WTOでも折り合わず~文在寅政権が「反日」を続ける本当の理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月26日放送)に外交評論家でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。WTOの一般理事会で、韓国がいわゆる徴用工問題、募集工問題の報復措置として日本が輸出規制を行っていると主張したことについて、今後の見通しを語った。

WTOでも折り合わず~文在寅政権が「反日」を続ける本当の理由

24日、ジュネーブでWTO一般理事会に出席した日韓の代表団(ロイター=共同)=2019年7月24日 写真提供:共同通信社

日韓の対立に世界は無関心

世界貿易機関(WTO)の一般理事会が24日、スイスのジュネーブで終了した。WTOに持ち込まれた日本と韓国の貿易にまつわる話について、韓国側はいわゆる徴用工問題、募集工問題の対抗措置で輸出規制が行われていると主張。一方、日本側は安全保障上の理由で輸出の手続きを見直ししただけで、政治的な関連はないと反論をしている。

飯田)この理事会では日韓以外、第三国からの発言はなかったということで、韓国側は空振りというような見出しも出ていました。

宮家)一般理事会というものは、全加盟国が出席できるような新しい大きな会議場で開かれるようです。僕は古い会議場しか行ったことがありませんが、そこはABC順に座席が並んでいるので、H・I・J・K、日本と韓国は隣になることが多い。真横でケンカするわけです。けれども、ふたりでケンカするのかと言うとそうでもない。議長が議題を決めますよね、確か10何個あるなかの11番目でしたか。「ではこの議題に入りましょう、韓国さんどうぞ」と発言を求められて、韓国が言いたいことを言う。それに対して日本が反論する。それで終わってしまうものなのです。周りの人は「そうだそうだ、やれやれ」などとはあまり言わない。だって日韓二国間の問題ですから。

我々にとっては大事な問題だけれど、関係のない国の方が多い。韓国がもし他国も賛成してほしいと本当に思っているとしたら、それは甘いですよね。だからと言って他国は韓国の見解に反対でもない。要するに無関心、もしくは間に入る気はないのです。アメリカは特に関心がない。だって両方とも同盟国ですから。同盟国同士がケンカしているときに、どちらかに味方すれば両方失いかねない。そうことはできませんからアメリカは突き放している。ということは、誰も発言しないということです。

WTOでも折り合わず~文在寅政権が「反日」を続ける本当の理由

三菱重工本社を訪問した元徴用工訴訟の原告側代理人弁護士(右)ら=2019年2月15日午後、東京・丸の内 写真提供:産経新聞社

長引くこの日韓の問題

飯田)ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官も日本に来たとき、河野外務大臣に、アメリカは仲裁しないと発言を伝えたという報道が出ていました。

宮家)それは当然です。なぜなら米韓関係、日韓関係、それから日米関係、すべてが傷つきますから。実に困ったことなのです。WTO で折り合わないことはまだ序の口で、この後何が起きるかと言うと、おそらく60日、いつから数えるかは別として、日韓間で協議がまとまらない状態が続くでしょう。日本は協議ではないと主張しているのだから、この話はパネル(案件を審理する小委員会)に行くことになるでしょう。韓国が申し立てれば必ずパネルの関係者が集まるはずです。WTOのルールでは全員がパネルなんていらないと言わない限り、作らなくてはならない。ですから、よほどのことがない限りパネルはできる。そこで実質的な第1審が行われ、それでもダメなら上級審に行く。いまはこれから続く長い長い長いプロセスの、始まりに過ぎないということです。

飯田)パネルができて、最終的な結論が出るまで2年~3年かかるわけですか?

宮家)かかってもおかしくないでしょう。そのころには「何だっけ?」という感じになっているでしょう。その間にホワイト国の話は別として、仮に化学物質の話だけだとしても、状況は大きく変わってしまうだろうから、本当はいまのうちに解決しなくてはいけないことだと思います。日本は協議から逃げているなどと言われていますが、それでは請求権(日韓請求権並びに経済協力協定)について日韓で仲裁付託することになっているのに、それに関しては向こうが逃げている。ですから、「逃げ」に関してはどっちもどっち。残念ですが、この話はしばらく続くことになるでしょう。

WTOでも折り合わず~文在寅政権が「反日」を続ける本当の理由

日本、韓国への輸出管理強化 韓国向け輸出管理について、チョン・チャンス産業通商資源部貿易安保課長(手前右)に事務的説明に臨む、岩松潤・貿易経済協力局貿易管理部貿易管理課長(手前左)=2019年7月12日午後1時58分、東京・霞が関の経産省 写真提供:産経新聞社

日韓の対立、文在寅政権にとっては利がある

飯田)続くとどういう作用が出て来るかと言うと、ソウルなどで取材をしている記者何人かに話を聞くと、来年(2020年)4月に韓国で総選挙が行われます。それに向けて、こうやって日本に対して揉めていることは、文在寅政権にとってはウェルカムなのだという話が出ていました。

宮家)それはそうですよ、いまだって支持率は上がっていますから。韓国大統領制についてはいつも申し上げることですが、1期で5年しかないのですが、もう3年目に入りました。タイミングとしては、そろそろレイムダック化してもおかしくない。ここで失速したくはないから、文大統領としても米朝の首脳会談は続いてもらわなくては困る。そしてもう1つ、日韓でもガチンコをやって、強い大統領を見せたいのでしょう。その意味でも、この日韓問題は構造的に続くということです。

飯田)そうなると向こうには事態を収めるインセンティブ、動機がないですよね。

宮家)本当はこれをやることで韓国経済が必ず傷ついて行きますから、その段階で妥協見向けたインセンティブが出て来るはずです。勿論、政治的なインセンティブと経済的なインセンティブとでは時間差があります。経済の方が先に出ると思いますが、政治がそれを受けて動くかどうか、これはなかなか時間がかかりそうですね。

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