黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、日経BP総研・上席研究員の品田英雄が出演。令和の時代にヒットするのは何かについて語った。
黒木)今週のゲストは日経BP総研・上席研究員の品田英雄さんです。令和の時代に、ズバリどういったものがヒットするのでしょうか?
品田)令和の時代は、再演やリバイバルが増えると思います。
黒木)再演。
品田)なぜかと言うと、平成の時代はエンターテイメント産業が大きくなりました。そうすると新作、新曲がたくさん欲しいから、音楽関係だったら毎月新曲をリリースしたり、芝居であれば新しいものをどんどん作りましょうということがありましたが、演じる人が変わると同じ芝居でもまったく違うように見えたりするではないですか。
黒木)宝塚でも再演ものは多いですし、ドラマでも増えています。
品田)そのように同じストーリーだと思っているものを、違う人がやることが増えて行くのかなと思います。新作をやるときは人間でなくても良いかもしれません。
黒木)CGやアニメでということですか?
品田)そうですね。別にリアルな俳優さんを否定しているわけではないのですが、ストーリーで驚かせたいクリエーターはいるわけです。スピルバーグ監督は無名の役者をよく使いました。なぜか聞いてみると、「この人はこういう背景を持っていて、こういう演技をする」というように、見る方が想像できてしまうので、そういう偏見をなくすために無名の人を起用していたと言うのです。
それと同じようなことを考えると、これから映像を作りたいという人は、俳優さんを使うという楽しみもありますけれど、「0からこんな人が作れます」という方が増えて来るのかなという気はします。だからストーリー主義か、役者主義かで別れるのではないでしょうか。
黒木)それも平成の流れとは違いますよね。歌の世界はどうでしょうか?
品田)平成は自分で作って歌うというシンガー・ソングライターが素敵と言われていました。作詞作曲の印税が入り、歌唱印税も入って来るので利益は大きいのですが、もうこんなに世の中に良い音楽があるのだったら、「そのいい曲を私が歌う」というカバーが多くなるのだと思います。いまカラオケランキングを見ると、昔の曲が多いですよね。
品田)平成の時代は、インターネットのなかに曲が全部入ってしまいました。アーカイブと言われて、聴く人にとっては先月リリースされた曲も、50年前のビートルズの曲も初めて聴いたときには新しいとか古いとか関係なく、新曲なのですよね。
黒木)なるほど。
品田)そうすると、昔の曲の価値がどんどん上がって行って、若い人たちが70年代や80年代の曲をよく聴いていて、「好きなアーティストはビートルズです」と言う。それは私たちの世代だろうと思うのですが、本当にそう感じている。時間差がなくなって来たことは大きいですね。
黒木)再演も初めて見た人にとっては新作ですよね。良いものが残って行くということでしょうか?
品田)時代によって人が求めるものは変化すると思うのですが、昔からあるカタログやライブラリのなかに、「これがいまの時代に合っている」というものを見つける能力と、それを観せる能力や演出する能力がヒットにつながるのだと思います。
品田英雄(しなだ・ひでお)/日経BP総研・上席研究員■1957年生まれ。
■学習院大学卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)に入社。音楽番組を担当。
■1987年に日経BP社に入社。記者としてエンタテインメント産業を担当。
■1997年に「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任。
■2003年に発行人を経て、2007年に編集委員に就任。
■2013年からは日経BP総研・上席研究員を兼任。
若者の文化や世の中の流行を分析するエンタテインメントの専門家として活躍。
■著書に「ヒットを読む」(日経文庫)がある。
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