吉村知事vs西村大臣 実は吉村知事の完全勝利であるその理由

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キャスターの辛坊治郎氏が5月7日(木)、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!~激論Rock&Go!」に出演、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言での休業要請問題について独自の視点で解説した。

吉村知事vs西村大臣 実は吉村知事の完全勝利であるその理由

(左)大阪府の吉村知事=2020年5月5日午後、大阪市中央区の大阪府庁 写真提供:産経新聞社 /(右)西村経済再生相=2020年5月6日午後、内閣府 写真提供:共同通信社

吉村知事と西村大臣とのやり取り~本当に勝ったのは

飯田浩司アナウンサー)大阪府の吉村知事は5日火曜日、新型コロナウイルスの自粛を解除するための独自の基準、いわゆる「大阪モデル」を公表しました。4日月曜日に緊急事態宣言の延長が発表になって、31日までと。じゃあ解除されるのかどうなのかということで、大阪はこういう数字を見ながら達成した場合には解除を検討するのだということを、吉村知事が発表したといことです。

辛坊)「大阪モデル」という言葉が大分使われるようになってきました。今回の西村さんとのバトルはスポーツ新聞なども大きく扱っていますが、最終的には7日に吉村さんが形としては謝ったのかな。

飯田)ツイッター上で。


「西村大臣、仰るとおり、休業要請の解除は知事権限です。休業要請の解除基準を国に示して欲しいという思いも意図もありません。ただ、緊急事態宣言(基本的対処方針含む)が全ての土台なので、延長するなら出口戦略も示して頂きたかったという思いです。今後は発信を気をつけます。ご迷惑おかけしました。 」

— 吉村洋文(大阪府知事)twitter より

辛坊)ここだけ読むと、吉村府知事が矛を収めたように見えるではないですか。これは完全に吉村知事の勝利なのですよ。どういう構図になっているかというと、緊急事態宣言というものの根本の問題に関わることなのです。緊急事態宣言がどういう構図のものかというと、「新型インフルエンザ対策特別措置法」に「新型コロナウイルス」が1行加わって、今回新型コロナウイルス対策でも総理大臣は緊急事態宣言ができるようになりました。総理大臣は緊急事態を宣言するに際して時間と場所を出します。最初は7つの都府県だったのを全国に拡大していまに至るわけですよね。全国に発令された段階で、全国の都道府県知事が自分の権限で自粛要請するという構図に「建前」としてはなっています。

ところが、直前に大問題が勃発したのです。緊急事態宣言を出す直前になって「新型コロナウイルス感染症対策推進室」という名前で「基本的対処方針」という業務連絡が全国の知事に回ったのです。つまり、「今回総理大臣が緊急事態宣言を出すに当たってこれは守ってくださいね」という、国からの命令というか業務連絡というか、「基本的にはこうしなさい」という話ですよ。この文章のなかに何が書いてあるのかというと、基本的に業者へ都道府県知事の権限で自粛を要請するという建てつけに法律ではなっているのですね。ところが、内閣官房の感染症対策室長は「国に協議の上、必要に応じて専門家の意見も聞きつつやりなさい」と。つまり、知事独自ではできないのですよ。知事が独自でどこの業者を休ませようということになると、「国と協議して必要に応じて」という一文が入ってしまっていたので、東京都知事がどこの業種を休業させるかというので最後大揉めしましたよね。

飯田)理髪店をどうするか、ホームセンターをどうするか。

吉村知事vs西村大臣 実は吉村知事の完全勝利であるその理由

新型コロナウイルス対策本部会議後、囲み取材に応じる大阪府の吉村洋文知事=2020年5月5日午後、大阪市中央区の大阪府庁 写真提供:産経新聞社

知事の権限なのに「国と協議しろ」と通達していた

辛坊)知事の権限だと言っていながら、業務連絡で「国と協議しろ」という一文をつけてしまっているわけです。そうすると、地方の知事は自分のところで独自に判断しようと思っても国に協議しなければいけないのです。吉村さんが言いたかったのはまずそこで、吉村さんが何と言って食いついたかというと「どうなれば解除するのか、明確な出口戦略が必要。国が示さないので大阪モデルを決定する」ということで大阪としては新たに独自の3つの基準を提示しました。

