北極の方が南極よりもコケの種類が多いワケ

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、国立極地研究所・副所長であるコケの専門家、伊村智が出演。北極のコケについて語った。

南極観測隊の潜水観測で発見された「コケボウズ」。藻類やコケ類などの植物が円錐形に固まったもの=2010年1月22日午前11時53分、南極スカルブスネスの長池 写真提供:産経新聞社

黒木)今週のゲストは国立極地研究所・副所長で、コケの専門家の伊村智さんです。北極へも行かれるのですか?

伊村)北極は2回行きました。

黒木)では南極7回、北極2回ですね。北極へはどうやって行くのですか?

伊村)飛行機で行きます。

黒木)どちらまで?

伊村)ノルウェーにスバールバル諸島というところがあります。ノルウェー本土から北に行った、北極海の真ん中にある島ですが、そこまで定期便が通っています。私は陸上生物の研究が中心なので、北極海には基本的に縁がないため、陸上環境として北極にいちばん近いスバールバル諸島を中心に仕事をしています。

黒木)ノルウェーの上のほう、グリーンランドの東側にあるところですね。そこはどんなところなのですか?

伊村)緑が豊かで、草原になっています。もちろん冬は雪に覆われてしまいますが、夏の間は雪が解けて、地面に草やコケが生え、緑色をしています。トナカイなどの動物がそれを食べながら歩き回っています。南極に比べれば、生き物が豊かな場所だと思います。

黒木)北極圏の方のコケは、たくさん生えているのですか?

伊村)遥かに種類が多いですね。北極は海で、周りは陸が囲んでいます。北極に近い陸地というと大陸になりますから、森があり草原があって、植物たちが北のギリギリまで生えている最前線となります。草や木など、コケたちが侵食している先なので、種類が多いのです。でも南極の場合は孤立した島なので、凍りついた南極の大陸に、たまたま飛んで来た胞子が落ちてコケが生える。それくらいしかないので、植生が乏しいのです。だから北と南で同じような極地ですが、陸上植生は全然違います。北極の方が豊かですね。

黒木)よく氷河が溶ける映像を観ますが。

伊村)氷はいつでも上に降り積もって、氷河が流れ、海に崩れ落ちます。これは普通のことなので、それ自体は温暖化の影響ということではありません。

黒木)海の水深の変化は?

伊村)海面上昇ですか? 崩れて海に流れ落ちる氷が昔よりも増えて来ると、その分だけ海面が上がる。普通に降り積もって流れて行くということは、当たり前のことです。そのスピードが速くなる、流れる量が増えるということが問題なのです。

黒木)それは長年、研究して行かなくてはならないということですよね。南極・北極以外にも極地と呼ばれる場所、高地などにも行かれるのですか?

伊村)極地研で扱っている極地として、鉱山などは研究対象になっています。私も学生のフィールドとして、富士山の山頂付近を対象としましたので、富士山にも何回も登っています。

黒木)極地研究所というのは、体を張る仕事ですね。南極まで荒波の海を渡って潜ったり、ノルウェーの上まで行かれたり、富士山に登られたりと。

伊村)でも、普通の身体であれば問題ないと思います。昔は登山の専門家が、隊員として南極に行っていましたが、最近は健康であれば誰でも行けます。

黒木)私でも行けるということですか?

伊村)行こうと思えば行けます。いまは観光ツアーもありますし。

ニッポン放送「あさナビ」

伊村 智(いむら・さとし)/国立極地研究所・副所長

■1960年生まれ。栃木県宇都宮市出身。広島大学卒業。
■第36次越冬隊、42次夏隊、45次越冬隊、49次夏隊、イタリア隊、アメリカ隊に参加。第49次日本南極地域観測隊では総隊長(兼夏隊長)。
■北極、南極の陸上生物多様性と、繁殖生態に関する研究。
■南極湖沼中の大規模なコケ群落である「コケボウズ」をはじめ、蘚苔類を研究。

国立極地研究所とコケボウズ
■南極や北極などの極地で、物理学や生物学など様々観測・実験・総合研究を行う機関。
■伊村副所長は、「コケ」の研究者。南極のコケを調査するため何度も観測隊に参加。南極の湖の海底に、コケなどが円すい形になった「コケボウズ」を発見。コケボウズと命名したのも伊村さん。
■南極大陸は気温が低いだけなく、空気中の水分が凍ってしまうので、利用できる水分も少なく、日照サイクルも異常なため、植物の生育には向かない。また南極の湖のなかは栄養が極めて乏しく、大型動物や魚はまったく生息していない。プランクトンもほとんどいない。その湖で「コケボウズ」が発見された。
■コケボウズは50センチ伸びるのに約1000年かかり、大きいものでは高さ80センチにもなる。似た環境でも生息しない湖もあるなど、生体に謎も多い。南極の一部地域でしか見つかっておらず、世界的にも例のない独自の生態系。
■コケボウズを構成しているのは、主にナシゴケ属のコケ。

ENEOSプレゼンツ あさナビ(12月4日放送分より)
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