アメリカ大統領予備選~それでもサンダース氏が有利である理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月2日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカ大統領予備選について解説した。
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米中西部アイオワ州シーダーラピッズ市の集会で支持を訴える、急進左派のバーニー・サンダース上院議員=2020年2月1日 写真提供:産経新聞社
アメリカ大統領予備選~サウスカロライナでバイデン氏初勝利
11月のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・民主党の候補者選びは、第4戦となる南部サウスカロライナ州の予備選挙が行われ、バイデン前副大統領が初めて勝利した。3日のスーパーチューズデーに向けて、民主党の重要な支持基盤である黒人層からの厚い支持を集めた格好だ。
飯田)このところは第2戦、第3戦と左派のサンダースさんが勝っています。アイオワもサンダースさんが僅差で、これは本命かということが言われていましたけれども、ここはバイデンさんが一矢報いたような形になりますか?
バイデン氏には他候補と違う強い政策がない~今後厳しい状況に
須田)ここを落としたら、スーパーチューズデーを前にして事実上の撤退となっていましたからね。ここに関しては、人も資金もどんどん投入して支持を固めたのだと思います。「黒人票を集めることができる」というのが、バイデンさんの唯一にして最大のアピール材料です。それが否定されてしまうと大統領候補以前に、政治家としてもアウトになってしまいます。スーパーチューズデーを前にして、バイデンさんは蝋燭の火が消えそうになっている、最後の輝きという感じもします。バイデンさんからは、民主党の指名候補を獲得するにあたって、他の候補と「ここが違う」というところが見えません。とりあえず従来のオバマ政権から続く票を固めて、「ザ・民主党」という立場を強化したにすぎないのではないかと思います。
飯田)スーパーチューズデーに入ると、ブルームバーグさんも出て来ます。中道のバイデンさんは厳しくなって来そうですか?
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」
学費無償化、学生ローンのゼロリセット~学生ローンを抱えている4500万人にアピールするサンダース氏
須田)黒人票だけでは、指名候補を獲得することはできません。「私はこんなにも黒人から評価されているのだから、他の人たちも私に入れてくれ」というのが戦略ですから。それに対し、バーニー・サンダースさんは「学費の無償化に加えて、これまで学生ローンを抱えている人たちに対してはチャラにする」と言っています。教育の無償化、学生ローンのゼロリセットは大きなアピールポイントになっていて、どれくらい影響するかというと、学生ローンを抱えている人たちは4500万人いるのです。アメリカは日本と違って、どんなに大金持ちや富裕層でも、親が学費を出すことはありません。ですから借入をするのですが、これがかなりの負担になっていて、私立大学の平均授業料が年間で3万6900ドル、約400万円あまりになっています。
飯田)日本とは桁が違いますね。
須田)公立大学もこれに近い水準になっていて、ほとんどローンで賄うことになるので、40代でも学費ローンを抱えている人たちがかなりの数に上っているのです。
飯田)ストレートで行っても全額ローンだと、かなりの額を背負って出るということになります。それは辛いですね。
須田)ですから、4500万人が学生ローンを抱えているなかで「それをチャラにしますよ」と言ったら、実現できるかどうかは別としても、かなり魅力的な政策ですよね。学生に対して相当アピールする力になるのではないかと思います。それに対抗できるだけの有力な政策が、バイデンさんには見当たりません。
飯田)確かに、政策論でバイデンさんはあまり聞こえて来ないですね。
若い人を中心に支持を集めるサンダース氏
須田)サンダースさんが若い人を中心に相当な支持を集めているというのは、そこにあるのです。
飯田)バイデンさんが黒人票を取れるのは、オバマ前大統領とコンビを組んでいたことが大きいのですか?
須田)そうですね。また民主党という党自体が黒人の支持を広く集めて来たのですが、バイデンさんは民主党の主流派に位置する人ですから。それに対してサンダースさんは、もともと党員でもないのですよ。傍流中の傍流というところです。黒人に目を向けるということよりも、学生ローンを抱えている人たちにアピールして来たので、黒人に対する政策というのはありません。最低賃金15ドル以上というものはあって、ここが1つのフックになるのですけれども、黒人オンリーの政策が出ていないところがサンダースさんのウィークポイントだと思います。
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前米ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏(ベルギー・ブリュッセル)=2018年3月22日 写真提供:時事通信
3月3日のスーパーチューズデーで大勢は決する
飯田)3月3日のスーパーチューズデーは、全米14州で予備選挙や党員集会が行われるのですが、今年(2020年)からカリフォルニアがここに入りました。そうなると、かなりの数がここで決まりますね。
須田)カリフォルニアは通常、最後の方で揉める州と言われているのですけれども、事実上は3月3日で大勢が決するのではないかと思います。
飯田)そう考えると、大勢はサンダースさんに有利に働いて来るのですか?
須田)以前申し上げたように、「モメンタム」がアメリカ大統領選挙では非常に大事なのですが、その勢いはまだまだスローダウンしている感じはありません。このままの勢いでサンダースさんがスーパーチューズデーに突っ込んで来ると、やはり強いのではないでしょうか。しかしブルームバーグさんも、膨大な資金力でテレビ及びネット広告をバンバン打ち、「金はあるぜ」という感じでやって来ています。サンダースさんはトランプさんを意識した選挙活動、あるいは選挙戦を戦って来ましたが、結果的にブルームバーグさん対策にもなっているのだと思います。
飯田)「金持ちのための政治ではないのだ」ということが、両方に効いてしまうということですね。