中国版GPS「北斗」の完成によって広がる米中覇権争い
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月24日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。中国が完成させた独自開発の衛星測位システム「北斗」について解説した。
中国版GPS「北斗」が完成~宇宙分野でも米中の覇権争いに
中国は23日、中国版GPSとも呼ばれる独自開発の衛星測位システム「北斗」を構成する最後の人工衛星の打ち上げに成功した。これにより中国はアメリカのGPSに依存しない独自のシステムを完成させたことになる。
飯田)宇宙に向かって手を広げているという感じがありますが。
高橋)GPSのシステム自体はコピーすれば簡単にできるので、難しい話ではないのですが、このGPSをいろいろな国が使うとなると、位置情報などのビッグデータが中国に抜ける可能性があります。そうなれば、中国はデータを抜いてますます巨大になる気もします。軍事利用ではなく、民間ならばシステムは2つあった方が便利でしょう。
飯田)アメリカのGPSと、両方使う。
民生利用であれば「北斗」のGPSを使っても問題ないが、ビッグデータが抜かれる可能性
高橋)民間であれば。ただし、軍事情報ということになると、使うことができないでしょう。
飯田)あるいは情報を抜かれて。
高橋)抜くことは技術的にできます。
飯田)自分のところで打ち上げている衛星ですからね。
高橋)衛星電話を抜くのと似ています。抜くことは可能ですし、すでにしているはずでしょう。
飯田)日本がアメリカのGPSを使っていることを考えると、当然アメリカも抜いている。
高橋)いざというときは抜けます。逆に有事になれば切れるような状態になっていると思います。
飯田)「演習があると、カーナビがずれる」ということが都市伝説として言われていますが。
高橋)中国のことを考えたら、自前のシステムということになるでしょう。日本の場合はコストパフォーマンスを考えると、ここだけ自前にしたところで、他のシステムがすべてアメリカですから、いまさら無理だと思います。
飯田)日本は自前の人工衛星「みちびき」を、いくつか打ち上げていますけれども。
高橋)自前で少し持っていることが重要です。「日本もいざというときは、自前で開発できる」という潜在力を持っていればいいと思います。
飯田)実際の運用や、国を守るとなると、日本の場合は日米安保条約が軸になります。
高橋)そうでないと守れません。例えばイージス艦もいろいろな連携を取って、データを集めないとやりようがありません。中国の場合、自前のGPSシステムを使うということはわかります。ただし他国がこれを利用すると、情報を抜かれるということは覚悟しておいた方がいいと思います。
飯田)そうすると宇宙分野でもこれから先、「どちらの陣営に入るか」ということになる。
高橋)GPSなら両方使うことも有り得ると思います。民生利用であれば、どちらを使っても不都合はないと思います。例えばスマホで中華製と2つ持つように。日本で利用できるのであれば、どちらでもいいと思います。「位置情報はどっちが正しいのか」などと使えばいいのです。
宇宙開発にもルールが必要になって来る
飯田)そういう便利な部分は両方使える。軍事面で言うと衛星が重要になりますが、それを守るにはどうするかですよね。
高橋)衛星を撃ち落とすのは簡単ですからね。
飯田)中国は10年ほど前に、地上からミサイルで衛星の破壊実験をやっていますね。
高橋)簡単にできます。だから、それを守るときにどうするかですよね。衛星はたくさんありますが、正式軌道に乗らなくてはならないので、ある程度の数しか飛ばせません。物理的に距離も決まるので、そろそろ満杯になって来ているのではないかと思います。
飯田)そして、古くなったものをどう処分するかも問題です。
高橋)大問題です。落とせばいいのですが、意外に丈夫なのでそのまま落ちて来てしまうこともあります。昔のものならば、そのまま燃え尽きますが。宇宙もどちらの陣営に入るかですね。宇宙もみんなのものではなくなって来ています。
飯田)何かルールをつくらないといけない。航空自衛隊のなかに、宇宙作戦隊というものができるという話です。
高橋)すごい世界になりましたね。レーザー兵器も現実化するでしょうからね。中国もそろそろ覇権を狙うことをやめていただいた方が、世界平和のためになるのではないかという気がします。
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