1つは「新たに感染した人のうち、感染経路不明の人数が10人未満」これが最新データは7人くらいになっていますから、これはクリアしています。

2つ目に「PCR検査で陽性になった人の割合が7%未満」ということで、これが最新のデータで4.5%ですから、基準に達しています。

最後にいちばん重要なものが「医療崩壊をしているか、重症患者用の病床使用率が60%未満」。この重症者の病床使用率が大阪ではどうなっているかというと、33%なのです。実は7割は空いているのです。

そういうことがあっていまは解除基準の3つを満たしているわけです。この3つの基準を達成した場合には緊急事態宣言の出口戦略に向かう基準にするというのですが、「国が解除基準を出してくれないので地方自治体は困ります」ということを言ったら西村大臣が怒って「何か知事は勘違いをしているのではないか。自治体による緊急事態措置について各都道府県の裁量で休業要請やその解除をやっていただく。大阪府がその説明責任を果たすのは当然だ」と主張して反論。これがニュースになったのが7日朝までで、それに引き続いて吉村さんが「発言に気をつけます」と言った形。

これだけ見ると吉村さんが言い負かされた雰囲気になっていますが、決定的に吉村さんが勝ったというのは賢明なこの3つの基準を達成した場合には緊急事態宣言の出口戦略に向かう基準にするというのですが、飯田くんならわかりますよね。

飯田)「知事の権限で解除も何もやっていいということだな。それを大臣が明言したよな」ということですね。

辛坊)おっしゃる通りです。そういう構図ができあがったわけですよ。

吉村知事vs西村大臣 実は吉村知事の完全勝利であるその理由

大阪府知事は「勘違い」  記者会見する西村経済再生相=2020年5月6日午後、内閣府 写真提供:共同通信社

国の立場をひっくり返してしまった西村大臣

辛坊)いままでだったら知事が何かやろうと思っても「内閣官房の感染症対策推進室長が業務連絡を回しているでしょう。国に協議の上、必要に応じて専門家の意見も聞きつつやるので、知事が勝手にできるものではありません」というのが緊急事態宣言が発令したときの国の立場なのだけれど、西村さんは今回の反論によってこれを全部ひっくり返してしまいました。国の官僚はいま頭を抱えていると思いますよ。そんなことを知事に勝手にやられては困るけれど、大臣が言ってしまった、という感じですよね。

飯田)大臣が言ってしまったら官僚がひっくり返すのは難しいですね。

辛坊)小池都知事と国が4月の上旬に東京都へ緊急事態宣言を出すときは、休業要請の範囲をめぐっては都知事が折れたはずです。こういうときは最終的に国が強いのです。ところが同じことになったときに大阪の知事としては「大臣が勝手にやれと言っている」という話になります。だから、今回のやり取りは表面上に見えていることと真相は大分違うということを見ないと世の中のことがわからないという感じですね。ぶっちゃけ、大阪府知事としては緊急事態宣言はもうやめたいのだと思います。解除するなら早めに解除して、ある程度経済を正常化させてから第2波の襲来に備えた方が賢いと思います。

飯田)一方で、大阪みたいにちゃんと決断ができて政策がついてくる首長だったらいいのですが。

辛坊)解除は政治的に極めてリスクが高いので、反政府系のメディアですら今回の緊急事態宣言の延長に関しては賛成の人が多いのです。解除には政治的リスクがあるけれど、それをするのが政治家だろうという気はします。

飯田)だから、総務省上がりの首長がいる県はここへ来て悩むのでしょうね。

辛坊)その点吉村さんは、辞めたら弁護士に戻ればいいやと思っているから肝が据わりますよね。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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