むような修正案を提出しないのでしょうか?」というご意見。それから千葉県花見川区在住の女性“しげみ”さん(75)からは、「とても支持できません。なぜそんなに急ぐのでしょう。中身が煮詰まっていないと言われていますよね。でも、野党も言葉尻を捕らえた質問ばかりで中身がない。きちんと対案を出して議論したらいい気もします。この件に関する安倍内閣は横暴だと思います。賃金を上げたくない経営者側にベッタリ寄り添った改正案じゃないですか」というご意見をいただいています。

鈴木)「なぜそんなに急ぐのか」についてですが、これは取材をしていると、あえて拙速なのでしょう。この問題は実は自民党内でも「移民政策につながるから反対」とか「イデオロギーとしても反対」とか、いろいろな意見があります。そして、みなさんが指摘するように多くの問題があります。

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政治 外国人労働者・野党合同ヒアリングで技能実習生ら(左)から聞き取りを行う野党議員ら(右奥)=2018年11月8日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

すべての問題を解決しようとすると1年はかかるため、あえて拙速に動いている

鈴木)例えば外国人研修生が時給400円くらいでまともにお金が貰えない問題。それから留学生のアルバイトは許可されているけれど掛け持ちばかりで、「語学留学が名目なのに、結局お金稼ぎに来ているじゃないか!」とか、いろいろな問題がある。
また、家族が一緒に来るとなると、生活や保険の問題はどうなるのか。最近僕が取材しているのは、医療問題や教育問題についてです。
まず医療について。外国人労働者が医者に行くと、まず言葉の壁がある。病気の診断はまさにしっかりした意志疎通が必要なのに、そこに壁がある。すると医療現場に通訳を用意することになりますが、その給料は誰が払うのか。医療機関が全額負担するのか。このような言葉の問題があります。
次に、教育について。家族帯同となると、小中学生や、それ未満の小さな子供もいますよね。彼らはどのような学校で、どのような教育を受けるのか。こんな話も全然煮詰まっていない。
そういう意味でもとにかく拙速です。しかし、いろいろな問題があるから、本気で時間をとって審議すると、1年以上かかる大変な時間になってしまう。足下の自民党からもいろいろな意見があるということで、とにかく締め切りを決めて一気にやる必要がある。そこが背景の1つだと思います。

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現状に法律が追いついていない

飯田)現在すでに教育実習生や留学生として外国人はおよそ128万人、日本にいます。その人たちの管理をきちんとしようというのが1つ。
そして、どんどん門を広げて単純労働者の受け入れを求める。この2つがごっちゃになっていますよね。

鈴木)法律の性質上、「生煮え」と表現する人がいますが、私は中身がないのだから「空焚き」だと思います。具材を入れずに炊いている感じです。でも、そうしてでも急ぐ背景は「新しい形を作る」というより、むしろ「現状がどんどん進んでしまっている。留学生がどんどんアルバイトをしている3K職場はたくさんある。そういう現状に法律が追いついていなかったから、まずは現状に法律を合わせる」というのがメインになっている気がします。新たな外国人受け入れをどうすべきかについて空焚き状態でも、とにかく現状に法律を合わせなければいけない。そんな感じがします。
ある人は将来を見据えて移民政策や教育はどうなるのか、先のことを議論していますが、実は法律そのものはとにかく現状に合わせる必要がある。飯田さんがおっしゃった2つのズレは、そういうことが原因だと思います。

飯田)現状を追いかける部分と、プラスαで基本法みたいなものを作ってから、中身を後でもう1回議論とか、できないかな、と思います。

鈴木)数もありますから、通したとして、来年4月でないといけないのか。もう少し細かい省令がいろいろ出て来ますが、大島議長が「とにかく国会でそれをもう1度しっかりやれ」と言っています。そこの部分をもう1年くらいかけて議論してもいいのではないか。法律を通した後にもう少し時間を持つのも、1つの方法だと思います。
この辺は世論を見ながら安倍さんがどう判断するかです。ただ、延ばして議論した場合、この問題はいろいろな見方があるから、夏の参議院選挙などにも影響して来る可能性がある。すると、政局的にはやはり4月までにまとめたい。だけど、そうなると本質から外れてしまう。日本が外国人に開かれていくか、移民受け入れも含めて、大事な話を議論するいいきっかけですよね。

飯田)堂々と選挙で議論するメインテーマになりますよね。

鈴木)そういう風にやるのが、いちばん日本の将来を考えた、1つの進め方だと思います。そこは安倍さんがどう決断するのか見たいですね。

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