ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月17日放送)にジャーナリストの有本香が出演。16日に行われたG7首脳のテレビ会議について解説した。
新型コロナウイルス対応について初のG7首脳テレビ会議開催
先進7ヵ国(G7)首脳は、日本時間16日午後11時から緊急テレビ電話会議を開催した。
安倍総理大臣)世界の人々の不安を和らげるためには、何よりも治療薬を開発することが重要であると、G7で協調しながら経済財政政策を実行して行くという2点について申し上げました。
飯田)新型コロナウイルスの対応について、さまざまな角度から議論したということです。経済財政、ワクチン開発についての2つの柱。経済にも相当な影響が出ています。
ニューヨーク市場は3000ドル近い下げ幅~世界恐慌以上の下落率
有本)保健衛生上の危機であることと同時に、経済の大きなクライシスです。ニューヨーク市場が未明の取引を終えているのですが、3000ドル近く下げているのですね。
飯田)終値で2万188ドル52セント。前の取引日と比べて2997ドル10セント安。率にして12.93%というのが、記録が残っているところだと「ブラックマンデー」よりは率としては小さいのですが、1929年の大恐慌よりも下落率が大きいようですね。
有本)理由としては、ある意味で納得しますよね。人の動きを止めてしまうわけですから。「リーマン・ショック」は金融の問題、お金の滞りではないですか。しかし、人の動きまで止めてしまうことは、あらゆる経済活動が止まることと等しいわけだから当然です。今回、G7の首脳がテレビ会議をやったこと自体が異例ですが、画期的ですよね。
飯田)初めてだったのですね。
有本)今後、特にこの状況を脱して行くまでの間、必要なときはこういうことをやればいいと思います。この会議で決まったこととして、G7各国の保健大臣、財務大臣に対して週1度くらい調整を、というような緊密な連携が必要なのでしょう。ただ、G7首脳がいまここでテレビ会議に至ったのは、安倍総理がこれに先立ってアメリカのトランプ大統領はもちろん、フランスのマクロン大統領、イギリスのジョンソン首相と個別に電話会議をしているのです。
飯田)このところ立て続けにやっていますね。
有本)一種の根回しというか、G7のなかでそういう役割を果たす人が他にいないのですよ。
飯田)今年(2020年)の議長国はアメリカなのですよね。アメリカが根回しすると、いろいろと角も立つし。
世界的なパンデミックにより各国の危機意識が共有された
有本)それもあるし、アメリカはちょうど対応に追われ始めたということもあって、日本の首相がやるのがいちばんいいのと、各国首脳も安倍さんとは話がしやすいという状況があるのでしょう。本来ならば2月末くらいに、G7首脳が何らかの形で会談できたらと日本は考えていたようですが、これだけ世界的なパンデミックという状況に陥って、初めて危機感が同じレベルで共有されたということがあるわけです。
飯田)2週間ほど前、2月末の段階だと、まだアジアの問題だという意識だったのですね。
有本)特にイギリス、フランスはこれほどのことになるとは思っていなかっただろうし、もとよりアメリカも、これだけ自国の問題になるとは思っていなかった背景があるのです。それと保健衛生の危機以上に、経済危機が多くの人を立ち行かなくさせてしまうのではないか。総理は会見のなかでも、ワクチンができることが大きなポイントになるとおっしゃっています。確かに治療法やワクチンの開発は大きいのですが、これまでのいろいろな状況を見ていると、各国の対応にそれぞれお国柄がにじんでいますよね。イギリスのジョンソン首相が「ある程度みなさんの愛する人が亡くなるのは仕方ない、覚悟しましょう」みたいなことを言いました。ある程度の感染が拡がるのは仕方ないけれど、そのなかで集団免疫ができて行くのだと。これは、少しずつウイルスに関しての情報が出て来たから言えることでもありますよね。
飯田)重篤化するのは一部だし、ということですよね。
有本)感染力がだいたいどのくらいか、感染力に偏りがあるかなど、いろいろなことが出始めたのと同時に、お国柄がにじんで来ました。あれを日本の首相が言ったら、大変な騒ぎになります。
飯田)「愛する人が死ぬとはどういうことだ、見殺しにするのか。全員検査だ」といった話になります。
有本)そういう部分も含めてお国柄がいろいろと違うのですが、危機感としては共有できるステージにあって、G7が主導して世界経済を元の基調に一刻も早く戻せるかどうかということです。
飯田)対処法も、医療崩壊をまずは起こさせない。それがだんだんと世界のコンセンサスになりつつあって、だからこそジョンソン首相の発言も出て来るわけですよね。ピークをなだらかにすることで医療は維持しながら、ワクチンがない以上は免疫を獲得しなければいけない部分がある。だから、かかるのは仕方がないということですね。
不安増す市場~大胆な対策が必要
有本)問題は、市場です。まだまだ先が見えないし、トランプ大統領も大規模な減税に言及したけれど、それもなかなか具体性を持ち得ないということで、市場は不安度を増しています。
飯田)見透かしたようですよね。現地15日にFRBが1%の利下げを発表して、市場が開いたらそれで安定するかと思いきや、3000ドル近くのマイナスになってしまった。
有本)各国の中央銀行に対しても、協調して金融政策をやって行くようにということですが、これがどれだけ効いて来るかということと、雇用を失う人がいるのも大きな不安につながります。日本でもそうですが、雇用をどうやって確保するかということです。日本は特に、中小零細企業が倒れないように支えることを迅速にやらなければいけませんが、消費税を上げたことのマイナスを逆戻しする機会としては、使えるのではないでしょうか。
飯田)「リーマン・ショック」以上ですよね。
有本)明らかに以上ですね。
飯田)消費税を上げることで、お金持ちが有利だということがよく言われていましたが、下げることによって今度はお金持ちが不利で、むしろお金のない人の消費が増えて恩恵にあずかれる、と言う人もいます。
有本)その部分は、もはや金持ちであるかそうでないかということとは切り離して考えるべきだと思います。日本経済全体として考えるべきだし、これだけ株が下がって来ると、お金持ちもお金を使わなくなりますよ。
飯田)むしろ生活防衛ですね。
有本)いずれにしても消費を少しでも促さなければいけません。そのためにも思い切った策は必要ですよね。
大きな対策を取って徐々に緩めて行く
飯田)橋下徹氏も指摘していますが、最初はウイルスの状態がわからないからハードルを高く上げて、イベントも全部中止になりましたが、だんだんと対処すれば大丈夫だというラインが見えて来ていないかと。
有本)このウイルスの問題を扱ったときから言い続けていることですが、こういったものは最初に大き過ぎる蓋で抑え込めばいいのです。だんだん開けて行けばいいことなのですよね。大は小を兼ねると言いますが、逆はありません。入国制限や休校要請は根回しがないという批判があるけれど、こんなものに根回しなどないということは、各国の対応を見ればわかりますよね。根回しをしていたらできません。日本は初期にも少し大胆にやるべきだったと思っていますが、特に2月末からの果断な対応は評価できると思います。そういう意味で、経済対策も大胆に行って欲しいです。
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