14歳の老犬が誤飲で救急外来へ~忘れたころに投げかけられる気付き~

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【ペットと一緒に vol.184】by 臼井京音

14歳の老犬が誤飲で救急外来へ~忘れたころに投げかけられる気付き~

ニッポン放送「ペットと一緒に」

これまで何度か筆者の愛犬の誤食エピソードを紹介していますが、15歳を目前に、再び異物誤飲をしてしまいました。今回は、ハラハラしつつ夜中に動物病院に急いだ、つい先日のできごとをお伝えします。

 

おもちゃの剣を食べた!?

筆者の愛犬のノーリッチ・テリアのリンリンは、桜の咲くころに15歳を迎えます。14歳を過ぎてからはすっかり活動量も減り、寝ている時間が長くなりました。

これまで、リンリンは幾度となく異物誤飲をして、複数回の開腹手術をしています。そのたびに猛省して、筆者の目が届かない入浴中などはクレートに入ってもらっていたのですが、つい先日、またもや子供のおもちゃを誤飲してしまいました。

14歳の老犬が誤飲で救急外来へ~忘れたころに投げかけられる気付き~

節分の翌日、早朝の散歩で豆を食べるリンリン。年に1度、数粒だけは愛犬の戦利品として豆を食べるのを許しています

その日も、夜になりお風呂に入る前にリンリンを見たところ、ドッグベッドですやすやと眠っていました。もう半年以上、夜は早くに寝て朝までほとんど起きません。

「かわいい寝顔だなぁ~」と思いながら、安心して入浴。数十分後リビングに戻ると……。

「!」

絶句しました。“黒ひげ危機一髪”などの商品名で知られるおもちゃの、樽と剣が床に散乱しているのです。そもそも、ソファの上に置いてあった娘のリュックサックのなかに入っていたはずのおもちゃです。しかも、リュックの開閉口はチャックでしっかり閉じていました。

リュックを床に下ろし、リンリンはどうやったのかわかりませんが、器用におもちゃを取り出したようです。

14歳の老犬が誤飲で救急外来へ~忘れたころに投げかけられる気付き~

このベッドでスヤスヤ眠ってくれていると思っていたのに……

悩んだ末に

おもちゃは、100円ショップで購入したもので、一般的なものよりも小さいサイズです。剣の長さは、約3cm。剣の先端も丸くなっていて、胃壁などを傷つけることはないでしょう。

「落ち着け、私」と言いながら、筆者はリンリンが剣を何本飲んだのかを調べ始めました。樽に剣を刺して行くと、7本足りません。

筆者は、悩みました。1本だけであれば、通常はうんちで問題なく出て来るサイズです。けれども、7本となると、塊のようになって腸を塞いでしまう可能性があるのではないかと思いました。

リンリンは以前の異物誤飲で腸閉塞になって手術をしたため、腸の一部が狭くなっているので、小さな異物でも再び腸閉塞を起こすリスクが高いのです。

「よし、まだ誤飲してから1時間は経っていないはず。60~80分以内ならば、異物が胃に留まっている確率も高いから、何とか吐かせられるかも!」…そう思い、タクシーを呼びました。

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リンリンが誤飲してしまったのは、写真下部の剣

ドキドキしながら待合室で祈る

ノーメイク、しかも夕食時に飲んだビールがまだ残っていて少々赤ら顔のまま、筆者はマスクをしてキャリーバッグにリンリンを入れると、タクシーで動物病院へ急行しました。

かかりつけの動物病院は、24時間体勢で急患を受け入れています。事前の電話でも、「小さな剣ですが、7本ですか。それは心配なので、すぐいらしてください」と夜勤の獣医師に言われたので、「リンリン、また気持ち悪くなっちゃうけど、ごめんね。吐いてよ。手術はもうできないんだからね」と、タクシー内でキャリーバッグを撫で続けていました。

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このキャリーバッグで病院へ(※写真は1年前)

動物病院に到着すると、リンリンはすぐに診察室へ。「もうひとりの、ミィミィちゃんが誤飲した可能性はないんですか?」と、獣医師。筆者は「いえ、ないです。7本全部、リンリンのはずです。ミィミィは昨日11歳になりましたが、1度も誤飲をしたことがありません」と、明言。

「ほぉ、なるほど。では、催吐剤を注射しますので、しばらく待合室でお待ちください」とのこと。

お願いだから、全部ちゃんと吐いて! と、筆者は待合室で手を合わせながら祈り続けました。10分くらい経ったころでしょうか。獣医師がトイレシーツに吐しゃ物をくるみ、待合室に出て来ました。

「これを吐きました。おっしゃったとおり、剣が7本ですね」

14歳の老犬が誤飲で救急外来へ~忘れたころに投げかけられる気付き~

大きなドッグベッドに入らず顎枕にする、おちゃめなリンリン

筆者は獣医看護師さんに連れられて来たリンリンを抱きしめながら、ほっと胸を撫でおろしました。事なきを得たので、「まだまだ好奇心もイタズラ意欲もあるから、きっと長生きしてくれるはず」とも思いました。

けれども、異物誤飲からリンリンの命を守れるのは、飼い主だけ。油断は大敵です。念には念を入れて、リンリンの生活管理をしっかり行わなければならないと、改めて気づかされました。

14歳の老犬が誤飲で救急外来へ~忘れたころに投げかけられる気付き~

「あ、おかえり。リンリンとお出かけしてたの?」byミィミィ

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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