「モスライト」考案者の夢~インスタで世界の人と写真展を開くこと
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
いま、熱いブームになっているのが「コケ」の観察。自然のコケを観察するだけでなく、インテリアとして鑑賞するのもブームになっています。なかでも世界的な人気を集めているのが、ビンのなかに入ったコケをLED電球で照らし出す「モスライト」。
いまや海外でも人気の「モスライト」は、偶然の出逢いがきっかけで生まれました。コケが取り持つ、不思議な縁にまつわるストーリーをご紹介します。
卵形のガラス容器のなかで、みずみずしく息吹く緑色のコケを、ビンのフタに付いているLED電球が美しく照らし出す「モスライト」。コケは光合成で育ちますが、リビングの照明ではコケが育つのに十分な光が当たらず、室内で育てるのは不可能と言われていました。
ところが、光量が大きくサイズも小さいLED電球が登場したことで、ビンのなかでもコケを育てられるようになり、さらに美しくライトアップできるようになったのです。
この画期的な「モスライト」を考案したのが、兵庫県西宮市在住の、内野敦明さん・64歳。
「電気代は年間で500円ぐらい。週に1回、霧吹きで水をかけてやるだけで、緑色の美しいコケが何年も鑑賞できます」と言う内野さん。コケは周囲の土や石の上にむして行き、ビンのなかに小さな生態系が生まれます。これは、4億年前の地球で起こっていたことと同じ。
「モスライトのコケは生き続けているんです。生け花と違い、ビンのなかで生命がずっと循環して、その空間にあった景色を自分たちで自然に形作ってくれるのが魅力ですね」
いまはコケの学会にも所属している内野さんですが、詳しくなったのはここ5年ほどのこと。もともとは照明器具メーカーの社員で、商品企画を担当していました。6年前、ある市民グループに依頼され、神戸市立森林植物園のライトアップを手掛けることになった内野さん。
「ビンのなかに植物をレイアウトして、LED電球で照らしたら美しいんじゃないか?」と思い付き、実際にやってみたところ、予想を上回る反響を呼びました。これをきっかけに植物の勉強を始めた内野さん。コケにのめり込んだ理由は、「最初に買った本が、コケの本だったんです(笑)」。
高知県の古本屋さんで偶然、コケの本にめぐり会った内野さん。その監修者は何と知人でした。「その人、20年来のフットサル仲間で、コケの専門家だなんて知らなかったんですよ」。
その人に栽培についての指導を仰ぎ、コケの観察会や学会にも顔を出すようになった内野さん。コケのお陰でどんどん人脈が拡がって行き、その助けを借りて、美しいモスライトを何個も製作して行きました。コケが取り持つ縁は、それだけではありません。
「甥っ子のインスタグラムを見るために、自分もインスタを始めたんですが、載せる写真がないのでモスライトの写真を載せたんです。そしたらフォロワーがどんどん増えて……」
内野さんが作ったモスライトの写真は海外にも拡散され、気付いたら、内野さんのインスタはフォロワーが7万人に膨れ上がっていました。そのうち8割が外国人。英語やスペイン語など様々な言語で、内野さんあてにコケの栽培に関する質問が寄せられるようになりました。
「英語はできないので、ネットの翻訳サイトを使って返事をしていますが、大変ですけど楽しいですよ。わざわざ外国から、うちのギャラリーを見に来る人もいます。モスライトに日本の『わびさび』を感じるみたいですね」
内野さんにはこんな夢があります。それは、モスライトの製作者を海外にもっと増やして、インスタグラムで写真展を開くこと。法律の関係でコケの輸入・輸出はできませんが、インスタなら世界の人たちと、自分が育てたコケの作品を見せ合うことが可能です。
「ビンのなかでコケを育てようと思ったら、自然のコケを観察したり、専門家に会って指導を仰いだり、外に出なければならないんです。そうやって自然や人と交流することで世界が広がって行く……それが、モスライトのいちばんの魅力なんです」
八木亜希子 LOVE&MELODY
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