失踪した愛犬を不眠不休で何日も探し続けた飼い主の決意と悲願(前編)

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【ペットと一緒に vol.192】by 臼井京音

失踪した愛犬を不眠不休で何日も探し続けた飼い主の決意と悲願(前編)

ニッポン放送「ペットと一緒に」

新しく迎えた保護犬との絆が深まって行くのを実感していた、新井康之さん。「腕枕で愛犬が寝てくれる夢も、そろそろ叶いそうだな」と思っていた矢先、散歩中に愛犬の大福くんを逸走させてしまいました。

今回は、不眠不休で愛犬を探し始めた新井さんのストーリーをお届けします。

 

油断が招いた愛犬の失踪

新井康之さんが推定4歳の保護犬の大福くんを家族に迎え入れて、約1ヵ月半。お互いの絆も深まり、ロングリードをつけてハイキングをしていても、大福くんは新井さんから離れずあとを追って歩くまでになったそうです。

失踪した愛犬を不眠不休で何日も探し続けた飼い主の決意と悲願(前編)

新井さんとハイキングを楽しむ大福くん

そんなある日、思いもかけないことが起こりました。

「桜が見頃になった3月22日、犬の散歩中にたまたま会った“犬友”夫婦と、桜の木の下で犬談義に花を咲かせました。近くのコンビニで買ったストロング系の缶チューハイを短時間で飲み過ぎたせいか、犬友に別れを告げた私は千鳥足になっているのに気づきました。犬用カートに大福を乗せて家路へ向かっていたところ、車止めにカートの前輪が引っかかって横転。驚いた大福は、そのまま逸走してしまったんです」

失踪した愛犬を不眠不休で何日も探し続けた飼い主の決意と悲願(前編)

失踪当日、同居犬のツヨポンと大福くんと友達ワンちゃんと

新井さんは慌てて大福くんを走って追いかけましたが、足元がおぼつかず、2回ほど転倒して大福くんを見失ったと言います。

「もう、自分のもとから離れないだろうと安心して、カートの飛び出し防止用の留め具に大福をつないでいなかったんです。油断していたこと、そして犬連れだったのに酔うほど飲んでしまったことを心から悔いました」

19時ごろから、新井さんはひとり、大福くんを探しまわりました。

「23時ごろ、携帯電話を落としたと気づきました。そこで大福の失踪現場に戻ると、カートの近くで携帯を発見。着信履歴を確認したところ、20時半~21時までの間に固定電話から複数回の着信があり、調べてみるとそれは近所のドラッグストアの電話番号でした」

新井さんは大福くんの首輪に、自身の電話番号を記した迷子札を装着していました。それが功を奏し、大福くんを保護したドラッグストアの店員が連絡をしてくれたのです。

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桜の木の下で、新井さんと大福くん。迷子札が保護につながりました(※一部画像を加工)

迎えに行ったものの再び行方不明に

23日朝、新井さんはドラッグストアへ向かいました。すると店員から、別の店員宅に大福くんがいると教えてもらったそうです。

「夜間に大福を店舗に残すわけにはいかず、ドラッグストアから車で30分ほどの川越市に住む店員さんが、大福を一時的に預かってくれたとのこと」

新井さんが、ほっと胸を撫でおろしたのも束の間。「ところが、店員さんが自宅2階の窓を開けた瞬間に、大福はベランダから飛び下りて姿を消してしまったらしいんです」

新井さんは真っ青になり、原付バイクで川越市に急行しました。

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大福くんとの思い出のワンシーン

11時ごろ、失踪現場の近くに到着した新井さんは、川越の警察と保健所に連絡して大福くんが迷子の旨を伝えました。

「それから、大福を預かってくれた店員さんに電話で詳細を確認すると、迷子札がついた大福の首輪もハーネスも自宅で取ってしまったようです。大福は、ケガはしていないだろうとのこと。でも、もう迷子札には頼れないとわかりました」

新井さんは、急いで大福くんが走って向かったと思われる緑地へ。到着すると、緑地の広さに唖然として立ち尽くしてしまったそうです。

「近所の方々に聞くと、その辺りには田畑を荒らす野生動物を駆除するための仕掛けがあったり、野生動物と争って命を落とす小さな動物も多いとか。もう、生きた心地がしませんでした。でも、諦めるわけにはいかない。絶対に大福を見つけ出すと心に決めました」

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緑地の広さに新井さんは言葉を失いました

捜索ポスターとチラシを準備

新型コロナウイルス感染症を予防するため、新井さんの勤務先である私立高校も休校になっていたので、新井さんは大福くんを探す時間が確保できたと言います。

新井さんは一旦、川越市を離れると職場へ向かい、パソコンを開いて“迷い犬捜索”のためのチラシとポスターを作成しました。

15時過ぎ、新井さんはまず緑地内のドッグランにポスターを掲示するとともに、利用者の飼い主さんたちにチラシを配布しました。さらに、近くの野菜直売所、乗馬クラブ、ラーメン店、動物病院などにポスターの設置を依頼。その後、大福くんの姿を新井さんは探し続けました。

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ラミネート加工したポスターを設置

「夜遅く自宅に戻りましたが、まったく眠れず、再び緑地に向かいました。朝の2時から懐中電灯を片手に捜索しましたが、大福の気配はありません。日が昇ってからは、チラシのポスティングをしながら住宅街や駐車場を探して歩きました」

食欲もわかず、ほとんど眠らないまま、気づけば大福くんが失踪して3日が過ぎていたと新井さんは言います。

「1件の目撃情報すらない。もう、大福は生存していないのでは? という不安な気持ちと戦っていました」

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「大福を早く、またこの手で抱っこしてあげたい」

26日の午後、新井さんは当初23日に予定していた、大福くんの畜犬登録とマイクロチップのデータ変更手続きを行ったそうです。

「もしこのまま大福に二度と会えなくても、大福が僕のコだという証を残したい。そう、思ったからです」

真新しい鑑札を、新井さんは大福くん捜索時のお守り代わりに持ち歩くことにしたとか。

「捜索中、頭のなかで何度も湧き上がって来た妄想があります。それは、きっと僕と大福は1万年前にも友達同士で、当時の別れの際に『いつかまた会おう』と再会を約束していたというもの。1万年ぶりの再会を“無”にしないためにも、絶対に諦めないで頑張ろう。そう、誓いました」

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ウェスティーのツヨポンもきっと大福くんの帰りを待っているでしょう

すると、26日の夕方に立て続けに2件の目撃情報が寄せられたと言います。

(後編に続く)

連載情報

ペットと一緒に

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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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