室内放し飼いの烏骨鶏3羽との生活は、ドキドキやワクワクの連続
公開: 更新:
【ペットと一緒に vol.170】by 臼井京音
伊豆半島の山麓で烏骨鶏(うこっけい)のヒナ3羽と、中島さん夫妻がリビングでの放し飼い生活をスタートして約半年後、さまざまなハプニングが起こりました。今回は、中島さん夫妻の初めての烏骨鶏ライフ、第2弾をお届けします。
ついにその日がやって来た
静岡県の伊豆の国市で夫と烏骨鶏3羽と暮らす、中島淳子さん。かつて一時的に養鶏を営んでいた実家から、烏骨鶏のヒナ3羽をペットとして迎えてから数ヵ月後、2羽がオス、1羽がメスだとわかったそうです。
鶏のオス特有の「コケコッコー」という“天然目覚まし時計”の雄叫びから、中島家の朝はスタートします。ある日、淳子さんは自宅のリビングにピーちゃんとピーくんたちを留守番させて、実家のイチゴ農家の仕事から帰宅したところ……。
「いつかはと思っていたんですが、ついに丸い物体が1つ、目に飛び込んで来ました。生後半年ほどになったピーちゃんが、リビングのクッションの上で卵を産んでいたんです」と、忘れられない8月のことを振り返ります。
「ピーちゃんは、卵をあたためるでもなく、私の帰宅をうれしそうに出迎えてくれました(笑)」と、淳子さん。その後、1日半おきにピーちゃんは同じクッションの上で卵を産むようになったそうです。
「夫と、卵をじっと眺めながら『どうしようか』と悩みましたね。かわいいピーちゃんとピーくんの有精卵だと思うと、食べる気は起こりませんでした」。
卵を孵化させてみようと決意
中島さん夫妻は、烏骨鶏をペットとして迎えるきっかけになった、近所のカフェのママさんのもとに向かいました。ママさん家族は、チャボのマルくんを飼っています。相談の末、ママさんが持っている孵卵機を使ってピーちゃんの卵を孵化させる決意をしたそうです。
「3個の卵を孵卵機に入れ、懐中電灯でときどき内部の様子を観察していました。1週間までは成長していましたが、2週間目の検卵では成長がストップしているのがわかりました」と、淳子さんは肩を落とします。
通常、鶏の卵は約3週間で孵化します。「実家の父に聞いたところ、10~20個の卵のうち数羽が誕生する位だとか。私たちが思っていたより低い孵化率です。若いメスは、産んだ卵を自分であたためないことも多いらしく、子育て上手なベテランのメスが代わりにあたためたりもするみたいです」。
中島さん夫妻は、ひとまず卵を孵化させる計画は断念したと言います。
「でも、夫は『せっかくピーちゃんが頑張って産んでくれた卵だから、ムダにしたくないね。食べよう』と。なので私も食べてみたのですが、すごく複雑な心境で、ちゃんと味わえませんでした」。
そこで、その後は淳子さんの父親経由で、烏骨鶏の卵が欲しい人に譲るようになったそうです。実は淳子さん、烏骨鶏と暮らし始めてから、スーパーマーケットで鶏肉や卵を一切購入しなくなったとも語ります。
思わぬ行動に慌てる日々
ピーちゃんたちが次に淳子さんを驚かせた事件は、庭で日光浴をさせているときに起きました。
「3羽が庭の雑草を食べてくれて助かっているのですが、先日、全長15cmはある太いムカデをピーくんがひょいっとつまみ上げたんです。それをピーちゃんが横取りして、2羽で完食してしまいました」。
ムカデは毒を持っています。烏骨鶏たちが中毒症状を起こさないか心配になった淳子さんは、インターネットですぐに検索。
「ピーちゃんたちが死んでしまったらどうしよう! と、それはもう焦りましたね。調べた結果は、ムカデを食べても問題なさそうでしたが……。あとからカフェのママさんにも相談したら、チャボのマルくんもムカデをときどき食べるそうです」。
庭に放すと、ピーちゃんたちはパタパタと羽を広げて砂浴びや泥浴びをするとか。
「本来は寄生虫を落とすための習性ではないでしょうか? でも、そのまま室内に戻ってしまうと、リビングが砂だらけになって困ります。なので、ピーちゃんたちがドロドロになると、シャンプーをしています。室内での放し飼いはやめられませんからね」と、淳子さんは笑います。
桶にぬるま湯を溜めて洗い、冷風のドライヤーで完全に乾かすまでにかかる所要時間は、およそ1時間。「大変と言えば大変ですが、そんな苦労は何てことないと感じるほど、3羽はかわいいです」。
愛おしさが増す烏骨鶏たちのために
烏骨鶏たちのために、中島さん夫妻は自宅のインナーデッキに小屋を設置しました。
「私が職場のイチゴのビニールハウスに連れて行くことも多いですが、そうしないときは、室内ばかりで過ごさせるのではなく、日向ぼっこや外の風を感じてもらいたいと思って」と、淳子さん。
さらに、リビングにはキャットタワーも置いたそうです。「ピーちゃんやピーくんは成長するにつれて、ジャンプ力がついて来て、テーブルやソファに上るようになったんですよ。キャットタワーならば、こちらもハラハラせずに見ていられますから」とのこと。
ところが、烏骨鶏はもともと警戒心が高く、新しいものを受け入れるのに時間を要するようです。
「せめて最下段のドーム型ハウスに入ってくつろいでくれたらいいと思って、なかにおやつを入れてみたんですが、ピーちゃんはおやつを取るとすぐに出て来てしまって(笑)。時間がかかってもいいので、活用してもらいたいですね」(淳子さん)。
特にメスのピーちゃんは穏やかな性格で甘えっ子だと、中島さん夫妻は口を揃えます。
「鳥は暗いところは見えないので、夜は早くに寝てしまいます。でも、私が仕事から帰宅すると、明かりがついていることもあり、『コッコッコッ』と言いながら3羽は出迎えてくれます。そのあと、ピーちゃんたちを抱っこしているとそのまま腕のなかで眠ってしまうこともあり、本当にかわいいですね」と、中島さんは頬を緩めます。
そんな中島さん夫妻は、いつか、淳子さんの実家の子育て上手な烏骨鶏にピーちゃんの卵を抱いてもらうことも考え始めているとか。「こんなかわいいピーちゃんの赤ちゃんを、いつか見てみたい」という思いが、日増しに強くなっていると、淳子さん。
「散歩に行きたそうにして窓の外を眺めている姿を見ると、私たちも次の休日が待ち遠しくなります」とも、中島さん夫妻は微笑みます。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。