安倍総理~韓国への「最も重要な隣国」が意味するもの
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月21放送)に ジャーナリストの有本香が出演。20日の通常国会で行われた安倍総理の施政方針演説について解説した。
通常国会召集、安倍総理が施政方針演説を行う
安倍総理)本年のオリンピック・パラリンピックもまた、日本全体が力を合わせて世界中に感動を与える最高の大会とする。国民一丸となって新しい時代へと、みなさん共に踏み出して行こうではありませんか。
通常国会が20日に召集され、衆議院本会議で安倍総理は施政方針演説を行い、憲法改正に改めて意欲を示すとともに、全世代型社会保障改革について先送りしない決意を示した。同じ内容で参議院本会議でも演説を行った。また外交では韓国について、「最も重要な隣国」という表現を3年ぶりに復活させた。
飯田)この韓国についての表現が、多くの新聞の見出しになっています。一方で、外交ではありませんが産経新聞などでは、オリンピックの選手村に関連して台湾のことが書かれています。
「最も重要な隣国」とは「であればこそ、国と国との約束を守り」とつながる意味合いを持つ
有本)この韓国、台湾への言及がいろいろな形で言われています。たしかに韓国について「最も重要な隣国」という表現をしていますが、注意ぶかく聞くと、「韓国は元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国」とし、「であればこそ、国と国との約束を守り」とつながります。この「元来」があるとないでは大きく違います。後ろの「であればこそ、国と国との約束を守り」ということを期待するわけですから、「最も重要な隣国」という表現が復活したと言っていますが、少し意味合いが違いますよね。
飯田)文脈としては、むしろ正反対に近いですよね。
有本)そうですよね。「基本的価値を共有する」に関しては、2014年に韓国が前の政権、朴槿恵政権のとき、「言いつけ外交」を世界中で展開して、そのとき日本政府側から、かなり働きかけをしたのにやめませんでした。いまとなって言えば、国内で左派との激しい争いがあったからだとわかるのですが、当時は日本からの「やめてよ」という話に応じませんでした。そのため2014年秋に、外務省のウェブサイトで韓国を紹介しているページから「基本的価値を共有する」という1文を削除しています。それから考えてみると、基本的価値を共有するという認識は、未だに回復していないと言えます。
日台の間では友情を感じられるキャッチボールが
有本)一方で台湾に関しては、岩手県の野田村で台湾の選手団を受け入れると言ったとたんに、議場では大拍手が起きました。これは台湾でも重く受け止められて、昨日(20日)夜に蔡英文総統がツイッターを更新されて、「嬉しく思う、一層頑張って」という内容のメッセージを日本語で発しています。
飯田)蔡さんは日本語でツイートしますよね。
有本)蔡さんの日本語ツイートは、日本国民とつながることを企図したツイートをしていますよね。日本と直接の国交はないですが、日台の間の友情を感じられるキャッチボールです。それに比べて「韓国はね」という感じです。
飯田)まさに基本的価値、民主主義であったり、法の支配、自由を本来は台湾も韓国も共有しているはず。
有本)していなければなりません。ですから2つの隣国、かたや正式には国交がない、しかし台湾と深くつながりたいと思っている意思の表れが、国会でも見られました。ただ一応、北朝鮮問題、ロシア、中国といろいろな外交関係に触れたり、あるいは安全保障で航空自衛隊に宇宙作戦隊を創設するということも言われていました。一通りいろいろ語られたと思いますが、新聞各紙を見ると朝日新聞と産経新聞では相当違います。一面トップで施政方針演説を扱っていますが、朝日新聞は「疑惑国会を開幕した」という見出しで、「桜問題、閣僚の辞任などに触れていない」という内容になっています。
飯田)そこには触れず、オリンピック・パラリンピックに何度も言及と、毎日新聞も同じような見出しです。
有本)また疑惑国会。国民としては「それをやっている場合か」という感じだと思いますけれどね。
憲法改正について議論したい安倍総理
飯田)産経新聞は憲法改正について、この国会が正念場になると。
有本)それはそうでしょうね。総理も言及していましたから。
飯田)スタンスの違いというか。今回は法案の提出も絞って、憲法改正を今度こそ議論したい。
有本)そうですね。憲法改正にシフトという形に行くかということでしょうけれども、自民党が憲法審査会をどうまとめるかにかかっていると思います。
飯田)その慣例で、憲法審査会は野党にも最大限の配慮をするということでやって来たわけですが、進みません。
有本)野党に配慮し過ぎて、もはや過剰です。やはり自民党は数を持っているということを、最終的には国民投票ですから、その機会を損失させない方向に使ってほしいですね。海上自衛隊が中東の海域で任務を始めるいま、憲法の問題は重要です。
憲法の壁が大きい、中東での自衛隊活動~危険状態になっても日本船籍以外は守れない
飯田)そうですね。P3C哨戒機が行って、海上の監視活動を開始しました。情報収集活動を行うということですが、ここでやはり憲法が…。
有本)憲法の壁は大きいです。
飯田)できること、できないことというのがね。
有本)閉会中に審査をやりましたが、本当に靴の上から足をかくというか、議論と言えません。野党側は「自衛隊が行って危険ではないのか」という一本やりです。危険がある可能性があるから行くわけですよね。それ以前の問題として、それほど自衛隊が危険な海域に行くことを心配するのであれば、その海域を日本に原油を運ぶタンカーが通っていることはどうなのだと思いますよね。
飯田)そこには日本人が乗っている。
日本に入って来る原油を守ることができない
有本)乗っていなくてもタンカーが1日入って来なかったら、半日分の油が届かないのですから、そういう問題を国民に基本認識をさせないようなやり取りをしています。この件で気になるのは、調査活動として防衛省設置法に基づいて行く。仮にその海域が非常に危険な状態になったときに、海上警備行動を発動してもやれることが限られます。
飯田)日本船籍の船は守れますが、それ以外のパナマ船籍なども多いですよね。そういうところは、実力を持って排除まではできません。
有本)水をかける、警告するという程度でしょう。日本船籍の船を守ることができると言っても、仮にそれが守れたとして、武器使用には相当な制限が伴います。他の国があの海域に自国の艦船を出していることとは、まったく意味合いが異なります。この辺りを、特措法をつくるのか憲法改正して根本的な壁を取り払わないと、私たちの生活そのものが守れません。
飯田)エネルギーは国の根幹ですものね。
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