税制改正~「ポイント還元~」ではなく、議論すべきこと

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月13日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。税金と社会保障の問題について解説した。

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来年度の税制改正大綱~与党税制調査会が決定延期

自民党と公明党の税制調査会は昨日、来年度の税制改正大綱について、おおむね内容を固めた。しかし、未婚のひとり親への支援策をめぐり両党の意見には隔たりがあり、決定は明日以降にずれ込む見通し。

飯田)そもそも税制改正大綱とは、翌年度以降に実施する増税や減税、新しい税金の導入などについて具体的にまとめたものです。まずこの大綱を与党税調が作り、通常国会に税制改正法案が出されます。税の大きな体系を決める大作業ですよね。

鈴木)今週、別件で税制調査会メンバーの国会議員に取材したのですが、4~5回取材日程が変更になったのですよ。この税制調査会の用事が急に入ってしまったからです。それくらい、大詰めの議論をしているということですね。

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シングルマザーへの支援策~税の問題と同時に女性の社会問題

飯田)冒頭でも言いましたが、未婚のひとり親、いわゆるシングルマザーの方々への支援策について。例えば旦那さんが亡くなられた奥様には寡婦控除があるのですが、同じものを結婚していない場合は控除がなくて、その分税金が増えてしまう。それがおかしいと主張しているのが公明党ですね。

鈴木)これも時代や、人間の生き方、価値観の問題です。女性が社会でどうやって生きて行くかとか、いろいろなことを含めて、必ず当たる問題だったと思います。私としては、むしろ議論になるのが遅いくらいです。自民党などの反対意見のなかには「最初から『結婚しない』という選択肢が増えて行く。すると家族の問題に関わって来るから、こういうことをやってもいいのか?」という議論があります。これも分からなくはないですが、時代によって価値観は多様になって、どんどん増えている。そのなかで「これはやはり認めるべきじゃないか」という声もある。これも、「税の問題」と言うより女性の生き方などの社会問題としての議論なのです。きっかけは税ですが、そういう風にして、この問題は捉えるべきです。これが揉めたことで決定に至らなかったようですが、私は議論が揉めて、それが公になるのはいいことだと思います。

飯田)確かに。いままでもあったけれど、全然目に留まって来なかった問題の1つですよね。

鈴木)あえて避けて来た部分もあると思います。政治はそういうことが多いです。そして、いよいよ追いつかなくなって、「いま議論して法整備しないと」となる。この間の入管難民法改正もそうかもしれません。増える外国人労働者に対して法律や制度が追いついていなかったから、急いで合わせる必要があった。女性の働き方や社会での地位の問題、生き方や子育て問題。これらはもっと早い段階から議論すべきテーマでした。税の問題としてではなく、社会全体をどう変えて行くかです。まさに「日本の国をどうして行くのか?」という話だと思います。

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社会保障と財源についてしっかりとした議論を行うべき

飯田)今回の税制改正大綱は、どちらかと言うと「来年10月に予定されている消費増税のショックをどう和らげるか」というところに主眼が置かれていますよね。

鈴木)私は別に財政再建派でも財務省の応援団でもないですが、消費税に関して言うと、「少子高齢化で財源が大変なことになるけれど、社会保障はやらなければいけない。そのための財源として、恒久ではないけれど安定している財源として消費税を改正しよう」という三党合意が民主党時代にありましたよね。国民は消費税はイヤですが、事情を考えて理解を示した。その路線がベースにあるべきだと思います。今回の消費税10%案も、やはり社会保障や財源のために必要だから、ある意味では三党合意の流れがずっと続いている。多少は使い道が政権交代して変わっていますが、そこをベースに考えたら「消費税を上げるから、緩和するためにポイントを導入して~」とかは却ってややこしい。それは堂々とした消費税論議から逃げている気がします。やはり財源と社会保障をどうするのかを、社会保障の形も含めて「国民の皆様は痛い思いをするけれど、社会保障に財源が必要です」とそちらへ議論を向けるべきだと思う。だから「一時的にポイントや商品券~」は、ちょっと筋が違う気がします。

飯田)あまり議論にならないですが「そもそも消費税でいいのか?」とか。もともと、介護にしろ年金にしろ、保険料は取られているわけですよね。それだけで全部は賄えないから、税金を増やすことになった。その保険料を上げる代わりに、サービスを維持するのか、サービスを削るのか。

鈴木)そこも含めて、社会保障とセットの話なのです。いつも言っていますが少子高齢化はすごいスピードで進んでいて、止まらない。そういうなかで税収も減って行く。それでいて、社会保障は充実させられるのかどうか。もう本当に二律背反で、お互いに矛盾するようなことが起きる。そのなかで「財源をどうするか?」というときに消費税があるわけです。だから、そこを正面から議論すべきです。

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納税は義務ではなく「政治に意見をすることができる権利の取得」である

鈴木)もう1つ言いたいことがあります。学校の授業で「納税は国民の義務」と教えられますよね。私はそこに少し違う意味合いを持たせています。私は税金は権利だと思います。「税金を払った分、国民は政治にちゃんと注文を付ける権利を持つ」ということです。「消費税は10%で払います。そのかわり、社会保障はこうすべきです」と同時にきっちりものを言える権利でもあると思います。政治側は意見を反映できるかどうか、正面から議論をしないと。例えば以前の「国民に痛みを強いるなら、議員自らも定員数を削減して、身を削りましょう。そういう努力をして行きましょう」みたいにね。何%か上げるたびに「どうしよう。ポイントを還元しようか。小売店と大きな店では対応が違って~」とか、こんなややこしいことで、目先でごまかして行くのはどうなのかな。

飯田)議論が小さくなっている気がしますね。それこそ、小泉政権時代は改革云々で批判もありましたが、「景気を拡大すれば税収も増える」とする上げ潮派と、「税率を上げないと財政再建ができない」とする財政再建派の、大きな議論がぶつかり合っていましたよね。

鈴木)一騎打ちですよね。そこでやはり国民も非常に考えたわけでしょう?

飯田)「どっちがいいかな。景気が良くなった方がいいよな」みたいな。

鈴木)当時はそうでしたが、現在は社会保障が世論調査でも、ナンバー1のテーマです。少子高齢化を予測して、国民がまずこれをやって欲しいという時代になって来ているのです。そうなったら、もしかしたら今度は財政再建派の「仕方ないのかな」という意見が出て来るかもしれない。そういう議論をするのが今度の消費増税のタイミングだと思います。

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社会保障は世代間で分断せずに議論すべき

飯田)社会保障は世代によっても捉え方が全然違いますよね。

鈴木)社会保障の議論を、高齢の方は危機感を持って早くやりたいと思う。しかし若い人からすると「いまの社会保障は高齢者中心。自分たちは何なのか」という感じ。でも、これが分断されるのは、政治権力からすると収めやすくなってしまうのです。だから、ここは世代で分断せずに、若い方も年輩の方も一緒の土壌で議論することが必要だと思います。

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