「春節」そして「オリンピック」で増える中国からの来日~新型コロナウイルスへの危機管理はいかに

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月16日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。国内初の新型コロナウイルス患者確認について解説した。

「春節」そして「オリンピック」で増える中国からの来日~新型コロナウイルスへの危機管理はいかに

羽田空港国際線の検疫所で、新型肺炎への注意を呼びかける貼り紙=1月16日、東京都大田区 写真提供:時事通信社

新型コロナウイルス、国内で患者確認

中国湖北省武漢市で発生している新型のウイルス性肺炎の感染者が国内で初めて確認されたと厚生労働省が発表した。感染したのは武漢市に滞在歴があり、神奈川県に住む30代の中国人男性。ただ、国内で二次感染が疑われる患者は出ておらず、厚生労働省は「感染拡大の可能性は低い」としている。

森田耕次解説委員)中国の武漢市では41人がこのウイルスによる肺炎と診断され、うち1人が死亡しています。多くが海鮮市場で働く人と客だったということで、WHO(世界保健機関)は新型のコロナウイルスと認定しています。日本国内で確認された新型肺炎の患者は武漢市に滞在歴がある神奈川県居住の30代の中国人男性ということです。武漢市に渡航中の3日に発熱後6日に日本へ帰国し、10日に入院、15日に退院しました。国立感染症研究所の検査で、15日に新型のコロナウイルスの陽性反応が出たということです。現在は自宅で療養していて発熱はないということですが、軽い咳は出ているということです。厚生労働省によると、この男性は帰国したときに解熱剤を飲んでいて、検疫を通過していたということです。どの空港かというのは明らかになっていません。日本政府は総理官邸の危機管理センターに16日付けで情報連絡室を設置しました。菅官房長官の16日午前の記者会見です。

 

菅官房長官)現時点で持続的な人から人への感染は確認されておりませんが、厚生労働省を中心に国際的な情報収集や検疫の確実な実施、関連性が疑われる患者が確認された場合の検査など、引き続き万全の体制で行っていきます。

 

森田)神奈川県で同居している家族や接触した医師を含めて、国内で二次感染の疑われる患者は出ておりません。厚生労働省は感染拡大の可能性は低いとしております。

佐藤)中国とはこれだけ人の移動がありますから、水際で完全に防止することはできないでしょう。今回は神奈川県でしたよね。神奈川や東京、埼玉などは非常に迅速な対応ができてマニュアルが整っているのですよね。ところが、各地方空港でも中国とのさまざまな航空路があります。地方で発生した場合には発見が遅れたり、マニュアルが整備されていなかったり、まったくこの種の危機管理に慣れていないところがあります。どこで起きるのかわからないので、非常に心配ですね。

「春節」そして「オリンピック」で増える中国からの来日~新型コロナウイルスへの危機管理はいかに

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申告などのモラルや呼びかけには限界がある

森田)厚生労働省としては武漢市に滞在した人で咳や発熱の症状がある場合には、マスクを着用するなどの感染症対策をした上で医療機関を受診して欲しいと。受診する際には武漢市に滞在歴があることを申告して欲しいと呼びかけてはいるのですけれどね。

佐藤)ただし、こういう風になると、検疫で熱があるといった自覚症状を言った場合、隔離されてしまってチェックに相当な時間がかかることを推定しますから、逆に調子が悪くても申告しない人が出てきますよね。

森田)この人も解熱剤を飲んで検疫を通過したということですしね。

佐藤)いまは熱があると通過したときにすぐにわかりますからね。ですから、熱が出た場合に解熱剤を飲むという対応をしている人は多いと思うのです。こういった部分に関してはモラルや呼びかけでは限界があるので、起きたときにどう対応するかということ。今回のように例が出ているわけで、ここのところで組み立てなければいけません。

森田)武漢市では同じ家族内で発症例があったということで、人から人に感染する可能性も排除できないという風に武漢市の衛生当局も調査しているようです。

春節に合わせて多くの中国人が来日

佐藤)これから中国王朝の春節に合わせて、1月末から中国人がたくさん来ます。これが1つのヤマです。そして、その次はオリンピックです。このときに大量に感染するということを絶対に起こしてはいけないので、専門家たちには何ができるのかを検討して欲しいですね。そしてラジオやテレビ、インターネットを含めて政府が啓発活動に力を入れて欲しいと思います。こういうことにはきちんと予算を付けてやって欲しいですね。

森田)コロナウイルスそのものは人や動物に感染するウイルスの一種で、風邪などの軽い症状に留まるものが多いとされるものの、2003年にはコロナウイルスをきっかけにSARSのように重症化したケースもあります。

佐藤)複合して他の病気が極端に重くなる場合があるので、専門家が調べて欲しいです。もし大した危険がないようなら、そのこともきちんと説明した方がいいと思うのです。恐れなければいけないものは恐れるべきですが、恐れなくていいものに対して過剰に反応する必要はありません。いずれにせよ、厚生労働省を中心に首相官邸主導で安心と安全を確保して欲しいと思います。

森田)根本的な治療法も確認されておらずワクチンもないということで、水際で防ぐのが大事になってきますが、これから春節で大量に中国の方が来るのを検疫でチェックするのは相当難しそうですね。

佐藤)事実上不可能です。できないのだということを前提にして、危機管理をしていくということですね。

森田)オリンピックも控えて、変な病気が持ち込まれなければいいのですが。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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