浅田美代子さんが救いたい“いのち”~殺処分問題の解決に向けて私たちにできること~

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【ペットと一緒に vol.176】by 臼井京音

ニッポン放送「ペットと一緒に」

2019年12月1日、同年に新しくオープンしたANIMAMALLかわさき(川崎市動物愛護センター)で、かわさき犬猫愛護ボランティアの主催で開催された、“Freepets 大人の『いのちの教室』~ペットとずっと笑顔で暮らすために~”に筆者は参加しました。

女優の浅田美代子さんの講演や、獣医師の西山ゆう子さんと浅田さんのトークショーの内容を、今回はリポートします。

 

幸せなペットがいる一方で……

浅田美代子さんは、これまで犬や猫の保護活動に数多く携わって来ました。浅田さんによってスライドとともに紹介されたのは、営利だけの目的で繁殖させるため、劣悪な環境下で飼育されている犬たちの姿でした。

「立ち上がることすらできない狭いケージのなかで、子犬を産めるだけ産まされ、必要最低限のケアさえ受けられず、一生を終えて行く犬たちもめずらしくありません。パピーミル(子犬工場)と呼ばれる繁殖現場で不要になった犬が出ると、繁殖業者がそのまま処分してしまうケースも少なくないでしょう。これらは、政府や自治体が発表している“殺処分数”にはカウントされていません」(浅田さん)

不衛生な狭い環境で、散歩に出ることもない生活(写真:浅田美代子さん提供)

狭いケージに閉じ込められ続けたため、背骨が曲がってしまったゴールデン・レトリーバー。毛玉で全身が覆われ、性別すら判別不可能な長毛種。

飼育者が糞尿の処理をしやすいように、金網の上で過ごさせられ、網に挟まり足を骨折した犬。出産回数が多すぎて歯がボロボロになってしまったメス犬。

数え上げればきりがないほど、想像を絶するひどい環境に置かれている犬たちの姿を、浅田さんは目の当たりにして来たと言います。

写真中央下段のバーニーズ・マウンテン・ドッグ(黒×茶×白色の犬)には、ケージの高さが足りていない。犬たちは病気を発見してもらえることも、治療を受けさせてもらうこともできない(写真:浅田美代子さん提供)

「なかでも印象に残ってるのは、2019年8月の訪問先です。便と抜け毛が混じって固まり、じゅうたんのようになって犬たちの過ごす場所を覆っていました。高さ5cmを超えるその塊のなかには、生まれて間もないと思われるネズミまで動き回っていたんです」と語る浅田さんは、そこから犬たちを救い出そうと、所有者に譲渡を掛け合いました。

けれども“所有権”の問題で、すべての犬を連れ帰ることはできなかったそうです。

便と抜け毛でできたじゅうたんの上で過ごすペキニーズ(写真:浅田美代子さん提供)

アメリカでは、虐待された動物を救い出せる

浅田さんの講演に続いて行われたトークショーで、米国と日本の獣医師であり、シェルター・メディシンと獣医法医学を専門とする西山ゆう子獣医師は、前述の所有権問題に関して次のように指摘していました。

「犬や猫などを多頭飼育している個人や業者は、アメリカやイギリスでは定期的に、動物の飼育環境や管理状況、個体の状態をチェックされています。実際に飼育現場に赴くのは、アメリカではアニマル・コントロール・オフィサー、イギリスではアニマル・インスペクターと呼ばれている専門の人たちで、行政や愛護団体に所属しています。

アニマル・コントロール・オフィサーの場合、決して簡単ではない試験を受けて、資格を取得していなければなりません。職員の制服を着て訪問した先で、法律違反、基準以下の管理をしている場合、飼養者に改善指導をします。最初は改善指導、次に勧告となり、それでも改善しなければ、動物の所有権はく奪となり、犬を保護し、連れ去ることができます。

たとえばロサンゼルス市では、保護した犬は行政に所有権が移動し、必要に応じて医療処置を行い、最終的に譲渡対象となります。日本のように、所有権の問題で動物を救えないということはありませんね」

