【ペットと一緒に vol.196】by 臼井京音
オカメインコの里親になったあと、気が強すぎてペットショップで売れ残っていたコザクラインコも迎えた、蜂巣文香さん。今回は続編として、不思議な行動と感性で蜂巣さんを大笑いさせる、コザクラインコのさくらこちゃんのエピソードをメインに紹介します。
見た目は美しいけれど中身は極悪!?
カメラマンの蜂巣文香さんがアメリカで迎えた、オカメインコのおちゃめくんが帰国して15歳になったころ、コザクラインコのさくらこちゃんが新しく蜂巣家に仲間入りしました。
「ストーカーのように私のあとばかりをつけ回すおちゃめくんを見ながら、『俺にもそんななついてくれる小鳥が欲しいなぁ』と言った夫のために迎えたんですよ。なので、さくらこのケージの掃除もエサやりも夫が行っています。でも結局は、なぜか私のほうに懐いています」と、蜂巣さんは言います。
コザクラインコのメスは気が強いことで知られているそうですが、なかでもさくらこちゃんは最強の気の強さを持ち合わせているようで、ペットショップで売れ残った理由にもうなずけるとか。
「覚悟して迎えましたが、さくらこに5cmまで近づくと目が三角形になり、くちばしを開いて威嚇顔になります。それ以上近づくと、ガブっと咬みついて来ます。それも、指のいちばん痛い場所を的確に狙って。これまで何度、流血したことか……。機嫌が悪いと、ごはんや水入れをひっくり返したりもします。なので、夫とは“極道の妻さくらこ”とも呼んでいるんです(笑)」
さくらこちゃんのそのような性格も個性としておおらかに受け止め、蜂巣さんはおちゃめくん同様に何も無理強いせず尊重していると語ります。
「おちゃめくんと同じで、ケージの扉を開け放したままで飼育しています。たまに、室内を飛んだあと私や夫の肩にとまったりしますが、『あら? うっかりしちゃったわ』という顔をしているのがおもしろいですね。家族が見ているときだけ遊ぶのも、さくらこならでは。でも視線が注がれなくなるとつまらないのか、ひとり遊びをやめてしまうんですよ」
蜂巣さんは、小鳥によってそれぞれの性格が大きく異なることに気付かされたそうです。
驚きの行動の連続
コザクラインコのメスは、自分の羽の一部をくちばしでもぎ取り、尾に入れ込んで自分を美しく見せるという習性があります。さくらこちゃんの場合は、自分の羽ではなくてテーブルに置いてある紙類をまっすぐにちぎり、しっぽに付けるそうです。
「光熱費の納入用紙をビリビリにされることも、しばしば。焦りましたが、何とかコンビニでバーコードは読み取ってもらえました。その代わり『ねぇ、この封筒を開けて』と、さくらこに渡して仕事をしてもらったりもしています」と、蜂巣さんは笑います。
そんな個性派のさくらこちゃんが5歳になったころ、ある騒動が起こりました。ペットのインコのメスでも無精卵を産むこともあるそうですが、さくらこちゃんの卵管に卵が詰まってしまったのです。
「私が撮影で海外にいる間の出来事でした。朝、さこらこがぐったりしている様子に気づいた夫が動物病院に電話して『仕事が終わったら連れて行きます』と言ったところ、『仕事とペットの命とどっちが大切なんですか!』と看護師さんに言われたとのこと。
慌てて連れて行った病院から『緊急手術が必要らしいけど、同意するよね』という国際電話を受けました。『もちろん』と言ったあとドキドキしながら夫からの連絡を待ったところ、手術は成功と。けれども獣医師から『あと10分、処置が遅れていたら命を落としていましたよ』と伝えられたそうです」
蜂巣さんの夫は、「さくらこが自分にそこまで懐かなかったのは、小さくても尊く大切な命を預かっているという心構えが足りなかったからかもしれない。看護師さんの一言で目覚めたし、目の前の命に対する責任感が芽生えたよ」と、帰国した蜂巣さんに語ったそうです。
退院後は、卵が再び詰まらないように、食事内容を見直したりして対処をしたと言います。
「卵を産み続けると、メスの体への負担も大きくなるそうなので。なるべく産まずに生活できるようにとエサを変えたところ、以後は産まなくなって一安心です」(蜂巣さん)
マイペースなおちゃめくん
さくらこちゃんとおちゃめくんは、それぞれマイペースに過ごしていたそうです。
「勝気なさくらこは、一緒に飼っていたウサギ(ロップイヤー種)の背中に乗って、お尻をつついたり噛んだりしていましたけど(笑)。おちゃめくんは、私以外には興味がないようでした」と、蜂巣さん。
おちゃめくんも、さくらこちゃんに負けず存在感たっぷりで、蜂巣さんを何度も笑わせていたとも語ります。
「寝ているところにブランケットをかけてあげたら、なぜか『ロップーっ』とウサギの名前を絶叫したり。あと、おちゃめくんはハエや蚊が怖いみたいなんです。家のなかに虫が入って来ると、トサカを立てたまま床を歩いて椅子の脚の裏に隠れたりしていました。虫の姿が見えなくなるまで、オカメインコが驚いたときの特徴である、トサカを立てたまま……。『襲われるかもしれないカラスが窓に近づいて来ても平気なのに、何で虫?』と、いつも笑いながら突っ込んでいました」
さくらこちゃんオリジナルの感性や寝相とは?
蜂巣さんのあとを追い続けたおちゃめくんは、2017年に27歳で大往生したそうです。現在、さくらこちゃんは15歳とのこと。
「相変わらずの“極道の妻”っぷりを発揮していますよ。先日は、テレビに映っていたお笑い芸人がワイワイと騒いでいる様子にイラっと来たのか、テレビの画面を突いたり蹴ったりして激しくキレていました(笑)」
蜂巣さんはさくらこちゃんが荒れ始めると、ヒーリング音楽をかけたりするそうです。
「すると、自らケージに戻って行きます。そして何と、エサ箱の上部に体を横たえ、止まり木を枕にして人間みたいな姿勢で寝たりするんです。おちゃめくんには見られなかった寝相なので、『わっ! 死んじゃった?』と何度も仰天しました」
これからは、どんな行動で蜂巣さん夫妻を笑わせるのか、さくらこちゃんの今後が楽しみです。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。