「ナハネフ22」を救いたい~車両修復の“小さな協力者”とは
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
福岡市の貝塚公園に、かつて寝台特急・ブルートレイン「あさかぜ」号として走っていた客車が展示されています。現役時代は、冷暖房完備の豪華な個室寝台車や食堂車も備え、「走るホテル」とも呼ばれた「ナハネフ22 1007」。
この貴重な客車に魅せられて、東京からボランティアで修繕に乗りだし、ときに自費を投じて保存活動を続けている人がいます。なぜそこまでして、この客車を保存しようとしているんでしょうか?
その人に協力する「小さな強い味方」も現れました。鉄道がつなぐ、不思議な縁のストーリーです。
1965年に製造され、1990年から貝塚公園に展示されている「ナハネフ22 1007」。同じ型の先頭車両で現在一般に公開されている客車は、さいたま市の鉄道博物館にあるものと、この車両の2台しかありません。しかし、長年適切な手入れがされなかった貝塚公園のナハネフ22形は、見るも無惨な姿に……。
撤去の危機を救ったのが、東京で会社を経営する、髙橋竜さん・45歳です。
横浜生まれの髙橋さんは、幼いころから鉄道が大好き。特に「20系ブルートレイン」が大のお気に入りでした。「新幹線の父」こと十河信二(そごう・しんじ)第4代国鉄総裁と、島秀雄技師長のコンビが生みだした20系ブルートレイン。そこには2人の情熱、生き様が反映されていることを知り、いつか実物を見たいと思っていた髙橋さん。
ある日、鉄道雑誌を読んでいたら、かつて20系ブルートレインとして使用されたナハネフ22形の車両が、貝塚公園に展示されていることを知りました。しかし写真を見るとガラスが割れ、色あせた姿に……。
貴重な車両がそんな状態で展示されていることにショックを受けた髙橋さんは、居ても立ってもいられず、2009年の夏に福岡へ飛び、貝塚公園を訪問。バケツと雑巾片手に管理事務所に出向き、「掃除をさせてほしい」と申し出ました。
その後も福岡へ通って、地道に清掃作業を続けた髙橋さん。ついに福岡市の担当者と面会することができ、直談判しました。
「行政による修復が難しければ、自分がそのための会社を立ち上げます。何かあったら会社が責任を取りますし、費用もすべて負担するので、修復の許可をいただけませんか?」
髙橋さんは所有者であるJR九州の許可も取って、2011年11月に修復作業をスタート。地元の工務店に依頼して、ナハネフ22形を、九州を走っていた時代の姿に塗り直した他、窓ガラスもすべて新品に交換。内装も修復し、費用およそ350万円は髙橋さんがすべて自費で負担しました。
修復作業を終え、現役当時の美しい姿を取り戻したナハネフ22形は話題を呼び、毎年3月と10月に内部を公開するイベントも行われることになりました。しかし、公園で雨ざらしの車両は再び傷み始め、髙橋さんは2年前、クラウドファンディングで修復資金を調達しようとしましたが、資金は思うように集まらず、失敗に終わりました。
車両の劣化が進むなか、去年(2018年)の10月、髙橋さんに運命の出逢いが訪れます。ナハネフ22形の車内公開イベントで、髙橋さんがボランティアガイドをしていたとき、ある男の子がお母さんと一緒に訪ねて来ました。福岡市内の小学5年生、坂井利優くん。
話を聞いてみると、利優くんは小さいころから鉄道が大好きで、とくに家の近所にある貝塚公園のナハネフ22形が大のお気に入りでした。「昔の自分とまったく同じだ!」と驚いた髙橋さん。しかも利優くんは国鉄の車両に関して、髙橋さんもビックリするほどの詳しい知識を持っていたのです。
「こんな小さい子が、国鉄車両の素晴らしさを理解しているなんて! そうだ、この子にナハネフ22形のガイドをやってもらおう!」と思い立った髙橋さん。しかし連絡先を聞く前に、利優くんはすでに立ち去っていたのです。
「しまった! 一生の不覚……」と悔やんでいたところ、奇跡が起こりました。何と利優くんが再び戻って来て、髙橋さんにこう言ったのです。
「僕は小学生ですけど、この車両を守るために、何かできることはありませんか?」
翌日、国鉄の車掌さんの制服を着て、お客さんにナハネフ22形の案内をする利優くんの姿がありました。
利優くんと出逢って、貴重な車両を末永く保存し後世に伝えなければ、という思いを新たにした髙橋さん。9月に利優くんと共同で、再びクラウドファンディングによる修復プロジェクトを立ち上げました。
今回は800万円~1000万円ほどの費用がかかりますが、利優くん効果で、すでに第1目標の300万円は突破。11月29日(金)午後11時までに、次の目標・500万円突破を目指します。
(クラウドファンディングサイト https://readyfor.jp/projects/nahanefu221007-2019)
年齢は離れていても、髙橋さんと思いは同じ。利優くんからのメッセージです。
「ナハネフが元気に走っていた時代の姿を再現したい。自分のように古い車両が好きな子どもが将来出て来たとき、実物を見て、同じワクワクを感じてもらいたいんです」
八木亜希子 LOVE&MELODY
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