「九州の小京都」宮崎・飫肥の日本家屋を保存するプロジェクト

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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

宮崎県の南部に位置する日南市。緑の山々と海に囲まれ、陽射しも暖かい南国情緒あふれるこの街に、江戸時代からの由緒ある建物が多数残っている地区があります。

きょうは、まったく縁のなかった日南市に、この春から移住。古い建物を活かした町おこしのプロジェクトに関わる女性のストーリーです。彼女が町おこしのために考えた企画とは……?

宮崎県日南市に「九州の小京都」と呼ばれる、飫肥という地区があります。江戸時代からの城下町がいまなお残っている飫肥は、九州で最初の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。

今年(2019年)、日南市が募集する「地域おこし協力隊」に応募し、4月から日南市の職員として飫肥の街並みを保存するプロジェクトに携わっているのが、水上梨々子さん・32歳。

「宮崎に来るのは初めてでしたが、日南市は太陽がとにかく暖かくて、人も温かいんです。世界のいろいろな街に住んで来ましたが、なかでも飫肥はすごく住みやすい街ですね」

父親が外交官の水上さんは、生まれてすぐにアルゼンチンに移住。その後もオーストラリア、メキシコ、ニューヨークなど、お父さんの転勤に合わせて、さまざまな国で少女時代を過ごして来ました。大学は日本に戻り、慶応義塾大学SFCで建築デザインを学びました。

「海外生活が長かったせいで、日本の家屋に興味を惹かれたんです。周りの学生がみんな洋風建築のデザインをするなか、私は和風建築のデザインばかり手掛けていました」

水上さんは大学院を卒業後、ある建築事務所に就職しましたが、仕事がハード過ぎたため1年半で退職。その後、日南市に住む姉の知人の紹介で、「地域おこし協力隊」のことを知りました。

「古い街並みには興味があるし、リノベーションでも役に立てそう」と応募し、採用された水上さん。江戸時代の家屋を保存・維持することは簡単なことではありません。建物によっては、補修に億単位の費用がかかります。

保存地区に指定されている飫肥の古い家屋は、国や県から補助金が出ていますが、それだけでは保存・修復費用が十分に賄えていない建物もあります。

民間所有の家屋は、たとえば和風旅館としてリノベーションし、収益を上げているケースもあります。しかし、「代々受け継いで来たものを、よその人に貸したくない」という所有者も多く、空き家になった家屋が補修されないまま朽ちて行き、結局は取り壊される……というケースも多いそうです。

観光客が増えれば、地元の人も空き家の活用に賛同してくれるはず……と考えた水上さん。今年10月に行われた町おこしイベント「DENKEN WEEK」の運営を担当した際は、さまざまな企画を実行しました。

地元出身のアーティストたちに古い建物を1軒ずつ貸し出し、そこで作品を展示してもらったり、日南市出身のミュージシャン・秦基博さんとコラボして、飫肥城のコンサート会場で地元の特産品が買えるマルシェを開いたり。また、古民家でパティシエの鎧塚俊彦さんによるスイーツを味わいながら、トークも楽しめる会を開くなどして、いずれも好評を博しました。

「古い街並みが残っている街って、お店ばかりで観光地化しているところが多いですが、飫肥の街は人々の“生活”が伴っているんです。そこを見てほしかった」と言う水上さん。

「よそから来た人が、街を盛り上げるために頑張ってくれているんだ。自分らも動かないと!」と言って協力してくれたり、親身になって相談に乗ってくれる人も現れたり、地元の人たちの温かさに触れて、水上さんはますます飫肥の街が好きになったそうです。

これから、日南市が所有する古い家屋を活用して行くのが水上さんの仕事ですが、どの建物を民間に貸し出すか区分けをしたり、活用法によっては文化財の使用方法を検討する必要もあったりと、本職のデザイン以外の仕事に追われています。それでも飫肥の温かさに支えられ、充実した日々を過ごしている水上さん。

「飫肥は海もキレイなんですが、地元の人は日常の風景なので『何がキレイなの?』と言うんです(笑)。よそから来た人間だからこそ、気付ける魅力があるんです。古い建物を活用して、飫肥の魅力、日南市の魅力をもっともっとアピールして行きたいですね」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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