初の猫の飼育に踏み切ったワケ~個性の違いにびっくり&笑顔も倍増~
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【ペットと一緒に vol.191】by 臼井京音
初めて迎えた愛猫が2歳になり、迷った末にもう1匹の保護猫を家族に迎え入れたという美香さん。その動機や、予想外だった多頭飼育の体験談を紹介します。
甘えっ子の先住猫が決意させた2匹目
もともとは犬派だった美香さんが、初めて猫と暮らし始めてから2年が過ぎたころ、もう1匹の保護猫を迎えることを考え始めたと言います。
「同居する父と、あまりにあずきを大切にしすぎたせいかな? 愛猫のあずきは1日じゅう私たちに付いて来て、留守番をさせるとき、すごく寂しそうな表情を見せるんです。その顔を見ると切なくなってしまって……」とのこと。
そこで美香さんは、あずきちゃんの妹のような存在になってくれる猫の“きなこちゃん”を探し始めました。「そう、名前は最初から決めていたんです」と、美香さんは笑います。
とはいえ、多頭飼育の経験がなく、家族や猫たちみんなの生活の質をきちんと保てるかなど悩み迷ったそうですが、3頭の犬と暮らす同僚のアドバイスなど後押しもあり、次第に不安な気持ちは軽減して行ったそうです。
おとなしい先住猫が初めて“シャーッ”と威嚇
新たな縁を気長に待っていたある日、美香さんの心を躍らせるような子猫の情報が入ったとか。
「保護された場所が自宅から近く、きな粉色であずきに負けないくらいの長いしっぽの持ち主だったので、運命を感じてしまいましたね(笑)。さっそくお見合いに行ったら、あまりのかわいさに父も私もメロメロになりました」
生後3ヵ月で美香さん宅にやって来たきなこちゃんは、到着すると同時に、あずきちゃんのもとへ近づいて行ったとか。
「ところが、あずきは毛を逆立てて初めて『シャーッ』と……。あんな怖い顔をしたあずきを見たことがなかったので、私は一気に悲しい気持ちになりました」と、美香さんは振り返ります。
あずきちゃんは特に友達を必要としておらず、家族の愛情を独り占めしたかったのかもしれないと、美香さんは落ち込んだそうです。さらに、きなこちゃんとの同居開始と同時に、あずきちゃんは食欲をなくし、とっておきのおやつを食べても吐くようになったとか。
「この先、どうなってしまうんだろう……と悩んだ私は、あずきとのご縁もつなげてくれたベテランの子猫ミルクボランティアさんなどに相談をしました。アドバイスどおりにして、2匹の様子を祈るような気持ちで見守りました」
ついに2匹の距離が縮まった
2019年10月、きなこちゃんの到着から4日後、あずきちゃんはついに「シャーッ」と鳴かなくなったそうです。
「そこからは、2匹の距離がぐんぐんと縮まって行きました。子猫のきなこは、あずきのマネばかりするんです。あずきが遊んでいるおもちゃに手を出し、あずきが入った場所に入って行き、あずきのそばに座り……。あとばかり追いかけていて、それを見ていると微笑ましい気持ちになりますね」
美香さんは、初めての猫の多頭飼育で、あずきちゃんときなこちゃんの性格の違いにも驚いているようです。
「きなこは、とにかく食いしん坊。あずきはしないのに、きなこは何と、私の動作を見て覚えたのか、トースターのフタを人間のような仕草で開けたことも。油断がなりません」
実際に、きなこちゃんはおやつが入ったパウチの一部を一瞬にして飲み込んでしまい、動物病院に2日間入院した経験もあるそうです。
「小さなかけらだったのですが、誤飲をした翌日に食いしん坊きなこの食欲がなくなったんです。嘔吐もしてしまったので、慌てて動物病院に連れて行きました」
異物は便中に排出され、事なきを得たとのこと。
おしゃべりで存在感たっぷり
きなこちゃんはとてもおしゃべりな猫だとも、美香さんは言います。
「階段を上るときも『ニャオニャオニャオ』と言い続けていますし、動くたびにいちいち『ウォゥ~ン』などと声を出しています。存在感たっぷりですよ(笑)。あずきは私と一緒に、きなこは父と一緒に寝るようになりました。父が『寝るよ』ときなこに声をかけると『ニャウ』と言いながらついて来ます」
美香さんにとって、あずきちゃんはクールな美猫、きなこちゃんはミミズクのような目でおもしろい顔をする三枚目猫だとか。
「父は、2匹が遊んでいる姿を眺めながら『うん。やっぱりきなこが来てよかったな』と言っています。私も、心の底からそう思います」
美香さんは街で野良猫や地域猫に出会うと、あずきちゃんやきなこちゃんの姿と重なって見え「事故にあったりしないで長生きしてね」と、願ってしまうとも語ります。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。