南極でのコケを研究することでわかる地球温暖化の影響

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、国立極地研究所・副所長であるコケの専門家、伊村智が出演。コケと地球温暖化について語った。

南極観測隊の潜水観測で発見された「コケボウズ」。藻類やコケ類などの植物が円錐形に固まったもの=2010年1月22日午前11時53分、南極スカルブスネスの長池 写真提供:産経新聞社

黒木)今週のゲストは国立極地研究所・副所長で、コケの専門家の伊村智さんです。コケと人、コケと地球環境をどのように捉えていらっしゃいますか?

伊村)池の底のコケたちにとって、いまはある程度、寒い状態でバランスが取れているのです。今後、南極の温度が上昇したときに、どのような変動が起きるのかということは興味深いですね。特に暖かくなると、いままでいなかったような、例えばミジンコのような動物プランクトンが入って来るとか、いまはほとんど原生生物だけの世界に、新しい生物が加わって、バランスがどう変わるのか。動物プランクトンであれば入れますから、そうすると生態系のバランスが変わり、それによって何が変わるのか。温暖化によって池の生態系が変わるとすれば、ある程度の世界に対する警報として、アピールすることができるのではないかと思っています。

黒木)でも実際に温暖化は進んでいるのですから、研究をやっていらっしゃると変わって行くわけですよね。

伊村)可能性はありますね。昭和基地のある辺りは気候的には安定していて、まだあまり温暖化の影響が及んでいる場所ではありません。場所によって全然違います。南米に近い南極半島は、海に囲まれています。いま海の温度は、温暖化の影響で上昇しています。暖まった海水が下から氷を溶かしているのです。海面の下から氷河を溶かし、それで氷河が流れるスピードが上がっているというのは、正式に報告されています。温暖化の影響は、いまは局所的ですが、全体的に及びつつあるのは間違いないと思います。

黒木)私たちの住んでいる星に、温暖化の影響が確実に出ているということですね。

伊村)そうですね。そのためにも、南極や北極の研究が1つの警鐘になればいいかなと思います。

黒木)でも、行かれるだけでも大変なご苦労なので、大変ですね。

伊村)苦労というほどの苦労はないと思いますけれどね。

黒木)南極では、どんなものを召し上がるのですか?

伊村)昭和基地では、コックさんが料理を作ってくれますので、とても美味しいごはんが食べられます。「南極料理人」と呼ばれているコックさんですね。

黒木)南極料理人さんは、1人の方がずっといらっしゃるのですか?

伊村)毎年、観測隊を組織して、最近であれば30人ほどのチームで南極に行き、1年間過ごして帰って来ます。その間、2人のコックさんがいて、朝はあまり作りませんが、昼、夜と美味しいごはんを毎日作っていただける。

黒木)1年分の材料を持って行くのですか?

伊村)日本は1回しか補給がないので、1度に全部持って行って、それで1年間生きて行かなくてはなりません。燃料や食料、日用品も含めて全部、1回で持って行きます。

黒木)本当に体を張って研究なさっているのですね。

伊村)でも快適ですよ。

黒木)何が快適なのですか?

伊村)外に出さえしなければ、室内は暖房が効いていますから、Tシャツ短パンで過ごせますし、ご飯も美味しい。最近はインターネットもつながっていますので、家族とメールのやり取りをすることもできます。以前と違って、いまは通信環境も充実しているので、生活環境としては決して悪くない。通勤も短いですし(笑)。

ニッポン放送「あさナビ」

伊村 智(いむら・さとし)/国立極地研究所・副所長

■1960年生まれ。栃木県宇都宮市出身。広島大学卒業。
■第36次越冬隊、42次夏隊、45次越冬隊、49次夏隊、イタリア隊、アメリカ隊に参加。第49次日本南極地域観測隊では総隊長(兼夏隊長)。
■北極、南極の陸上生物多様性と、繁殖生態に関する研究。
■南極湖沼中の大規模なコケ群落である「コケボウズ」をはじめ、蘚苔類を研究。

国立極地研究所とコケボウズ
■南極や北極などの極地で、物理学や生物学など様々観測・実験・総合研究を行う機関。
■伊村副所長は、「コケ」の研究者。南極のコケを調査するため何度も観測隊に参加。南極の湖の海底に、コケなどが円すい形になった「コケボウズ」を発見。コケボウズと命名したのも伊村さん。
■南極大陸は気温が低いだけなく、空気中の水分が凍ってしまうので、利用できる水分も少なく、日照サイクルも異常なため、植物の生育には向かない。また南極の湖のなかは栄養が極めて乏しく、大型動物や魚はまったく生息していない。プランクトンもほとんどいない。その湖で「コケボウズ」が発見された。
■コケボウズは50センチ伸びるのに約1000年かかり、大きいものでは高さ80センチにもなる。似た環境でも生息しない湖もあるなど、生体に謎も多い。南極の一部地域でしか見つかっておらず、世界的にも例のない独自の生態系。
■コケボウズを構成しているのは、主にナシゴケ属のコケ。

ENEOSプレゼンツ あさナビ(12月5日放送分より)
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