専門家に訊く~新型コロナウイルスの予防に必要なこと
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月3日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦を電話ゲストに迎え、新型コロナウイルスの最新情報について訊いた。飯田浩司が休みのため新行市佳が進行を務めた。
新型肺炎~湖北省からの外国人入国拒否
WHOが新型コロナウイルスによる肺炎に対して緊急事態宣言を出したことを受け、日本政府は1日から入管難民法に基づいて、日本に入国する直前の2週間以内に湖北省に滞在歴がある外国人、そして滞在歴に関わらず、湖北省発行の中国旅券所持者も入国を拒否し、水際対策を強化している。
新行)世界62ヵ国で中国からの渡航者に対し、何らかの入国制限措置を導入しています。現在、日本国内の感染者数は20人で、週末には千葉県内のバスガイドの感染者が、奈良県の男性バス運転手から三次感染した可能性があることもわかりました。今朝はWHOの緊急事態宣言や国としての対策、そして個人の対策などを専門家に伺ってまいります。WHOや国立感染症研究所感染症情報センターを経て、感染症や公衆衛生を専門にしている医師で、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんです。
須田)日本時間1月31日に、WHOが緊急事態宣言を出しました。これについては、何が最終的な決め手になったのでしょうか?
WHOの緊急事態宣言のタイミングは妥当であった
岡部)延期を1回しているわけですけれども、その時点では情報が不足しているということでした。科学的な判断をするためには一定の情報が必要なので、それを促そうという意味があったのではないでしょうか。
須田)タイミングが遅かったということはありませんか?
岡部)病気の軽重や広がり具合などを見て、あまり早く判断すると相当、混乱を招いたのではないでしょうか。現実にいまパニックに近い状態になっていますので、あまり早く出したくないという気持ちもあったと思います。あのときの「いま決断しない」ということは、妥当だなと思いました。
須田)この宣言に関して、WHOのテドロス事務局長は「感染封じ込めに非凡な手段を使った中国政府は、称賛されてしかるべきだ」と記者会見で中国に賛辞を贈りましたが、私は聞いていて強い違和感を持ちました。中国の対応は、その通りに受け取っていいものなのでしょうか?
岡部)メッセージの出し方はいろいろあるとは思うのですけれども、少なくともウイルスの情報を早く公開したのは素晴らしいことだと思います。そのお陰で患者さんのいない日本でも、例えばタイや韓国でもすぐに診断ができるようになったことは、いままでの科学より進歩しています。公開するというところでは称賛に価すると思います。ただそこから後の、疫学的な情報が非常に遅かった。
須田)疫学的な情報とは、どういうことでしょうか?
岡部)患者さんの年齢・性別や、どういう状態の方か、重いのか軽いのか。そういった情報が入って来ると、私たちとしては助かるのです。
須田)専門家の方から見て、非常に有益な情報だということですね。
岡部)はい。それによって対応が変わりますので。
水際を強化するよりも、きちんとした医療体制を早く作る方が大切
須田)今月(2月)から、湖北省発行のパスポートを持つ中国人などは、入国拒否という措置が取られるようになりました。こうした水際作戦について、専門家の立場から見て、一定程度の効果があるものだと考えていいものでしょうか?
岡部)水際を強化するには、相当な労力とお金もかかります。一定数が国内に入って来ている以上は、軽症の患者もたくさんおられるので、その分、早く医療体制の整備をするべきだと思います。少なくとも患者さんが落ち着いて医療を受けて、必要な場合には隔離されなければならないのですが、そういうことが落ち着いてできる体制を早く作った方がいいと思います。
須田)日本国内で三次感染が疑われる患者が判明しましたが、このことから新型コロナウイルスについて、どんなことがわかるのでしょうか? 三次感染は何か意味があるものなのでしょうか?
岡部)特定のところでうつるならば、そこに行かなければいいし、あるものに触らなければいいのですが、人から人にうつって行く間に、感染源となるものがよくわからないときがあるわけです。風邪でもインフルエンザでも、誰にうつったか、誰からうつったかがわからないわけです。また一方では、うつった患者さんの多くは軽くすんでいます。そこも冷静に見るべきです。「誰からうつるかわからない、わかるとすぐ肺炎になる、肺炎になると死亡する」と結びつけてしまうから、みんなびっくりすると思うのです。1人亡くなったということはありますけれども、多くの人は、特に海外で感染している人のほとんどは軽くすんでいるわけですから。そこはきちんと様子を見て判断した方がいいと思います。
ウイルスの予防には手洗い・うがい・マスク
須田)一方で、三次感染も含めて副次感染になると、我々一般市民もウイルスに対して相当警戒しなくてはならないと思うのですが、ウイルスに感染しないために私たちは何をしたらいいのでしょうか?
岡部)呼吸器感染という共通の部分があるので、インフルエンザや風邪をひいたときの一般的な注意が、いちばん重要ではないかと思います。加えて、あまり下痢をしているという症状はないのですが、コロナウイルスは便から出ることもあるので、ノロウイルスと同じように下痢から出ることに注意してください。結局は日常のなかで適当に手洗いうがいをし、適当にマスクを着けるということが、感染症対策の基本としては重要です。それから、もし糖尿病の具合が悪いとか、腎臓の調子が悪いという方は、きちんと治療を受けていい調子になるようにしていただくと、リスクとしては減ると思います。
須田)そういう病気にかかっている方が感染した場合、重症化するということもありますしね。
岡部)みなさんがそうなるわけではないのですが、普段からいい調子にしておくのはとても大切だと思います。
ウイルスそのものが出て来たことで進められる薬の開発
新行)国立感染症研究所が1月31日に、患者のサンプルからウイルスそのものを分離して、培養することに成功したと発表しましたけれども、今後ワクチンや薬などへの応用はどんな道筋でできて行くのでしょうか?
岡部)いままでの検査は仮想の、ウイルスの分子配列などを見て人工的に作っていたわけですけれども、本物があること、患者さんからウイルスそのものが出て来たというのはたいへんありがたいことです。薬やワクチンの開発、検査法の迅速化には必須ですから、これが出て来たというのはいいニュースだと思います。ただそれが明日できるわけではないので、研究を早急に進めるという意味では、スタートラインに立ったということが言えると思います。
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