日産新体制発表 モヤ~っとした会見だったが…
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「報道部畑中デスクの独り言」(第153回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、日産が10月8日に行った取締役会後の記者会見について---
10月8日はノーベル物理学賞の発表でしたが、残念ながら日本人の受賞はなりませんでした。確認した後、帰り支度をしていたところ、報道部のスタッフから、
「畑中さん、FAXです」
それは日産自動車の会見案内でした。取締役会後の記者会見が午後8時半からというもの。時計の針を見ると、すでに7時半を回っていました。あわてて機材を含めた荷物をまとめ、横浜市の日産本社に向かいました。
いつもの8階の記者会見場、案内が開始1時間前ということもあり人数は少なめ、慌ただしく記者が入って来ます。前回の西川広人社長退任会見のときは、予定時刻より50分近く遅れましたが、「今後は時間通りに?」と聞くと、広報担当者は「ええ」と言いながら苦笑していました。
新たな社長兼CEOに決まったのは内田誠専務。中国の合弁会社である東風汽車有限公司総裁も務めています。COOには三菱自動車COOのアシュワニ・グプタ氏、そして、関潤専務が副COOに就任することになりました。就任は「遅くとも2020年1月1日付」、現在は籍先との調整、引継ぎなどの都合としています。
会見で木村康取締役会議長は内田氏について、「今後の日産自動車を前進させるのにふさわしいリーダーと判断した。新体制による早期の業績回復と、新しい日産の再建に全社一丸となって取り組んでほしい」と述べました。
内田氏は53歳。日商岩井から2003年に転職。アライアンスの購買部門を担当後、東風汽車有限公司総裁と「中国畑」を歩んで来ました。グプタ氏は49歳。ホンダ→ルノー→三菱自動車と自動車各社を渡り歩いた経歴を持ちます。
そして関氏は58歳。防衛大学校卒の異色の経歴の持ち主で、技術畑を歩き、技術の面で内田氏をサポートする立場になると思われます。
豊田正和指名委員会委員長によると、起用理由について3氏の共通したキーワードは「国際人」「アライアンス重視」「スピード重視の決定」…特に内田氏については「アライアンスを大事にする人」という印象が強く、取締役会の全員一致で決まったということです。
そして、木村氏は「集団指導体制で支え合いながら行くというのが、透明性もあるし、公平な判断ができる」と強調しました。
一方、現在、CEO代行を務める山内康裕氏の起用が見送りになったことについて、木村氏は「“新生日産”が大事、新生日産のイメージが強く出せる体制はどういうものかを考えた」と述べました。
会見で浮かび上がって来たのは、「ルノーとの融和路線」「若返り」「トロイカ体制」…これまでとはがらりと変わった雰囲気になりそうですが、これまでの「西川派」とされる幹部面々がどうなるのか…若返りということで、山内氏をはじめとするベテランに対する処遇も気になるところです。
中国市場を担当している内田氏ですが、自動車ファンにとっては低迷する日本市場に対して、どのようなスタンスで臨むのか? そして、何よりもこの「トロイカ体制」にクルマに対する愛情があるのか? クルマへの愛情がにじむ会社にできるのか…注目すべき点は少なくありません。
また、自動車ファンとして気になるのは、10月下旬に開幕する東京モーターショー。各社幹部にとって、この場で行われるプレスブリーフィングは言わば「大舞台」ですが、この登壇者については明確な回答は得られませんでした。それこそ“新生日産”をアピールするには絶好の機会だとは思うのですが…ちなみに、内田氏らの就任までは前出の山内氏が“暫定トップ”を務めるということです。
会見は30分ほど。「もう、終わり? まだ何かあるのか?」…終了後も多くの記者は立ち上がらず、しばらくモヤモヤ~っとした空気が流れました。また、会見開始のときは木村議長と豊田委員長がネームシートの席と逆に座ってしまい、スタッフが慌ててシートを張り替えるという一幕もありました。
相変わらずのドタバタ感がぬぐえない会見でしたが、新体制を早く確立して腰を据えた改革を…そう願うのは、現場の人々だけではないはずです。(了)