ローマ教皇とジョン・F・ケネディ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月22日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。23日に来日するローマ教皇について解説した。
ローマ教皇が訪日
外務省はフランシスコ・ローマ教皇が23日~26日の日程で来日するのに合わせ、これまで日本政府が「ローマ法王」として来た呼び名を「ローマ教皇」に変更したと発表した。ローマ教皇はバチカン市国の元首であり、外務省などによると、日本とバチカンが外交関係を樹立した1942年当時の訳が「法王」となっており、日本政府はそのまま使用して来たということだ。ただ、日本のカトリック教会は1981年のヨハネ・パウロ2世の来日を機に「教皇」の呼び名に統一。教えるという字を用いる教皇の方が、より職務を表現していると考えたということだ。
飯田)23日に来日し、長崎と広島を24日に訪問する他、25日午前には天皇陛下とも会見。25日午後には総理と会談する予定です。
宮家)38年ぶりですから歴史的なことだし、すばらしいことです。これからどんどん報道されるので、リスナーの皆さんはそれをよく聞いていただきたいですね。でも、ここでは違う話をします。
飯田)はい。
アメリカではジョン・F・ケネディ大統領が存在価値を変えた
宮家)ローマ・カトリックというものが、アメリカでどういう意味を持ったかと言うと、1950年代までは「カトリック? え?」という感じだったのです。つまりカトリック教徒というのは、アメリカ人でありながらローマに心のよりどころがあると思われていたのです。教皇様がいらっしゃるわけですから。アメリカはもともとプロテスタントの国ですから、「お前はアメリカ人なのか? お前の忠誠はどこなのだ?」と、ローマ・カトリック教徒に対してある種の偏見、差別があったのです。それをなくしたのが、ジョン・F・ケネディ氏です。あの人はアイルランド系、つまり米国史上初のカトリック教徒の大統領です。そこがアメリカでの原点なのです。
ローマ教皇も一昔前は広大な領地があり、まさに教皇の皇は皇帝の皇でもありますから、国や民族を超えた政治的、宗教的権威を持っていました。それが歴史の流れとともに徐々に1つの宗教集団になって行った。最近のローマ教皇は、いい意味でリベラルというか、現実的な反応をするようになっています。プロテスタントとの和解をするとか、最近では同性愛の問題でも非常にリベラルな考え方をしています。カトリック教会も変わって来たと思います。それはローマ教皇、もしくはカトリックそのものを取り巻く環境が変わって来たことと関係があります。私は中学高校がカトリックの学校で、特別な思いがあるので、少し言わせていただきました。
外交面でも影響力を持つローマ教皇
飯田)これを外交面で考えると、冷戦終結に関して、ヨハネ・パウロ2世もいろいろ働いたという話があります。やはり外交にも影響力があるのでしょうか?
宮家)すべてではありませんが、ある場面ではあります。なぜ冷戦でうまく役割を果たしたかと言うと、それはポーランドです。ポーランドはカトリックの国ですから、そういう効果があるわけです。本当は教皇の言動に政治的な意味を持たせてはいけないのですけれど、教皇が言う内容自体に一種の政治的効果があって、それが大きな流れになって行くということは、カトリック教徒の多いところでは十分あり得るわけです。逆に言うと、それがある国にとっては政治的な脅威となる可能性もあります。その意味では立派な人が教皇になって、上手くバランスを取らなくてはならないのですが、いまのフランシスコ・ローマ教皇も非常にバランスの取れた方です。82歳になられましたが、体力もあり、頑張っています。
飯田)世界中を飛び回っていますよね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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