ボーイング問題の決着で見えて来る今後の米中関係

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(3月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ボーイング機墜落事故による米中関係への影響について解説した。

中国、ボーイング機墜落事故で対アメリカ貿易協議に影響か

エチオピアでボーイング社の新型旅客機が墜落した事故は、交渉が大詰めを迎えている米中貿易協議に影響を与えそうである。事故発生前、中国はボーイング機を大量購入するものと見られていたが、中国共産党系の機関紙が安全確認が大前提との見方を伝え、トランプ政権にとって貿易赤字解消を支える重要な存在である航空機輸出の行方が注目されている。

飯田)エチオピアで墜落事故を起こしたボーイング737MAX8について、去年(2018年)10月にもインドネシアで事故が起こっているということで、中国は比較的早い段階で運行中止、国内での運航は禁止だと通達を出しました。

須田)きょうあたりから情報が出て来ると思いますが、このボーイング737MAX8の運行に関して新しいシステムを導入しているのですよ。そこにトラブルが発生しているようです。航空機業界ではコックピット周りと言われますが、飛行機の心臓部分に関する仕組みについては、企業秘密中の企業秘密であるが故にボーイング社も簡単に開示しようとしないところがあり、原因究明、原因開明、そして対応については時間がかかりそうです。

ボーイング問題の決着で見えて来る今後の米中関係
これを機にアメリカに影響力を示そうとする中国

須田)中国はそこをうまく突いて来たなと思います。これから中国の航空機業については、爆発的に膨らんで行くと見られています。向こう20年間で世界の航空機需要の4分の1を中国が占めると言われていて、どのくらいかと言うと7,690機。金額ベースに直して1兆1千900億ドルです。100兆円規模の需要が発生すると言われています。中国としては、うまくこれを材料にしてエアバスを持っているEU、そしてボーイングのアメリカに対して影響力を示して行こうという状況になっていたのだと思います。そこに影を落としかねないということで、アメリカに対して揺さぶりをかけようという意図が明々白々にあると思います。
ただエアバスの方も、2階建ての大型については生産中止ということで大失敗しています。エアバスは経営的に厳しい状況に置かれているので、これを機に中国の需要を取り込もうと動き出します。アメリカとしても安閑とはしていられない状況です。

ボーイング問題の決着で見えて来る今後の米中関係

米中閣僚級貿易協議を前に撮影に応じるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表(左)、中国の劉鶴副首相(中央)、ムニューシン米財務長官(右)(中国・北京)=2019年2月14日 写真提供:時事通信

今回の対応が米中融和の見極めにつながる

須田)米中貿易摩擦は、異なった次元にある2つの事柄が複雑に絡み合っている。1つは貿易赤字の絶対額があまりにも膨らんでいること。中国のアメリカに対する貿易黒字、アメリカにとっては貿易赤字。これは何とかしなければならない。この問題意識は、トランプ大統領の問題意識です。
そしてもう1つ、アメリカトータルとしては知的財産権の問題。特にIT、AI分野に関する主導権を握るために中国を牽制しなければならない。
現状において、どちらの方に優先順位があるのか見極めることができないのですよ。つまりその2つを切り離して貿易赤字が一定程度解消されれば、米中は融和に向かうのか。または知的財産権の問題が解決しない限り、米中は融和に向かわないという見立て。この2つが並立的にあって、どちらなのか見極めようとするのが周囲の目です。
ボーイングの問題を取引材料に使って、アメリカがそれに折り合うような姿勢を見せ、知的財産権のトラブルに関しても譲歩するところを見せれば、重点はこちらにあったのだと判断ができる。そうすると米中の融和は、さほど遠くないところでやって来るのではないかという見極めになります。ですからこのボーイング問題による中国の対応を、じっくり見て行く必要があると思います。

飯田)これは一種のリトマス試験紙になるということですね。

須田)そうです。

飯田)トランプさんがよく言っている「貿易赤字を減らせ」という貿易にフォーカスした部分と、一方で副大統領のペンスさんが去年の10月に演説したことが象徴ですけれど、あらゆる面から、特に安全保障面で中国を批判する。でもペンスさんのあの原稿はペンスさんが自分で言ったわけではなく、いろいろな人が作っていると言われていますよね。そうすると総体としては、安全保障に軸足なのですかね。

須田)もちろんそうですね。知的財産権を巡る貿易問題は、安全保障と表裏一体の関係にあります。トランプさんの主張している貿易赤字はどちらかと言うと、20世紀タイプの貿易問題です。そうではなく、21世紀型の安全保障とリンクする貿易問題なのか。安全保障とリンクする貿易問題をいちばんアメリカは問題視していて、そこが解消されない限り米中は融和に向かないと思います。ただそうは言っても、トランプ大統領の考え方1つでその辺りも変わって来る可能性はあります。

飯田)最終的には大統領がサインしなければ何も進まない。

須田)その見極めが、今回のボーイング問題における決着で見えて来るのではないかなと思います。

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