悩みぬいて…「はやぶさ2」いざ2回目の着陸に挑む!

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「報道部畑中デスクの独り言」(第139回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、2回目のタッチダウンが近づく探査機「はやぶさ2」について解説する。

悩みぬいて…「はやぶさ2」いざ2回目の着陸に挑む!

「はやぶさ2」2回目の着陸決断を発表(左が津田雄一プロジェクトマネージャ、右が吉川真ミッションマネージャ 6月25日撮影)

探査機「はやぶさ2」の小惑星「リュウグウ」への2回目の着陸=タッチダウンの日が、刻々と迫っています。探査機は今年(2019年)2月に1回目の着陸、4月にはインパクタと呼ばれる衝突装置で人工のクレーターをつくることに成功しました。

JAXA=宇宙航空研究開発機構では、すでに7月9日から着陸に向けた運用を始めています。順調に行けば10日には降下を開始、着陸予定時刻は11日午前10時5分~45分ごろまでの約40分間(探査機時刻、日本時間。地上の時刻は通信のタイムラグの関係で約13分遅れる)。着陸地点の“的”は半径わずか3.5mの円です。そこで人工クレーターから舞い上がった地中の粒子を採取するのが最大の任務です

「はやぶさ2にとって、ある意味正念場。一番大きなヤマ場を迎えた」

こう話すのは、スポークスパーソンを務めるJAXA宇宙科学研究所の久保田孝教授。小欄でもお伝えしたように、2回目の着陸にはいくつかのハードルがありました。1つは「十分安全なタッチダウンシーケンスが設計できるかどうか」、もう1つは「1回目の着陸で砂塵により受光量が低下した光学系で支障ないかどうか」です。

受光量が低下した光学系…機体に搭載されたカメラと、LRFと呼ばれるレーザー光で小惑星との距離を計測する機器に、砂埃が付着していることを指します。感度低下による着陸の誤差が懸念されたのですが、着陸の目印となるターゲットマーカー(以下 TM)を見ながら自律航行が始まる最低高度を、1回目の着陸の際の45mから30mに低くするプログラムを組むことで、感度低下をカバーする工夫が施されたということです。

高度が低くなったのですから、“的”となる地点やその目印となるTMはよりはっきりと見えます。一方で、高度が低くなる分“視野”は狭く(3分の2)なるため、TMに沿って精度良く導くことが必要になります。誘導では位置決めと姿勢変化を同時に行い、着陸は垂直降下、ほぼ真下に向かって降りることになります。ちなみに着陸時にTMを捕捉できない場合はアボート=緊急離脱となります。


(第2回タッチダウン運用について高度8.5mからの探査機の動き/JAXA提供)

「淡々と計画通り、いままで積み重ねたものを、自信を持って進めて行ければと思っている」

着陸決断が発表された6月25日、責任者の津田雄一プロジェクトマネージャ(以下 津田プロマネ)はこのように語りました。

一方、7月9日、直前の記者会見では、JAXA宇宙科学研究所・國中均所長のメッセージも紹介されました。「第2回タッチダウンをキャンセルし地球帰還を優先させる考え方は、達成した成果を早期に刈り取り、着実に成功を収める安全で確実な選択肢と言えました」…この表現からは、「無理しなくても1回目の着陸で十分ではないか」という思いがにじみます。

國中所長だけでなく、海外の関係者からも同様の意見があったと言います。しかし、「『はやぶさ2』本体とチームの現在の実力で、安全性を担保した上で第2回タッチダウンを成し得ることが極めて高いことを確認しました」と、組織としての挑戦に「GOサイン」が出されました。

「地球に戻って来たときに、2回目の着陸をして本当に良かったという結果になることを期待している」と話すのは、ミッションマネージャのJAXA宇宙科学研究所・吉川真准教授です。

2回目の着陸は1回目と同様、大きく分けて3つの“節目”があります。着陸の際は探査機を傾けることでHGA(High Gain Antenna)と呼ばれるアンテナが地球を向かなくなるため、情報はドップラーデータのみになります。

ここで「周波数の変化=通常の機体の上昇」が確認されれば「着陸したとみられる」。HGAが再び地球を向き、「テレメトリ」と呼ばれる遠隔操作によるデータ取得が復帰、機体が正常だと確認されれば「着陸」。さらに「サンプラーホーン」と呼ばれる筒状の装置から、弾丸が発射されたことを示す温度上昇が確認されれば、「弾丸発射を確認」…一連の動作は「成功」となります。

悩みぬいて…「はやぶさ2」いざ2回目の着陸に挑む!

「はやぶさ2」着陸の動きを模型で説明する久保田孝スポークスパーソン(7月9日撮影)

実際には多くのデータ検証が必要になりますし、地中の砂粒が採取できたかは地球に帰還しないとわかりませんが、3つの節目ごとに管制室は拍手に包まれるのでしょう。1回目の着陸は拍手ごとに私ども報道陣も色めき立ちましたが、今回は冷静に、プロジェクトメンバーもわかりやすい情報提供に努めるとのことでした。

1回目の着陸のとき、津田プロマネは温度上昇を示す1枚のグラフ(いわゆる「ペライチ」)を示していました。あれはあれで「ホヤホヤ感」があったのですが、今度はモニターにグラフを示すなど工夫したいと久保田教授は話しています。

とは言え、2回目の着陸の日も1回目同様、私ども報道陣はヤキモキしながらその時間を過ごすことになるのでしょう。「令和初の大仕事」、いよいよカウントダウンに入って来ました。(了)

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