日本にとって台湾が重要な2つの理由~台湾軍が「漢光演習」実施
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。16日に実施された台湾軍の「漢光演習」について解説した。
台湾軍が中部・台中の海岸と周辺海域で軍事演習を実施
台湾国防部(国防省)は16日、中部・台中の海岸と周辺海域で定例の軍事演習「漢光演習」の一部を実施し、報道陣に公開した。この演習は13日~17日までの5日間の日程で実施。16日は、周辺海域に到達した敵軍(中国軍)が上陸を試みる場面を想定して、陸海空軍による攻撃訓練を行った。主力戦闘機のF16や経国号(IDF)をはじめ、艦艇、戦車など48種類の装備が使われた他、軍人ら8000人以上が動員され、およそ30分にわたって訓練を続けた。
飯田)中国は台湾の防空識別圏に入ったり、いろいろプレッシャーをかけております。
宮家)人民解放軍が、台湾を制圧する能力をすでに手に入れたと言われたのは2002年ごろ、私が北京にいたときの話です。当時は極秘だったのかも知れませんが、アメリカ政府の友達が「いまや中国軍が強力になっていて、台湾は単独では守れない」と言っていたのを思い出しました。
日本にとって~台湾が中国の一部になれば中東までの最短距離のシーレーンが使えなくなる
宮家)こういう演習を台湾がやるのは当然なのでしょうけれども、日本から見て考えると、2つポイントがあると思います。1つ目は明治維新以来、台湾という島を、日本に対して敵対的な勢力が支配したことはないのです。だからこそ、マラッカ海峡から中東までの長い距離、日本から考えれば長いシーレーンの最短距離を通れているわけです。台湾の横を通ればいいのですから。しかし、もし台湾が敵対的な勢力の手に落ちれば、当然、台湾の太平洋側は軍事基地化します。そうすると、恐らく南シナ海もそのときまでには中国の支配下になっているでしょうから、日本はシーレーンの最短距離を通れないということになります。
飯田)では、あそこをまっすぐ下がって行って、インドネシアの方を回って……。
宮家)回って行くか、台湾の東方を少し迂回して行かなくてはならなくなるかも知れません。つまり、第一列島線の外側を行かなくてはいけない。これは大きな問題だと思うのですよね。
日本は台湾問題について「中国の意見は尊重するが、同意しているわけではない」
宮家)もう1つ大事なことは、台湾とは一体何なのかということです。台湾について、中国は「中国の一部だ」と言っているのですけれども、そのような中国の考え方を、日本は日中共同声明で「理解し尊重する」と言っているのです。「理解し尊重する」というのはどういうことかと言うと、それはまさに、理解と尊重であって、「同意する」とは一言も言っていないのです。「中国の意見はわかって尊重するけれども、同意しているわけではありませんよ」ということが言外にあって、その上で日本は「中国と台湾の問題については平和的に解決してくださいね」と言っているのです。台湾が中国の一部だということについては、皮一枚ですが、明言していない。ではアメリカはどうかというと、同じようなことをやっています。アメリカも中国とは共同コミュニケを出していて、中国が台湾を一部だと言っていることを“acknowledge”すると。「受け入れる」のではなく、「そういう認識はしています」とだけ言っている。
飯田)わかっていますと。
中国が台湾に武力攻撃すれば日本の領海、領空を侵すことになる
宮家)そう、しかし、「同意はしていない」ということです。ですから、日本もアメリカも、台湾の問題が中国にとって大事な問題ということはわかっていますが、基本的に「現状維持をしましょう」と言っているのです。そして、台湾問題を解決するときは武力攻撃などせず、あくまでも話し合いで、平和的に解決しなくてはいけないと言っています。以上を全部合わせるとこうなります。日本にとって台湾という地域が戦略的に極めて重要であり、海洋国家として、貿易立国として、シーレーンの関係でも、日本にとってはどうしても重要な地域ですから、そこで交戦されては困るわけです。いまの状況を見ると、中国が本気で台湾を解放しようとしたら相当熾烈な争いになるでしょうから、それは避けたいのですが、もしそれが起きたら、日本の領海や領空が戦域になる可能性が高い。与那国島だって100キロくらいしかないですから。台湾を落とそうと思ったら、中国はあの島を包囲しなくてはいけません。そうなると日本の領海、領域を侵す可能性は十分にあります。つまり、これは日本の有事でもあるということになります。その意味でも、台湾問題は非常に重要ということです。
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