5月病を防ぐ! アナウンサーのストレス発散法

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「メディアリテラシー」では、フリーアナウンサーの柿崎元子が、メディアとコミュニケーションを中心とするコラムを掲載している。今回は、無意識に行っている呼吸に注目する。

5月病を防ぐ! アナウンサーのストレス発散法
【5月病と3C】
元号が令和に変わりました。街のあちらこちらで色紙に書かれた「令和」の文字を見かけ、新たな時代の幕開けと気持ちの高まりを感じます。

4月に入社した新入社員が現場に配属され、いよいよ社会人としての活躍がはじまります。しかし、この時期にかかるのが5月病です。長期の休暇のあと環境の変化に対応できず、こんなはずじゃなかったとストレスを感じるようになる5月病。初めての環境で周りとCommunicationをとらず、人と自分をCompare (比較し)Complex(コンプレックス)を持ってしまうからではないかと思います。

学生の間は好きな人とだけ付き合えばよく、そこに組織での難しさは存在しません。しかし、社会に出ると多種多様な人たちがいます。そのような新たな環境のなかで他の人と比較して、自分はダメだ、自分は能力がないとコンプレックスを持ってしまうのではないでしょうか。さしずめ3Cが引き起こす日本独自のシンドロームと言えるかもしれません。


【ストレスで声が出なくなる!?】

ストレスがかかると体に様々な変調をきたします。声が出なくなることもあります。ちょうど昭和から平成へ変わって間もなくの頃、皇室バッシングが起きました。これが原因で現在の上皇后美智子様は声が出なくなったと言われています。

実は、声を職業にしている私も、いまから12年ほど前に風邪をきっかけに声がかすれて行き、風邪が治ってもガラガラ声が続き、ついに全く高音が出なくなりました。いろいろ検査したものの原因はわからず、結局「しゃべらない」ことを義務付けられ、何日間か仕事を休まなければならなくなりました。どこも悪くないのに声が出ないのはなぜか。いま思えば悩みや不安を抱えていましたが、まさか声が出なくなるとは思いもしなかったので、ストレスを甘くみてはいけないなと実感しました。

5月病を防ぐ! アナウンサーのストレス発散法
【呼吸によりストレスを発散する】
スマホでストレス発散法を調べると、様々なゲームアプリが出て来ます。どれも“破壊”や“戦闘”などの言葉が並び物騒な感じがします。しかしそんなアプリに頼らなくても、いつでもどこでもできる発散法があります。

それは、深呼吸です。現代人は1日中パソコンの前に座って仕事をしているため、呼吸自体が浅くなっていると言われています。浅い呼吸は頭痛や肩こり、集中力の低下や不眠などを引き起こします。深呼吸は文字通り深く呼吸することで、体の隅々まで新鮮な酸素を送り込み、血流を良くし、自律神経のバランスを整えます。

深く呼吸するために意識してほしいことは、息を吐くことです。この吐く力が衰えていると、息を吸ってもたくさん吸うことができません。不安や極度の緊張により起こる“過呼吸”は、吸うことしかできないので呼吸自体が困難になります。吐くことができないのです。ですから深呼吸は吐くことを意識して行なってください。

では実際にトライしてみましょう。まず楽に息を吸ったあと、「すー」とゆっくり長く吐いてみましょう。10秒かけて吐いたら、次に鼻から思いっきり息を吸い込みます。その際に肺ではなく、おなかに息をためることを意識しておなかを膨らませます。いわゆる腹式呼吸です。そして初めは10秒×3回、次に15秒×3回と深呼吸を行なってみましょう。その際に前かがみになったり、後ろに反ったりしてはいけません。そして20秒ほどかけて吐けるようになれば、深呼吸をする土台ができますので少しずつ延ばしてみましょう。

「ちょっと感覚が難しいな」という人は、横になって実践してみてください。腹式呼吸は寝て行うとより自然にできます。おなかに息をためる感覚がわかると同時に、リラックスできてそのままよい眠りにつくことができます。

人間の体のなかで無意識に行われている生命維持活動のなかで、唯一意識的にコントロールできるのが呼吸です。習慣的に深く呼吸していれば、いずれ自然とできるようになり、前向きな行動に変わって行くことでしょう。自分で自分を上手くコントロールすることをお勧めしたいと思います。

5月病を防ぐ! アナウンサーのストレス発散法
【正しく声を出す意味】
次に、みなさんは声を出して話していますか? 声を出すということは、しっかり相手に聞こえるように発することです。「え?」と聞き返されたことがある人は、声が出ていない可能性があります。不思議と単に聞き返されただけでも不安になります。声が相手に届いていないだけなのに、まるで何かを間違えたかのように思え、急に自信がなくなりますよね。そうならないためにも前に声を出しましょう。

大きな声を出すためには、たくさん息を吸い込まなければなりません。正しく呼吸し酸素をしっかり体に送り込んでください。そして声を出すことは、実はストレス発散にも役立ちます。

例えばテニス選手がイライラ感を押さえるために「AH-!」と大声を出したり、自分を鼓舞するために「Come on!」と叫んでいるのを見たことがあると思います。また、感情が高ぶって声を上げて泣いたりすると、妙にさっぱりすることがあります。歌を歌うのも同じような効果があり、カラオケで好きなアーティストの歌を大声で歌うとスッキリするという方もいるでしょう。その状況は取りも直さず外に出すこと、アウトプットすること。まさに発散たるゆえんです。


【よい仕事をしよう】

ところで、今年の新入社員のタイプは「AIスピーカータイプ」だそうです。産労総合研究所の「新社会人の採用・育成研究会」が3月末に発表しました。多くの機能をもっているけれど、細かく設定する必要があるとのこと。能力が発揮できるかどうかは呼びかけ次第だというのです。

AIスピーカーへの最初の呼びかけは「Hi!」や「OK!」、あるいは個人名をフレンドリーに呼びかける構造になっています。私たちも呼びかけや声掛けを行う必要がありそうです。「おはよう、元気?」「◯◯君、どう慣れた?」と固くなっている新人君に話しかけることで、発散のきっかけになるかもしれません。密なコミュニケーションはよい仕事につながります。「AIにはできない仕事にもチャレンジしたい」という1996年生まれの彼らに、大いに期待したいと思います。

5月病を防ぐ! アナウンサーのストレス発散法

連載情報

柿崎元子のメディアリテラシー

1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信

著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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