老犬なのにイタズラ好き!? 笑顔と驚きと感謝の老犬との毎日
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【ペットと一緒に vol.181】by 臼井京音
人間の4~6倍の速さで老いて行く愛犬を目の前に、飼い主にも心境の変化が訪れることを筆者は実感しています。今回は、春に15歳を迎える筆者の愛犬の近況をお届けします。
愛犬が平均寿命を超えてくれた
筆者の愛犬リンリンが、日本の家庭犬の平均寿命と言われている14歳を超えました。桜の咲くころには15歳を迎えてくれるはずです。
リンリンの交配相手であるノーリッチ・テリア専門ブリーダーのところには、17歳の天寿をまっとうした犬もいるので、リンリンも同じ位まで長生きしてもらいたいものです。
筆者は最初の愛犬のヨークシャー・テリアを、12歳で心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)で亡くしました。四半世紀前の当時と比較すると犬の寿命が飛躍的に延びたとはいえ、15歳という数字が目の前に迫って来ると、ただただ感謝の気持ちでいっぱいになります。
「14歳には見えない! かわいい~」と散歩中に出会った人から言われると、飼い主である筆者がドヤ顔になってしまいます。
そんなリンリンですが、実際のところはこの2~3ヵ月で急に老化が進行した気がしています。
忘れたころにやって来た
数年前の引っ越しを機に、筆者はローソファに買い替え、ベッドをやめて畳の部屋で愛犬たちと寝るようになりました。シニアドッグである愛犬たちの足腰に負担の少ない生活を送らせてあげるためです。
リンリンは以前からソファ上のクッションを枕にしたり、クッションに乗っかったりして眠るのが好きでした。ところが、昨年(2019年)末あたりから、ジャンプをしてもクッションに上れなくなってしまったのです。
小動物を狩るために作出されたテリア種なので、おもちゃ遊びも大好きでしたが、最近は新しいおもちゃで誘ってもまったく興味を示しません。「う~ん、一気に老けちゃったかな?」と、家族と話していた矢先……。
帰宅した筆者がリビングの明かりをつけて目にしたのは、リンリンがトートバッグの持ち手に体を突っ込んで眠っている姿でした。「えっ!?」と声を上げると、リンリンは頭を上げてペロッと舌を出しました。
実はリンリンはこれまでに複数回、誤飲による開腹手術を受けています。娘犬のミィミィと同じように育てたのですが、バッグに顔をうずめたりすることのないミィミィとは違い、リンリンは目を離すとすぐに誤飲をしてしまうのです。
対策として、ロング散歩、ボール遊び、噛み続けられるおもちゃを与える、知育玩具にフードを仕込むなど、あらゆる方法を試しました。それでも、ふと気づくと、噛んでは困るアイテムをリンリンが口にしていることもしばしば。
そんなリンリンも後肢だけで立ち上がれなくなったので、ここ数ヵ月、筆者は油断していました。リンリンの手(口)が届かないようにと置いておいた、ダイニングチェアの上のトートバッグを下ろして漁ったようです。
筆者は万が一を想定して、犬が食べると中毒を起こすキシリトールを含んだガムではなく、クロロフィルのガムなどを買うようにして、それをバッグ内ではポーチに入れて保管しています。また、リンリンが誤飲すると危ない充電コード類などは、チャックのある分厚い袋に入れて保管する習慣もついています。
そのおかげか、今回は久々にバッグの中身を漁ってもリンリンには戦利品はなかったようで、誤飲をした形跡はありませんでした。
老犬なりの愛らしさを感じて
リンリンは耳もほとんど聞こえなくなって来ているようで、玄関ドアのカギが開いた音にも、飼い主の帰宅にも気づかなくなりました。
また、思うように体を動かせないのかもしれません。それで、バッグの持ち手に入ったまま諦めて眠ってしまったのでしょう。
10歳のころにリンリンは後肢の靱帯部分断裂をして、手術をしました。ところが、手術で使用した糸にアレルギー反応が出て、再手術をして糸を取り出しました。
そのため、最近は関節炎にもなってしまい、散歩に出ると後肢を軽くしか地面に着きません。その様子を目にした人から「ぴょこぴょこと跳ねるように歩いていて、かわいい」と、声を掛けられることもあります。
後肢の痛みがあるのか、心肺機能が衰えたのか、リンリンは走ることも少なくなって来ました。それでも、たまに少しだけ走り出すことがあり、その姿を見ると「うわ~! 走るの? がんばれ、ばんがれ!」と声援を送っている自分に気づきます。
老犬は老犬なりの愛おしさにあふれていると、筆者は日々実感しています。15歳を目前にした愛犬と新年を迎えられて笑顔でいられることに、喜びを噛みしめています。
これから先、リンリンの関節炎が悪化して車椅子が必要になっても、どんな病気をしたり介護が必要になったりしても、あたたかく笑顔で見守って行きたいと思わずにはいられません。
連載情報
ペットと一緒に
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。