ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月21日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。フランス政府によるルノーと日産の統合要求について解説した。
フランス、日産にルノーとの統合を要求
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の失脚に関連し、フランス政府が自動車大手ルノーと日産自動車の経営統合を日本政府に要求したことが明らかになった。ルノーと日産が共同で持ち株会社を設立し、その傘下に両者を置く案も示したと見られている。
飯田)日経新聞が報じたものですが、ブルームバーグはこんな報じ方もしています。「ルメール仏財務大臣が、日産とルノー統合の意向について否定している」と。持ち株会社にぶら下がる形での統合は否定して、現在のアライアンスを維持するというようなことを言っているとのことで、情報が錯綜していますね。
須田)この日産、あるいはゴーン被告の刑事事件の問題に関して言うと、かなり情報が虚実入り混じっているのですよ。何が本当で何が嘘かを切り分けることは非常に難しく、正式要求しているのか、水面下でいくつかの条件を提示しているのかというレベルなので、その1つを取り上げて決め打ちするのは違うということだろうと思います。ただ、この経営統合に関して言うと、いままでいくつものオブラートに包まれていたものがいよいよ浮き彫りになって来たのではないでしょうか。いままでカルロス・ゴーン被告に日産の経営投資を個人的に委ねていたものを、今度は仕組みの上でルノーが日産を支配する形を作って行こうというのは間違いないのだろうと思うのです。どういったやり方がフランスにとって有利なのか、ということを模索している段階に入って来たのだと思います。
ルノーが43.3%の持ち株比率であるという現実
須田)その一方で忘れてはならないのが、かつて日産が経営危機に陥った際に2兆円近い有利子負債を抱えて、にっちもさっちもいかなかったことです。場合によっては経営破綻という状況に陥っていて、国内ではそれを救済する動きがなかったなかでルノーが手を差し伸べて、数千億円の資金を出したという事実は間違いありません。結果的にそれが43%を超える持ち株比率になっている事実が現実にはあります。騙して持ち株比率を上げたわけではありませんから、これをフランスとしては大きなアドバンテージとして活かして行くのかなと。もう1つ、ルノーはフランス政府そのものが大株主になっている企業です。一方、日産は日本政府が株主になっているわけではないですから、日本政府は当事者ではないのですよ。フランス政府は当事者ですから、交渉の前面に出て来るのは当たり前の話だと思います。
飯田)経営危機のときに、普通の会社であれば子会社化してしまいますが、そういうことをすると軋轢があるのでゴーンさんをまずは入れて、経営を立て直すことを優先した経緯がありますよね。他のところは子会社化して、やっぱり上手くいかずに失敗するケースが散見されます。海外の自動車会社同士なのに上手くいっているのは、このアライアンスという形があるからだ、という指摘もありました。
かなり手ごわい相手となるフランス政府
須田)それが結局不透明になってカルロス・ゴーン氏に権力が集中し、やりたい放題になったというものがあるわけです。仕組みの上で子会社になっていれば、飯田さんが言ったようにいろいろと軋轢が出て来るかもしれないけれど、少なくともすっきりした形だったのではないかと思います。
ただフランス人は、いままでカルロス・ゴーン被告が前面に立っていたため、あまりストレートにやり取りがなかったのでその存在が見えて来ないのだけれど、本当にわがままです。一方的に自らの要求を出して来ます。そういう防波堤が無くなったということを、我々は受け止めるべきです。相手のことなんて慮りません。自分たちがいちばん良い要求を前面に出して来ます。
飯田)そうすると、きつい交渉になるわけですか。
須田)欲望は剥き出しです。
飯田)かえってまずいことになっているのではないでしょうか……。
須田)43.3%のアドバンテージを持っていますから、下手をすると日産なんてイチコロではないかなと思います。日本政府は当事者ではありませんから、当事者だったらまた別なのですけれどね。
飯田)政府の方に取材をすると「政府と一緒なんて絶対にありえない。政府と一緒だったら日産はあんなに根回しが下手くそなことをしないでしょう」と。
須田)日本の国内報道だけ見ていたのでは、この本質は見えて来ないと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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