奄美大島の“ノネコ”が東京の小学生の手でナデナデ大好き猫に変貌

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【ペットと一緒に vol.194】by 臼井京音

ニッポン放送「ペットと一緒に」

奄美大島で保護されたノネコを、東京で預かっている獣医師の箱崎加奈子さん。娘のさわちゃんの、前回紹介した頼もしい働きかけの甲斐があり、保護猫のちゃとくんは新しい1歩を踏み出すことになりました。

 

奄美大島のノネコとは

奄美大島で保護されて、2020年2月28日に一時預かり先の箱崎加奈子さんのもとへやって来た、ちゃとくんは、警戒心の高いノネコでした。

箱崎獣医師のもとにやって来た茶白のちゃとくん

ノネコとは、人から食べ物をもらって暮らしている野良猫や地域猫とは異なり、野山で野生化した猫を指す言葉です。

世界自然遺産の登録を目指している奄美大島では、野生の希少小動物の死因のひとつにノネコの存在があるとされ、「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」に基づいて2018年7月からノネコの捕獲が行われています。

2019年は125匹の猫が捕獲され、収容中に死亡した2匹を除く123匹が、奄美大島ねこ対策協議会に認定された15組(2020年3月末現在)の愛護団体に引き取られました。

「ボクたちの祖先はもとは害獣退治のために奄美大島に渡ったみたいだよ」byちゃとくん

「ノネコとして捕獲された猫は、1週間以内に引き取り手が現れないと殺処分の対象になってしまうんです。一時預かりボランティアとして手を挙げた私にとって、ちゃとは2匹目となるノネコでした。

でも、1匹目もちゃとも最初は緊張した様子でしたが、すぐに娘に慣れ、喉を鳴らしながらうっとり顔で体を撫でられていて……。人との関わりもあった、地域猫だった可能性も高いと思っています。ノネコとして捕らえられた猫の8割以上は、人馴れしていて飼いやすい性質だとボラティア仲間からも聞きます」(加奈子さん)

 

小学3年生の少女がノネコの心をほぐす

加奈子さんの娘の小学3年生のさわちゃんは、なぜか猫たちとすぐに打ち解けられると言います。

さわちゃんとちゃとくんの触れ合いのワンシーン

「もしかして、私や動物病院のスタッフなど、大人だけがちゃとと関わっていたら、こんなにも早く、新しい家族を募集できる状態になっていなかったかもしれません」と、加奈子さんは言います。

さわちゃんが、見知らぬ人に心を許さないでいる“預かりネコ”たちとあっという間に仲良くなるのを見て、加奈子さんの保護猫ボランティア仲間はさわちゃんを「まるで、“猫の妖精(※アイルランドの伝承Cait Sithにちなんで)”みたいね」と称賛しているとか。

「さわは、それを聞いてうれしかったようで、『もっと、ちゃとに大丈夫なことや好きなことが増えるように頑張る!』と励みにしていました」

さわちゃんによるブラッシングは心地よさ満点

こうして、この1ヵ月の間に、さわちゃんはちゃとくんをブラッシング好きにさせた他、ちゃとくんが自ら人の膝の上にピョンと乗って来るトレーニングにも取り組んだそうです。最近は、「ゴハンちょうだいニャ~」と、人の目を見ながらアピールして来るまでになったとも言います。

ここまで来れば、もう安心。ちゃとくんは、保護猫の里親募集サイトで新たなご縁を待つことになりました。サイトには「控え目な性格ですが、撫でられるのが好きなハンサムな茶白の男の子」と紹介されました。

ごはんを使って膝の上に乗せるトレーニング中

少女が書いた手紙とともに……

ちゃとくんの譲渡先募集からほどなくして、加奈子さんと同じ獣医師夫妻からの応募があったとか。

さわちゃんと近い年齢の子供もいるその家族とのお見合いの日、さわちゃんはちゃとくんの紹介役を務め、魅力をたくさんアピールしたそうです。その甲斐あり、譲渡希望の家族はみんなちゃとくんを気に入ったと言います。

「ちゃと、幸せになってほしいなぁ」

そう言いながら、さわちゃんは4月30日のトライアル期間のお迎え日に備えて手紙を書きました。

ちゃとくんのお見合い中の様子

『ちゃとのかいぬしさんへ ちゃとをかわいがってください。(中略)

食べれるものは、おさしみ、ゆでたまご、あじがついてないもの、おさかなです。ほかには、ありません。トイレもできます。ごはんはたべます。いやがることはしないでください。よしよしもできます。ブラシがすきです。おもちゃは、きぶんです。

ちゃととさわより』

「ちゃとくん幸せになってね! また次の猫ちゃんとも仲良くなるから」と、ちゃとくんと別れの日のさわちゃん

お迎えの日

約1ヵ月をさわちゃんと過ごしたちゃとくんは、いよいよ2週間のトライアル期間に入ることになりました。

「里親募集サイトで見て、娘も私たち夫婦もちゃとくんがかわいいと気に入ったのが、応募のきっかけです。8歳と5歳の先住猫がいますが、まだまだ元気いっぱいの5歳のコと、推定1~2歳のちゃとくんが遊んでくれたらうれしいですね」と、ちゃとくんを迎え入れるAさん夫妻は語ります。

Aさん家での新しい生活の幕開けです

奄美大島でのノネコの捕獲は、2020年4月現在も行われています。新型コロナウイルス感染症対策で外出自粛が続くなか、保護猫の譲渡会を開催できず、ちゃとくんのケースのようにノネコたちも里親募集サイトで細々と新しい家族との縁を待つ状態だそうです。

そんな状況下で、休校中の小学生のさわちゃんがちゃとくんの人馴れやブラッシング慣れに時間をたっぷり使えたように、明るい希望の光も灯り続けています。

「次の猫ちゃんと触れ合うのが楽しみ」と微笑むさわちゃんのもとに、次もまた、人に撫でられる心地よさに目覚める保護猫がやって来ることでしょう。

さわちゃんが書いた手紙

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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