欧米との文化・環境・体制の違いが産む日本での拡大抑制~新型コロナウイルス感染

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月25日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。世界の新型コロナウイルスの感染者数について解説した。

欧米との文化・環境・体制の違いが産む日本での拡大抑制~新型コロナウイルス感染

記者が座る椅子がそれぞれ1メートル以上離して配置された米国防総省での記者会見=2020年3月10日 写真提供:産経新聞社

新型コロナウイルス感染者、世界で40万人超える

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が世界全体で40万人を超えた。18日に20万人を超えてから、わずか1週間で倍増している。死者も世界全体で1万8500人に上っている。

森田耕次解説委員)ヨーロッパに続き、アメリカでも感染者が急増していまして、感染拡大は新たな局面を迎えようとしています。国別では、アメリカの感染者数がおよそ5万1000人。8万1000人の中国本土、6万9000人のイタリアに次ぐ規模となっています。特にアメリカ最大の都市であるニューヨークで感染拡大が目立っており、ニューヨーク州のクオモ知事は、感染者が3日ごとに倍増していることに対して「予想以上の勢いだ」と懸念を表明しています。「感染のピークが早ければ今後2週間で訪れ、現状のままだと医療機器や人員が大幅に不足する」と危機感を示し、連邦政府が備蓄する2万台の人工呼吸器を直ちに放出するよう求めています。クオモ知事によると、最大で4万台の人工呼吸器が必要だそうですが、いまは7000台しかないということです。ニューヨーク市の感染者は1万5000人と、突出しているようですね。

河合)WHOも、今後アメリカが感染の中心地になるという見通しを出していて、アメリカ政府はニューヨーク市が感染の中心地になっていると言っております。ニューヨーク市はかなりの勢いで患者数が増えており、激増期に入って来ているのだと思います。

森田)しかも、人工呼吸器が足りない状況のようですね。

河合)これだけの患者が一気に出ることは、どの国も想定していません。平常時であれば、これまでの人工呼吸器の台数で十分対応できていたわけです。患者数が急増したからといって、急に(機械を)つくれるものではなく、なかなか追いつかないですよね。

森田)アメリカのトランプ大統領は、3月末まで10人を超える集まりなどの自粛を呼び掛けていますが、大幅な延長は見送って4月中旬までに緩和したいということを、FOXニュースに出演して話したということです。4月12日はキリスト教の復活祭(イースター)ですから、それまでに経済活動も開放したいという意味合いがあるようですね。

河合)経済的な影響にも対応しなければならないという問題もあるので、大統領の思いとして日にちを切っているのでしょうが、実際にトランプ大統領が思っているような形で事態の収束が進むかどうかは疑わしいところです。もともと夏ごろまでは感染者数の増加が続くと、アメリカ政府は見通しを立てていたはずです。感染拡大を封じ込めるために思い切った政策も打って来ていますので、どこかで感染者数が減るときは来ると思いますが、4月12日は難しいかなと思います。

森田)これで緩和してしまうと、逆に批判が高まる可能性もありますよね。

欧米との文化・環境・体制の違いが産む日本での拡大抑制~新型コロナウイルス感染

米疾病対策センター(CDC)を視察するトランプ大統領=2020年3月6日、米ジョージア州アトランタ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

欧米諸国と日本の違い~高い医療体制、公衆衛生の水準

河合)アメリカやヨーロッパ各国と日本との違いはいくつかあって、日本の場合は昔から水も豊富で、こまめに手洗いをする文化があるということも違うわけですが、圧倒的に医療へのアクセスと水準が違うのですよ。特にアメリカは移民が多く、しかも医療保険がきちんと整っていない状況で、少し症状が出ても適切な段階で医療機関へ行けないという人たちが多い。それが感染拡大の原因になってしまうこともあります。その点、日本の場合は誰もが当たり前のように医療機関へ行ける、珍しい国です。

森田)国民皆保険でもありますからね。

河合)世界でこんなに医療が整った国はないのです。医療機関へのアクセスのよさだけでなく、医療水準も違います。この薬が効かなかったら次の薬、ということを次から次へと、しかも患者にとっては低負担でやってもらえる国はないのです。この辺りが日本の死者数が増えていない大きな理由です。そういう違いもあって、ニューヨーク市の場合はこれだけ数が増えてしまうと、なかなかやりようがなくなって来ているのだろうとも推察します。

森田)日本の今回の対応としては、検査ばかりではなく感染者の経路を辿って行くというものでしたよね。

河合)ここまではうまく行っているのだろうと思います。必要な人だけを検査して、クラスターを探して潰す。そして病状の重い人は、手厚い医療が行える医療機関に入院できるようにするやり方ですよね。国によってやり方は違いますが、他国では「患者を探すのだ」と検査をたくさんやってしまって、軽症者まで医療機関に行くことになってしまい、それがむしろ医療崩壊を早めてしまった。今回の感染拡大がすべて終わる最後の段階まで見なければ、どちらがいい方法だったのかはわかりませんが、いまの日本方式が続けられる以上は、これがいいと思います。

欧米との文化・環境・体制の違いが産む日本での拡大抑制~新型コロナウイルス感染

新型コロナ/閑散としたニューヨークの街並み=2020年3月17日 写真提供:時事通信

これからの対応~軽症者のための施設確保を急ぐべき

森田)韓国は最初、ドライブスルー方式の検査をやっていました。

河合)やっていましたが、途中から軽症の方を隔離するような施設をつくって、そこに行くことにしたようですね。医療現場には重症者だけを集めて、患者の集中を抑えているわけです。イタリアなどを見ていると、病院に感染者が集まってしまって医療現場が疲弊し、病院のなかがパニックになっています。日本はきちんとこの先も、重症者が集中的に手厚い医療を受けられる病院へ行けるような体制を維持しなければなりません。

森田)それによって医療崩壊を防ぐことになるわけですよね。

河合)軽症者を隔離するための施設を、日本政府は早くつくらなければならないと思います。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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