老犬の“心”の健康も大切だと知った飼い主の行動の変化とは
公開: 更新:
【ペットと一緒に vol.164】by 臼井京音
14歳半を目前にした愛犬リンリンのために、筆者はこれまでにも増して情報収集に力を入れています。そんななか、シニア犬の心の健康に関する尾形庭子獣医師のセミナーで、「なるほど」と目からウロコが落ちました。
今回は、筆者も実践している、老齢犬との生活の工夫ポイントなどをお伝えします!
愛犬が平均寿命に到達!
筆者の愛犬リンリンは、現在14歳5ヵ月。日本に暮らす家庭犬の平均寿命は、およそ14歳と言われています。一般的には小型の犬のほうが寿命が長いので、体重5kg台のノーリッチ・テリアのリンリンは、15歳以上は生きてくれるのではないでしょうか。
ただ、肉体年齢を考えると、人の1年と犬の1年とでは老いるスピードが違います。小型犬のリンリンは、人と対比すると1年で4歳ずつ多く肉体年齢を重ねて行くことになります。
人に換算したリンリンの肉体年齢は、およそ76歳。この半年の間に、人間で言えば2歳分老いたことになり、リンリンはかなり衰えてしまったと感じます。
例えば、筆者が帰宅してもドアを開ける音にまったく気づきません。同居犬のミィミィが大喜びして玄関で騒いでいても、リンリンは筆者がリビングに入ってようやく「うわっ! いつ帰って来たの?」と、飛び起きるといった具合。さらに、雷雨があっても、震えるミィミィの横ですやすやと眠ったまま。雷の音が聞こえていないのでしょう。
室内に設置した犬用トイレでは、以前は後ろ足をおしっこで汚したくなくて、片脚を床から数センチほど上げて排尿をしていたのですが、最近は筋肉が落ちたようで両脚をついています。踏ん張る力も弱まったため、排尿をしながらトイレシーツの上で両脚がズルズルと後方に滑ってしまうこともめずらしくありません。
ごはんを食べる速度も、この半年でぐんと遅くなりました。10歳のミィミィの5倍くらいの時間はかかっていて、食事を終えたミィミィがリンリンのごはんを奪いに行くようになってしまったため、ここ1年は別々の部屋で食べさせるようにしています。
そんな老犬リンリンとの生活を送るなか、筆者は気になるタイトルのセミナーを見つけました。『シニアペットの健康を考える わかってあげようペットの心の健康』というものです。
リンリンの心を、筆者はどのくらい理解できているのでしょうか。そう思い、さっそく2019年9月11日に、ペットの予防医療と健康管理の普及と啓発活動を行う“Team HOPE”が主催するプレスセミナーに向かいました。
老犬ならではのストレスを軽減させてあげたい
『わかってあげようペットの心の健康』の講演者は、アメリカのパデュー大学獣医行動診療科の准教授で、米国獣医行動学専門医でもある尾形庭子氏。
尾形獣医師の言葉でまず気づいたのは、シニアペットは自身の体の変化にともなって不安が増えると同時に、自信をなくしているケースが多いということでした。
今年(2019年)に入ってから数回、フローリングの上に置いていた犬用トイレからリンリンが出た瞬間に、床で滑ってしまうことがありました。その後、リンリンにトイレの失敗が見られるようにもなりました。
尾形獣医師の解説のとおり、リンリンは転んだ体験によって、自分の歩行に自信をなくしてしまったのでしょう。これまでも愛犬が動きまわるスペースにはカーペットを敷いていましたが、つい先日トイレの下にもキッチンマットを追加しました。老齢犬リンリンの排泄へのストレスが軽減できますようにと、願いを込めながら。
いままで大丈夫だったのに苦手に!?
「シニアペットはストレス耐性が低くなっている」という、尾形獣医師の言葉にも筆者は思い当たる節がありました。ストレス源になりやすい環境刺激として、来客、新たな家族(動物含む)、部屋の模様替えといったものが挙げられるそうです。
リンリンは昔から来客が大好きで、お腹を見せて喜びを表現し、筆者の娘の友人が遊びに来るとボールをくわえて持って行き、「投げて」と催促していました。ところが、今年に入ってから、4~7歳の子供の来客には、あいさつを交わすと離れて行くようになったのです。
尾形獣医師によると、来客のなかでも特に子供がストレスになるとのこと。確かに、子供は動きが早く、「おもちゃあるよ! リンリン遊ぼうよ」と積極的。もともとは活発でフレンドリーなテリアであるリンリンでも、最近は子供の来客がストレスになっていたのかもしれません。
尾形獣医師は、「子供には『ワンちゃんから近づいて来るのを待ってね』と伝えましょう」と語ります。次に娘の小学校の友人が来た際は、リンリンの気持ちに寄り添ってもらうようにしようと、筆者は客席で何度も頷きました。
尾形獣医師は、シニアドッグの食事は、少量ずつ頻回に与えたり、人肌程度に温めて与えるのが適切だとも説いていました。筋肉を維持するために重要なのはもちろん、脳への良い刺激にもなるため、適度な運動もシニアドッグには欠かせないと言います。
ここのところ、リンリンとミィミィは一緒に散歩に連れ出すことは少なくなりました。リンリンはシニアになってから前十字靱帯断裂も経験しているため、関節が痛いようでかなり歩みが遅くなっているからです。
この原稿を書き終えたら、リンリンのスローなペースにあわせて、一緒に散歩をしようと思っています。リンリンが心も健康でいられるように、飼い主としても気遣うからね!
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。