新型コロナの影響でふさぐ心を癒してくれる、ペットの力
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【ペットと一緒に vol.189】by 臼井京音
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ニッポン放送「ペットと一緒に」
新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況下で、心ふさぐ日々が続いている方も少なくないかと思います。そんななか、筆者は愛犬に励まされ、愛犬に癒されています。今回はペットの持つ人を癒す力や、犬の散歩の効能について考えてみたいと思います。
仕事がキャンセル、休校で子供もいて……
筆者も新型コロナウイルスの影響で、仕事が減りました。主に犬に関することを執筆していますが、取材予定のイベントやセミナーが続々と中止されています。
20年以上携わっている愛犬家向け雑誌の仕事に関しては、犬種別のオフ会やドッグショーが中止になり、ライター同様フリーカメラマンも多数の仕事がキャンセルになりました。納めた仕事に対してしか報酬が発生しないフリーランスは、発注が取り消されたり減ったりすると、家計状況が大打撃を受けます。
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「何だか暗い顔……。大丈夫?」
筆者宅には小学生の児童がいるため、その点でも困っています。午前中は筆者も執筆仕事をやめて、子供の自宅学習をサポートする日々を続けています。
午後からは仕事をしますが、「ねぇママ、暇なんだけど……」「ねぇママ、おやつ食べていい?」「ねぇママ、公園で友達と遊びたいな」「ねぇママ、Youtube見てたらタブレットの電源切れたんだけど、充電コードどこ?」と、30分置きくらいに子供から声を掛けられるので、仕事が全くはかどりません。
気付けば、3月に入ってから筆者は溜息ばかりついています。そんな生活のなかで、大きな癒しになっているのは愛犬の存在です。
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「ねぇ、遊ぼうよ」by筆者の愛犬ミィミィ(ノーリッチ・テリア)
犬と触れ合ったり散歩するだけで癒される
筆者に近づいて来る子供にイライラしながら「もぉ! 仕事に集中できないでしょ」と怒鳴ると、足元で寝ていた愛犬は短い肢を筆者の膝にかけて来ます。目で「ケンカしないで」と訴えているかのよう。
それを見ると「あ、キレちゃってごめんね」と、筆者は子供にも愛犬にも謝らずにはいられません。そのまま膝にピョンと上って来た愛犬を撫でていると、気持ちがスーッと落ち着くのを感じます。
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足元で眠る犬の寝息を聞くだけでほっと和みます
犬を撫でると、血圧が低くなって安定することや、幸せホルモンとの異名を持つオキシトシンの分泌が促されること、ストレスに関連するホルモンであるコルチゾールのレベルが低下することなどが、各国の研究から判明しています。
飼い主と愛犬が見つめ合うだけで、双方にオキシトシンが分泌されたという研究結果(麻布大学回答)もあります。筆者の過去記事でも紹介したように、ドッグセラピーによって、うつ症状などが改善されたケースも少なくありません。
これらの事例からも実感できるとおり、愛犬との交流は、筆者の心を癒してくれます。
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仕事中に視線を感じて振り向くと……
犬たちには当然、新型コロナウイルスのことはわかりません。いつもどおり、フードボウルと散歩のリードを見ると尻尾をちぎれんばかりに振り、2頭は笑顔満開になります。
犬の散歩に出れば、「タンポポだ。春だね~」「あ、見て! 桜が一輪だけ咲いているよ」と、子供との会話が弾み、自然と笑みもこぼれます。筆者が新型コロナウイルスのことを忘れ、心緩み明るい気分になれるのは、1日1回~2回の犬の散歩のおかげと言えるでしょう。
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「え、お散歩? わ~い!」
アメリカとフランスの状況は
犬の散歩に出ることは、飼い主の心身の健康促進にも役立つのは間違いありません。歩くこと、景色を眺めること、愛犬のうれしそうな様子を見つめること……。それらをとおして“いま、ここ”に意識を向ける“マインドフルネス”の状態になると言っても過言ではないでしょう。
マインドフルネスは、ストレスへの心理的な対処法として欧米では近年、医療現場や職場などでも積極的に取り入れられています。散歩中に太陽の光を浴びると、ビタミンDの生成に役立ち、免疫力もアップします。
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「日光浴は大切よだね~」
何より散歩は、犬たちの心と体を健康に保つために欠かせないものです。筆者は、3月18日現在、ニューヨークやフランスでは犬の散歩事情がどのようになっているかを、友人に聞いてみました。
「ニューヨークでは、犬の散歩にはみんな行っていますね。近所のドッグケア施設から、ニューヨーク名物の光景とも言えるドッグウォークサービス(複数の犬を一度に預かっての散歩代行サービス)やデイケア(犬の預かり)も、地下鉄が止まらない限りは継続するという連絡メールを受け取りました」と、14歳のチワワとブルックリン地区に暮らすMさん。
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3月18日、愛犬と街を歩くニューヨーカー(Mさん撮影)
「犬をこよなく愛する国として知られるフランスなので、散歩での外出はOK。ただし、犬の散歩も1人で行わなければならないという情報もあります。でも私が暮らすボルドーでは、いまのところそのようなことはありません。ちなみに屋外であっても、サッカーなどは複数人が集まるので禁止。犬の散歩に関しては、いつもの光景が見られます」と、20年間ボルドー郊外に暮らす、筆者の日本人の友人は教えてくれました。
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フランスの日常的な光景 ©Kyone Usui
普段どおりの明るさとやさしさで、私たちの心を励まし癒してくれる犬たち。筆者も10年以上ともに暮らして来た2頭の愛犬に、あらためて感謝せずにはいられません。このかげがえのない存在を守るためにも、新型コロナウイルス感染症の予防策を万全に行っていきたいと思っています。
連載情報
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ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。