それを聞いた浅田さんは、日本の現状を変えなければならないと語っていました。

西山獣医師(左)と浅田美代子さんのトークショーの様子

出産や飼育環境の数値化が重要

浅田さんは、犬や猫の保護に関して、日本の行政は民間の愛護団体任せになりがちなのではないかと指摘しています。

「行政が動物たちを引き受けるべきです。過剰飼育や、虐待から保護した動物を受け入れる場所を確保するためにも」と、西山獣医師。それに対して「寄附の文化が欧米のように根付いていない日本では、どの愛護団体も運営資金が不足していて大変なんですよ」とも、浅田さんは述べていました。

2019年にオープンした川崎市動物愛護センター「ANIMAMALLかわさき」は、親しみやすく明るい雰囲気

西山獣医師からは、2019年より、米カリフォルニア州で、ペットショップでは繁殖業者から犬や猫を仕入れて販売することができなくなり、行政や愛護団体の保護動物のみ販売できるとする法律が施行されたことも紹介されました。

日本でも、営利だけの目的で誕生させられた犬が、ペットショップで販売されることがなくなるのが理想だと、筆者は思います。そのためには、動物愛護に関わる法規制が重要になります。

「ロサンゼルスでは、犬が出産できる年齢は1歳以上~6歳までで、原則1年間に1回のみ。犬の繁殖にも販売にも許可証が必要です」と、西山獣医師は語ります。ヨーロッパの動物愛護の先進国でも、同様に繁殖や販売に関する法規制があります。

ANIMAMALLかわさきの保護猫スペース。欧米のアニマルシェルターと同じような環境で、猫たちも日光浴をしながら気ままに過ごしています

浅田さんは、次のように強調します。

「今回の動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)の改正では、環境省などが決めた数値規制が省令などで通達されることになりました。いまは、ペット業界に対するヒアリングが行われているようですが、動物保護の現場で活動している人々から意見を聞くことが重要だと感じます。

繁殖に関してはもちろんのこと、ケージの数値なども明確にしたほうがいいですね。現在は、犬や猫が入れられるケージについて、高さは体高の1.3倍、幅は体高の1.1倍という案が上がっています。けれども、これでは犬が横になることもできません。もしかすると、繁殖や多頭飼育の現場などで、現状よりひどい状況に陥る可能性すらあります。

数値規制が定まっていないと、法のもとで飼育者を取り締まれませんが、その数値が動物にとって真にやさしいものでなければ意味がありません。

動物愛護法は、議員立法によって改正が行われます。私たちが動物たちのためにできるのは、環境省などが呼びかけるパブリックコメントに書き込んだり、理想的な改正がなされるように働きかける署名活動に参加したりすること。選挙でどの候補者を選ぶかも大切になって来ます。

小さい力でも、数が集まれば大きな力になると信じて、皆さんも是非アクションを起こしてくださいね」

ANIMAMALLかわさきには手術室も完備

殺処分問題の解決は子供たちの教育から

西山獣医師も浅田さんも、法律と同時に、モラルの向上も重要だと口をそろえます。

「法は、最低でもこれだけはしてはいけないという最低基準を決め、それ以下のことを犯罪とし、取り締まるというものです。法の厳罰化だけでは、動物福祉は発展しません。社会全体のモラルを上げ、特に子供たちを、動物に対するやさしい心を持った大人に育てて行くのが大切ではないでしょうか」(西山獣医師)

ANIMAMALLかわさきにある適正飼養についての展示。訪れた子供たちも目を留めています

浅田さんは、子供たちがペットの命に責任を持てるようになるよう、そして他者への思いやりや共感力が育めるよう、「いのちの教室」(一般社団法人フリーペッツ主催)を、メンバーの一員として全国の小学校で展開しています。

これから先の日本社会で、1頭でも多くのペットが幸せに暮らせますように。すべての命にやさしい社会に、なりますように。

参考:本イベントを主催した「かわさき犬・猫愛護ボランティア」は、川崎市の条例で組織された川崎市の公認ボランティアです。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。


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