【ペットと一緒に vol.197】by 臼井京音
洋服を着て注目されるのと、人と触れ合うのが大好きな茶トラ猫のミーちゃんは、新型コロナウイルス感染症に関わる緊急事態宣言の発令中でも、理容室の軒先で道行く人を見守っています。
今回は、半年ほど前に紹介したミーちゃんの現在の生活と、ミーちゃんにまつわる心温まるエピソードを紹介します。
コスプレ看板猫、健在!
東京都八王子市の理容室ゴールドの入口脇で、1日の大半を過ごす12歳の猫がいます。この看板猫ミーちゃんは、理容室の来客だけでなく、天気と機嫌がいいときはコスプレ姿で表に出て、道行く人をいつも笑顔にしているそうです。
新型コロナウイルス感染症の拡大予防のため、4月30日~5月6日はゴールドも休業し、5月7日以降は予約制にして営業を再開しました。
「小学校が休校中でも、店を休んでいても、ミーは朝7時半になると1階に降りてドアへまっしぐら。そして『開けてニャー』とアピールをして来ます。なので、手作り衣装を着せて外に出してあげるんですよ」と、飼い主で理容師の下水流節子さんは語ります。
「あっ、ミーちゃん出てる!」
「写真撮ってもいいですか?」
「かわいい~。触ってもいいですか?」
外出自粛要請中でも、散歩やジョギングや買い物などで外に出る人々との触れ合いは続いていると言います。
「晴れない気持ちで自粛生活を送っている方々に、少しでも笑顔を届けられているみたいで、うれしいです。ミーのことは、1組触られるごとに濡れタオルで拭いています。はやく、そのようなことをしないで済む日常が戻ればいいんですが……」(節子さん)
ミーちゃんは陽気がいいと、毎日朝から理容店の閉店時間まで屋外の椅子に満足そうな顔をしながら座っているそうです。
差し入れや手紙をもらって大満足
ミーちゃんはご近所の人気者で、差し入れもよくもらうとか。
「愛犬の散歩ついでによく寄ってくださる八王子市内の獣医師のアキ先生から、先日は手作りマスクをいただきました。ミーの衣装としてですが、つけ心地を考慮して、鼻は覆わず、首の後ろで結ぶタイプになっています。ステキな柄もとても気に入っています」と、節子さんは微笑みます。
ミーちゃんに登下校を見守ってもらえなくて寂しいという休園中の幼稚園生が、先日は手紙を持って会いに来てくれたと言います。
「いつもありがとう、と書いてありました。何だか、こちらこそ、ありがとうという気分になりましたね」と語る節子さんは、その手紙をミーちゃんの椅子にさっそく貼り付けたそうです。
普段どおりの姿が癒しに
下水流さん夫妻はある日、お客さんではないけれどもミーちゃんの写真をよく撮って行く方に事情を聞いたところ、思いがけない答えが返って来たと言います。
「病気のご友人に、ミーのコスチュームが新しくなる度に写真を送っているそうなんです。ミーの姿をスマホ越しに見ては、とても喜んでくださっているそうで……。会ったことがない方のお役にも立てていたと知り、驚きましたしうれしく感じました」(節子さん)
そこで、ミーちゃんをとおして新型コロナウイルス感染症の拡大によって大変な思いをされている医療従事者を励ましたいと、節子さんは2種類の衣装を作ったそうです。
看護師さんコスチュームは、ミーちゃんと違って人見知りな同居猫のチャー(茶)くんにも着せて写真を撮りました。
「ミーもチャーも、当然ですが新型コロナのことなど知らず普段どおり。実は、チャーはミーより早起きで、朝4時半になると『外でお散歩したいニャー』と言いながら私を起こします。なので、リードをつけて近所を散歩してあげるんですよ。
こうやって、チャーやミーと日常のルーティーンで生活をしていると、『最近は日が昇るのが早くなったなぁ』とか『もうアジサイが咲き始めて、かわいいな』とか、ほっこりと心がなごみます」
節子さんは、イライラしているときや不安なとき、撫でた愛猫たちがゴロゴロと喉を鳴らしてくれると、心がすーっと落ち着くとも語ります。
「ミーの新作衣装は、梅雨をイメージしたカタツムリ。夫には『う~ん、微妙だな。背中に背負っているのはまるで……』と、笑われました。もう少し、改良が必要ですかね(笑)」
愛猫たちとの関わりをとおして笑顔にもなれると語る下水流さん夫妻だけでなく、いつもどおりの姿でどんなときも寄り添って心癒してくれるペットたちに、あらためて感謝せずにはいられません。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。