水谷豊が監督作で浮き彫りにする“人間の心の奥底にあるもの”

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第616回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、5月10日から公開の『轢き逃げ 最高の最悪な日』を掘り起こします。


1件のひき逃げ事件が、多くの人の運命を狂わせる…。

水谷豊が監督作で浮き彫りにする“人間の心の奥底にあるもの”
ある地方都市でひき逃げ事件が起こり、1人の女性が命を落とした。車の運転をしていたのは、大手ゼネコンに勤めるエリート青年・宗方秀一。3日後に控えた結婚式の打ち合わせのため、勤務先の副社長の娘で婚約者の早苗をホテルに待たせており、不慣れな道を急いだ矢先の出来事だった。

動揺が隠せない秀一だったが、助手席に乗っていた親友・森田輝の「誰も見ていない」という囁きで、車を急発進させた秀一。その場から立ち去った2人は、早苗の元へと向かう。無事に結婚式を終え、秀一が人生最高の日々を送る頃、被害者女性の両親・時山光央と千鶴子は、深い悲しみに暮れていた。

ひき逃げ事件の加害者と被害者、そして事件を捜査するベテラン刑事と新米刑事たちの人生が複雑に絡み合い、やがて事件は予想だにしなかった“真相”へとたどり着く…。

水谷豊が監督作で浮き彫りにする“人間の心の奥底にあるもの”
30年来の夢だった“タップダンス”を題材にした映画『TAP -THE LAST SHOW-』で映画監督デビューを飾った水谷豊。監督2作目に選んだのは、極限の人間ドラマ。今回は、脚本にも参加。完全オリジナル作品で、卓越したストーリーテリングと強烈な心理描写で、登場人物たちの移ろいゆく魂に寄り添います。

水谷豊が監督作で浮き彫りにする“人間の心の奥底にあるもの”
重厚、かつ骨太な本作を引っ張って行くのは、水谷豊監督が日本映画の未来を託した…と言っても過言ではないほど、魅力的な若手俳優たち。

2人の主人公・宗方秀一役と森田輝役には、オーディションで選出された中山麻聖と石田法嗣。秀一の婚約者・早苗に小林涼子、そして事件を担当する刑事・前田には毎熊克哉と、フレッシュな顔ぶれが揃いました。事件が露わになるとともに浮き彫りになって行く“人間の業”と真摯に向き合う、彼らの姿は必見です。

さらに檀ふみ、岸部一徳らベテラン勢も加わり、監督の水谷豊は被害者の父役も兼任。群像劇に緊張感と豊かさを与えています。

水谷豊が監督作で浮き彫りにする“人間の心の奥底にあるもの”
以前、水谷豊監督とご一緒させていただいたときに伺ったところによると、若い頃はアメリカンニューシネマをはじめとする映画がお好きだったとか。

エンターテインメントの最前線に半世紀以上立ち続けている、その洗練されたセンスもさることながら、人間の本質を炙り出す洞察力も遺憾なく発揮されている本作。人間の底知れぬ心情に触れたとき、あなたの心に何が宿るでしょう。

水谷豊が監督作で浮き彫りにする“人間の心の奥底にあるもの”
轢き逃げ 最高の最悪な日
2019年5月10日(金)から全国ロードショー
監督・脚本:水谷豊
撮影監督:会田正裕
音楽:佐藤準
主題歌:手嶌葵 「こころをこめて」(ビクターエンタテインメント)
出演:中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、毎熊克哉、水谷豊、壇ふみ、岸部一徳
©2019映画「轢き逃げ」製作委員会
公式サイト http://www.hikinige-movie.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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