検察庁法改正案~安倍政権が強くこだわった法案ではない“これまでの経緯”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。検察庁法改正案におけるこれまでの経緯について解説した。

検察庁法改正案に反対する意見書を提出後、記者会見する松尾邦弘元検事総長(左から2人目)ら=2020年5月15日 東京・霞が関の司法記者クラブ 写真提供:産経新聞社

検察庁法改正案、成立見送り

検察官の定年延長を可能とする法案について15日、立憲民主党など野党は改正案の採決を阻止するため、武田良太国家公務員制度担当大臣の不信任決議案を衆議院に提出した。

飯田)一方で18日の読売新聞の朝刊、1面トップは「検察庁法案、見送り検討」という見出しです。野党や世論の批判を押し切って採決に踏み切ると、内閣にとって大きな打撃になるため、今国会での成立を見送る案が浮上していると報じています。(※編集部注:政府、与党は18日午後、今国会成立を断念した)

検察長官会同に出席した黒川弘務東京高検検事長(右)と林真琴名古屋高検検事長=2月、法務省 写真提供:共同通信社

内閣が強くこだわっていた法案ではない~「悪者になってまで強硬に成立させる必要はない」と安倍政権が考えてもおかしくない

須田)もともとこの法案は、内閣がそれほど強くこだわっていた法案ではありません。そして、提出された段階において対決法案ではないのです。野党が全面的に反対している法案ではなく、成立に関して、よくも悪くも思っていない、ニュートラルな法案だったのです。それが政争の具になって来たのかなと思います。だからいいやと、「べつに自分たちが悪者になってまで強硬に成立させる必要はない」と安倍政権が考えたとしても、おかしくはないのです。

国家公務員法改正案について審議する衆院内閣委=2020年5月13日午前 写真提供:共同通信社

2018年に人事院が公務員の定年延長の人事院勧告~これを受け、内閣府から法務省に検察官の定年について省内で意見をまとめるように提言して国会提出が決定

須田)1つ振り返っておきたいのですが、そもそも今回の法案改正はどこからスタートしたのかというと、2018年8月10日です。人事院が人事院勧告をしました。60歳を超える職員の能力・経験を本格的に活用するために、公務員の定年引き上げが必要だとして、65歳までの引き上げの検討を開始するという勧告を安倍総理に手渡したのです。あくまでも、先ほど申し上げた能力・経験を活用というのは方便というか、建前ですよ。これは重要ですから覚えていただきたいのですが、これを受ける形で、内閣府から法務省に対して検察庁法に関する検察官の定年をどうするか、省内で意見をまとめるようにと。いずれも言われているように、定年延長を含めた人事は、人事院とは別個のところで検察庁法で定められているから、「それは自分たちで決めろよ」となったわけなのです。そういう状況のなかで、2019年12月に国家公務員法改正案を、2020年の通常国会に提出する方針が固まりました。いまになって急にやっているわけではなく、2019年の暮れからその方針は固められた。それを受けて法務省では、本格的な議論が始まって行った。そして2020年1月16日に法務省の内部で、「検察官も国家公務員法に規定される特例延長制度の適用は排除されない」という方針を決めた。これは文章になって残っています。それを受けて、決済を17日に次官が大臣からもらい、1月21日から内閣法制局との間ですり合わせが行われたのです。

人事院が入居する中央合同庁舎第5号館別館(人事院-Wikipediaより)

検事総長、次席検事、次長検事そして検事長の任命権者は内閣

須田)そのなかで、ここは少し難しく複雑になってしまうのですが、そもそも検察官の一部の検事総長、次席検事、次長検事、そして検事長という職にある人たちは、天皇の認証によってその職に就くことができる認証官なのだから、任命権者は内閣なのです。なぜかというと、憲法上の規定です。認証という仕組みは国事行為に当たるものだから、内閣の責任と助言によって行われるという規定になっているため、「きちんとここに入れてくれよ」というやりとりになったのです。だから内閣が任命するという形が取られているのです。

宮内庁庁舎(東京都千代田区・皇居内)(宮内庁-Wikipediaより)

内部文書や、内閣法制局とのやり取りは「応接録」に残され、国会に提出されている

須田)しかも60歳以上はケースバイケースで、先ほど申し上げた人事院勧告のなかの、「職員の能力・経験を本格的に活用するため」というところですから、能力・経験がない人たちは対象にならないので、「ケースバイケースで判断します」という立て付けをつくらなくてはならない。その為にあの法案に落とし込まれて行ったのです。いま申し上げたような内部文書や、内閣法制局とのやり取りは「応接録」というところに残されていて、いまの国会に提出されているのです。与野党の国会議員はこれを見ているはずです。この一連の決定過程において透明性があり、憲法上や法律上で問題はないということを、見ている人は認識しているはずなのです。

飯田)認証官だからこそ内閣が絡まないと、逆に人事院だけで判断はできない。確かに宮内庁のホームページにありますけれど、認証官の任命式は検事総長、次席検事、検事長その他を見ると、国務大臣や副大臣、特命全権大使など、そのくらいのレベルの人が認証官になっているので、相当偉いのですね。

須田)最高裁の判事であるとか。しかも最高裁の判事を任命するのは内閣ですから。そういう仕組みになっているのです。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

三権分立とは違う話~忖度が働いているというならば具体的な根拠を出すべき

飯田)三権分立云々ということとは、話が違って来るわけですね。そのロジックで行けば、最高裁判事も内閣が任命するのかということになってしまって、三権分立がおかしいではないかという議論にならないといけないのに、そこは誰も指摘しませんね。

須田)ただ1つ懸念が残るところは、そういう仕組みになっているし、そういう文書は残っているのだけれども、そうは言っても裏に回って法務省が人事院、または内閣法制局からプレッシャーを受けていて、「やれと言われているけれど、文書には残すな」というやり取りがあれば別です。でも、そこは誰も検証しようがないし、もし黒川東京高検検事長の件を含めて、今回の法律でそういう圧力があったと言うのであれば、具体的に誰がいつどういう形で圧力をかけたのかを、法務検察も、松尾元検事総長も明らかにするべきです。

飯田)確かにそうですよね。官僚の人たちは、逐一メモを取るのが仕事のようなところがあるから、もし圧力をかけたのであれば、どこかに証拠があるだろうということですよね。

須田)そうなのです。そういう具体的な根拠・証拠が出て来ていない段階で、圧力があったとかなかったとか、特別な思惑が働いている、忖度が働いているというのは仮定の話でしかないのです。ですから、それほどこだわりがあるわけではありませんし、「もういいよ、別にこの国会でやらなくても」ということになるのです。

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