佐藤健・鈴木亮平・松岡茉優、15年ぶりに母と再会した戸惑いと葛藤
公開: 更新:
【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第718回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、11月8日から公開される『ひとよ』を掘り起こします。
名だたる俳優たちがもっとも起用されたい映画監督・白石和彌が描く“家族の絆”
どしゃぶりの雨が降る夜。タクシー会社を営む稲村家の母・こはるは、夫を殺害した。最愛の子どもたちの幸せのため、夫の暴力から子どもを守ったのだと信じる彼女は、「15年経ったら必ず戻って来る」と言い残し、警察に出頭した。
残された長男・大樹、次男・雄二、長女・園子の3兄妹は、事件のあったあの夜から、心の傷を隠し持ったまま、それぞれの人生を歩むことに。
やがて月日が流れ、兄妹の元に、こはるが帰って来る。母が起こした事件によって人生を狂わされた子どもたちは、戸惑いと葛藤のなかで母を迎え入れるが…。
劇作家の桑原裕子が主催する「劇団カクタ」が、2011年に初演した同名舞台を映画化した『ひとよ』。メガホンを取ったのは、日本アカデミー賞をはじめとする数多の国内外映画賞で実に60以上もの受賞を果たし、名だたる俳優たちがいまもっとも出演を熱望する映画監督・白石和彌。
ひと夜にして激変する家族の運命を通し、“家族の絆”そして“究極の愛のかたち”を問いかけるヒューマンドラマです。
15年前の事件に囚われ、家族と距離を置き、東京でフリーライターとして働く次男・雄二役に佐藤健。町の電気屋に勤務し、三兄妹で唯一自身の家庭を持つ長男・大樹役に鈴木亮平。事件によって美容師になる夢を諦め、地元のスナックで働く末の妹・園子役に松岡茉優。主役クラスの実力派俳優たちによる演技合戦は見応えたっぷりです。
そして、豪華すぎる三兄弟の母・こはるを演じるのは、白石監督が本作の企画がスタートしたときから、こはる役に熱望したという田中裕子。ときにシリアスにときにコミカルに、何物にも揺るぐことのない気高い“母性”を体現するその演技は、剛柔自在。鮮烈な存在感を放っています。
本作で描かれている親と子の絆は、“家族愛”などという言葉で片付けられるような生易しいものではなく、切りたくても切れない、ある種の“厄介さ”を感じさせるもの。その“不完全さ”さえも温かく見つめる、白石監督の視点が印象に残ります。
子どもたちのために罪を犯した母親は、家族を救ったのか? それとも、家族を破滅に追いやっただけなのか? 1度崩壊した家族が絆を取り戻そうと、もがき続けた先に訪れる結末を、しかと見届けて。
『ひとよ』
2019年11月8日(金)から全国ロードショー
監督:白石和彌
脚本:髙橋泉
原作:桑原裕子「ひとよ」
出演:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟、佐々木蔵之介、田中裕子
(C)2019「ひとよ」製作委員会
公式サイト https://hitoyo-movie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/