ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月27日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。G20が新型コロナウイルス対策で5兆ドルを投入すると発表した声明について解説した。
G20がコロナ対策に550兆円投入すると発表
主要20ヵ国・地域(G20)は26日、テレビ電話会議を開き、新型コロナウイルス対策で5兆ドル(約550兆円)を投入するとの声明を発表した。急速な景気悪化を食い止めるため、巨額の財政出動で足並みを揃える。
飯田)各国、相当規模を大きくしてやる。アメリカは2.2兆ドル出すということです。
宮家)5兆ドルのうちの半分近く。調べてみると、アメリカは1人に1200ドルの小切手を払うことになります。夫婦だけの場合は2400ドル。対象になるのは、年収が7万5000ドル以下の人たちです。年収が増えるとそれに比例して減り、10万ドル以上の人たちはもらえない。低所得者には有利になっています。子どもがいる場合は1人500ドル。金のばら撒きだと言えばそうかも知れませんが、いま必要なのは金を社会で回すことなので、決して間違ってはいないと思います。
自らの大統領選挙に結びつけようとするトランプ大統領
宮家)しかし、トランプさんはまだ選挙をやっているわけです。イースターが終われば正常に戻るから、アメリカの経済をもう少しオープンなものにするのだと言っていますが、そんなことできるわけがない。トランプさんも大統領として少しはよくなったと思いましたが、まだまだ現実と違うことを言っているのですね。逆に言うと、アメリカ政府の対策本部としてはタスクフォースがありますが、その長がペンス副大統領です。また医療の専門家もいて、少なくとも彼らの言うことは信用できるという評価になっているようです。いずれにしろ、G20が550兆円というのは多いのか少ないのかわからないけれども、G20が結束することは決して間違ってはいません。
飯田)コロナウイルスが最初に流行し始めたころ、イメージとしてはSARSや、形は違うけれどもエボラ出血熱のような、地域的な流行かと思っていました。しかしスペイン風邪やペストと並ぶとなると、歴史の教科書に載るようなことになるのですね。
宮家)スペイン風邪では全世界、最大で見積もって1億人くらい死んでいます。ペスト(黒死病)の場合は、世界の人口が当時5億人なのに、1億~2億人が死んでいる。
飯田)6分の1から3分の1。
宮家)ヨーロッパの一部では、ある国の人口が7割減ったという地域もあるわけです。もちろん当時よりも医療技術が発達していますから、安心できる部分もあるのだけれども、やはり危険を甘く見てはいけません。そう考えると、まだまだ気は抜けないと思います。
飯田)スペイン風邪というと、第一次世界大戦の塹壕で流行って、戦争の終結を早めたのではないかとも言われていますが、ペストもそれによって世界が変わるようなことがあったのですか?
宮家)14世紀のときはモンゴル帝国が潰れ、エジプトのマムルーク朝が潰れ、欧州の農奴がバタバタと亡くなったので、荘園制が崩壊して行きました。
飯田)中世の封建制度が。
新型コロナを機会にして新たな“デジタル経済”へ移行する可能性が
宮家)日本も含めてですけれども、もしパンデミックが1年以上続くとなると、ペストほどではないにしても、世界経済に何らかのインパクトはある。例えば人と人とのコンタクトなしでものが動くような、いい意味でのデジタル化が急速に広まって、地上の経済とは違う世界がますます大きくなる可能性があると思います。
飯田)いままではリアルな世界でのグローバル化、人やものの行き来が楽になったということがありましたが、そうではない新しい経済ということで、政治体制も変わるのでしょうか?
宮家)要するにデジタル経済ですね。もう1つ大事なことは、デジタル経済のなかでのアメリカと中国の覇権争いです。世界がデジタル経済化するということは、デジタルブロック経済化するということです。中国の必ずしもオープンではないけれど効率がいいインターネットシステムと、アメリカのように効率は悪いかも知れないけれども、みんなに開かれているインターネットシステムと、どちらがいいのかということになるのではないでしょうか。1930年代には経済ブロックができて戦争が起きてしまったけれども、これとは違う形で新しい動きがこれから出て来る可能性もあります。
飯田)こういうことが機会となって、いろいろなものが動いて行く。
宮家)可能性は充分あると思います。
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