売れ残り犬が一変させた家族の生活~CM出演やドッグモデル活動も~
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【ペットと一緒に vol.179】by 臼井京音
思いもかけず、初心者にはむずかしいことで名高いテリア犬種が初めて飼う犬になった、川下さん夫妻。犬連れアウトドア、モデル活動など、犬のおかげで世界も楽しみも広がったと語る、ある夫婦のドッグライフを紹介します。
売れ残りの“大変そうな犬”を迎えたところ…
転勤先の仙台で犬を迎えることにした川下さん夫妻は、11年ほど前、ペットショップで気になる犬に出会ったそうです。
「小型犬を探して何度かペットショップに足を運んでいたのですが、私たちと絶対に目が合わない犬がいたんです」と、妻のなおこさんは当時を振り返ります。1ヵ月以上、川下さん夫妻が行くたびにその犬は売れ残っていたと言います。
「相変わらず目が合わないままでしたが、ついに夫がその犬を抱っこしてみたんです。すると、いままでのどの子犬よりもしっくりと来る感覚を、夫は覚えたとか」
その犬は、ジャック・ラッセル・テリア。初心者向きではない、やんちゃすぎる犬種として名を馳せていたことを、川下さん夫妻も数週間前に知ったそうですが……。
「その子と暮らしてみたくなり、ジャック・ラッセル・テリアについて書籍やインターネットで散々調べました」
こうして、犬の幼稚園と呼ばれるような“子犬の社会化”に力を入れる施設に通わせたり、しっかりとトレーニングすることを決意して、川下さん夫妻はようやく目が合うようになったその犬を迎えました。
いい子すぎて拍子抜け!?
生後4ヵ月で川下さん夫妻のもとにやって来た、ジュリちゃん。川下さんは通園スタイルのしつけ教室である“犬の保育園”に、さっそく通わせ始めたと言います。
「そこで、他のワンちゃんたちと上手に加減をしながら遊べるようになりましたね。半年ほど通い、基本的な訓練も受けました。ところが、保育園で心身ともに満足しているからか、ジュリは自宅ではイタズラをしません。かなりの覚悟を持ってジャックを迎えたんですが、実際はいい子すぎて、夫婦そろって拍子抜けしてしまいました(笑)」
ジュリちゃんを迎えてから、ジャック・ラッセル・テリアのオフ会に参加したりと、もともとの知り合いがいなかった転勤先の仙台でも“犬友”ができ、川下さん夫妻はアクティブな生活をするようになったと言います。
「そんなある日、ジュリを連れて訪れた室内ドッグランで、運命の出会いをしてしまったんですよ」と、なおこさん。そこは、室内ドッグランを経営しながらジャック・ラッセル・テリアの繁殖を行うブリーダーの犬舎でもあり、ちょうど子犬がいたのだとか。
「ジュリの遊び相手がいたらいいかもしれないと思っていた矢先。しかも、次に迎える犬はブリーダーからにしようとも考えていたので、ご縁を感じてそこから子犬を1頭譲っていただきました」
それが、複数頭の子犬のなかでジュリちゃんがすんなりと受け入れた、サラちゃん。
「サラとジュリは約1歳違うのですが、よくできたお姉ちゃんのマネをしてくれたおかげか、サラにも“育犬”で悩まされることはありませんでした」
愛犬CMデビュー
関東に戻って来た川下さん夫妻は、2頭の愛犬と、犬のイベントに出かけることも多くなったそうです。
「イベント会場でペットのプロダクションのオーディションのようなことを行っていて、気軽な気持ちで参加してみました。そうしたら、2頭とも合格通知をいただいて、気づけばタレント犬になっていたんですよ」と、なおこさんは語ります。
すると、あるとき、サラちゃんに損保会社のテレビコマーシャルの仕事が舞い込んだとか。
「ちゃんとできるかなぁ~と、付き添いながら緊張しました。サラに何かあったときの控えにと、ジュリもスタジオに呼ばれて。ドキドキしっぱなしでしたが、トレーナーさんやマネージャーさんの尽力もあり、撮影は無事に終了しました。数年後に、続編も撮影したんですよ。もう10歳になったサラの若かりし日の姿を、いまもときどき、『かわいいわ~』って言いながらYouTubeで眺めています(笑)」
最近も、ジュリちゃんとサラちゃんは2頭並んで雑誌の表紙にもなったそうです。
犬を中心に楽しみが広がった
川下さん夫妻は、愛犬のおかげで楽しみが倍以上に増えたと口を揃えます。
「夏には毎週のように奥多摩の清流に出かけます。それから、愛犬連れでキャンプをしにも行きます。自然のなかを一緒に散策するのはもちろん、湖でサップをしたり、海で泳いだり……。原産のイギリスでは狩猟犬として、ワイルドな環境で活躍したジャック・ラッセル・テリアを迎えて、結果的には大正解だったと言えますね」
愛犬を中心に生活がまわっているという、川下さん夫妻。これからも、あとから見ても笑顔になれるジュリちゃんやサラちゃんの写真や映像とともに、キラキラと輝くかげがえのない思い出が増えて行くことでしょう。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。