ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月17日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。新型コロナウイルス対策でG7首脳が発表した共同声明について解説した。
新型コロナウイルスでG7首脳が共同声明
G7(主要7ヵ国)首脳は新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる緊急のテレビ電話会議を開き、共同声明を発表した。声明では「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は地球規模の健康危機で、世界経済に重大なリスクをもたらしている」と指摘。対処には国際的な協調が必要だとして「G7で協調し、力強い経済成長回復のための土台をつくる」と表明した。
森田耕次解説委員)G7の首脳は緊急テレビ電話会議の後に共同声明を出して、「新型コロナウイルスの対処に向けてあらゆる措置を取る」としています。共同声明は「パンデミック(世界的大流行)への対応は科学に基づいて民間企業も活用した上で、国際的な協調が求められる」としています。私権を制限する強権的対応を求める声が一部で上がっているのを念頭に、「導入する措置は民主的価値観に合致する必要がある」と強調しています。各国の保健担当や財務担当の閣僚らが毎週、協力強化のために調整に当たることになっています。また各国で疫学のデータを共有し、共同研究などを強化して、ワクチン、治療薬の製造、供給を支援するとしています。G7サミットの他、G20でも協力しようということで、全世界的に対応していこうということですね。
野村)今回のウイルスで私たちが蝕まれる可能性のあるものは、健康はもちろん、経済、下手をすれば自由と民主主義が蝕まれてしまう可能性があるのです。私たちが共通の価値観として持っている民主的な社会をウイルスに侵食されないようにするためには、中国などはスマホでQRコードが出てきて、自分が移動したところでグリーンや赤のQRコードの人がいて、赤い人は入れなくなっているなど、移動が監視されています。こういう封じ込め方もあるけれど、そうでないやり方を見つけていくことも大事だという気がします。
森田)日本も法律が成立して、緊急事態が宣言できるようになりました。このときに私権をどう制限するかなど、慎重な対応が求められるということですね。
野村)ただ、やるべきところは間髪を入れずに対応しなければいけません。だから、リーダーシップを発揮して緊急事態であることを知らしめることは重要です。ただ、そのときでも私たちが閉じ込められてしまうことや、すべての行動が監視される社会を目指しているわけではないので、ここは緊急事態を受けて私たちが良識を持ってどう行動するかという全体の仕組みづくりが大切です。
森田)それから、WHOのテドロス事務局長は先日、「いまやヨーロッパがパンデミックの中心地だ」と述べていまして、主戦場が中国からヨーロッパに移った認識を示しています。
治療薬開発における日本の問題点~薬の審査に時間がかかる“ドラッグ・ラグ”
野村)今回のG7サミットの共同声明でいちばん大事なのは、とにかくみんなで急いで薬をつくろうということなのですよね。これが何よりも大事なメッセージで、このために疫学的なデータをみんなで共有して、どこの国がどういう形で開発するかというよりも、とにかく知見を集めて一気呵成につくりたいと。これは、日本がリーダーシップを取って発言した内容が、国際的な共同声明のなかに盛り込まれているということが言えます。ただ、日本にとっての課題はこれまで海外でいい薬ができても、それを日本で使うまでには時間がかかり過ぎる問題がありました。これは「ドラッグ・ラグ」と言われていて、いい薬が世界では使えるのに日本では使えない。あるいは、日本で開発した薬が認可を受けるまでの間に、ものすごく時間がかかるというものです。そこの規制緩和をしないと、世界と足並みを揃えられませんので、そこも含めて日本は国内体制を整えていかなければいけないということが言えます。
森田)「ドラッグ・ラグ」はずっと言われていて、とにかく治験や承認に時間がかかるのは前からですよね。
野村)医薬品医療機器総合機構で審査を受けて、それから厚労省の薬に関する審議会でまた審議をします。ですから、薬ができてから2年間くらいかかるのですよ。これじゃあ間に合いませんから、ここの規制緩和は是非必要だということが言えます。
いまやヨーロッパがパンデミックの中心地~EUが入国管理を厳格化
森田)そして、ヨーロッパのパンデミックがかなり深刻な状況になってきています。AP通信によりますと、イタリアの感染者は2万7000人以上、死者が2100人以上。世界ではおよそ17万5000人が感染して、死者が7000人以上に達しているということで、EUは域外の市民が不要不急の理由でEUに入るのを30日間原則禁止することを加盟国に示したということです。緊急のEU首脳会議で正式に行うようですが、これは異例の厳しい措置を取ってきたということですね。
野村)特に見ていると、イタリアの状況が非常に厳しいですよね。さらにスペインなどにも波及していっていますが、医療体制が崩壊してしまうと大変なことになるということが教訓として得られているわけですよね。もともと医療体制が脆弱になってしまったのは、緊縮財政でどんどん病院を縮小してしまう政策があったのです。他方で、重症の人をピックアップして検査するのではなく、すべての人たちを検査してみんな陽性だということで病院に押し寄せる形をつくってしまうと、医療がどんなにしっかりしていてもうまくいきません。その辺りはキャパシティと検査を整合させる形で整えることが教訓になっていると思います。
森田)それから、アメリカもトランプ大統領が新たな呼びかけをしています。10人を超える集まりや、旅行、レストランやバーでの外食を自粛するよう呼びかけているということです。病気のときは外出しないなど、国民向けの15日間の行動指針をトランプ大統領が公表しましたね。メジャーリーグも最低2週間延期するということで、シーズンの開幕をさらに遅らせる状況になっています。
野村)増山さんと森田さんは、最近、外出していますか?
森田)ほとんどしませんね。近くを散歩するくらい。
増山さやかアナウンサー)そうですね。仕事以外に遊びに行く回数は減りましたね。
日本国内で感染拡大が抑えられている理由
野村)みんな自分で抑制して、こもっていますよね。これが意外と日本では効いていて、何か強制的に出るなと言われているわけではないのですが、日本人は律儀だから自己抑制をして不要不急の外出は避けるようにしています。それから、クラスターという話を聞くと、イメージできるところには近づかないようにしているでしょう。これで、日本は世界的に見ても死者数が少ないですし、専門家会議でも「持ちこたえている」と言っています。それに比べてヨーロッパなどが爆発的になっているのは、そういった抑制がきかない状態になってくると大変だと。そうなると、結局は命令するしかなくなってしまうので、良識や国民性にもよっていると思います。
森田)アメリカでは略奪行為に備えて銃や銃弾が売れてしまっているようですからね。
野村)ウイルスは社会を壊してしまう可能性があるので、そこを焦らずにしっかりとやっていく必要があると思います。
森田)そこのところ日本人はしっかりしていると言えるかもしれません。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。