台湾が中国の「一国二制度」を受け入れないこれだけの理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月8日放送)にジャーナリストの有本香が出演。台湾の蔡英文総統が台北市内で「一国二制度は受け入れられない」と述べた発言について解説した。
台湾の蔡英文総統~一国二制度は受け入れられないと述べる
台湾の蔡英文総統は5日、台北市内で海外の報道機関の取材に応じ、中国の習近平国家主席の提案する一国二制度は受け入れられないと述べた。
飯田)台湾と中国本土の関係について、92年にあったとされる92年コンセンサスというものがありました。1つの中国というものはお互い認める、ただ、どこがそこを統治するのかはお互い意見があると言っていたのですが。
有本)そのときのコンセンサスのまとめに、蔡さん自身も、その後も含めてかなり関わっている人で、それはよく分かっています。この一国二制度を、日本でも意外と簡単に使う方が政治家も含めていらっしゃいますが、中国の言う一国二制度がどんなものなのかは、いまの香港を見れば明らかです。香港における一国二制度は、「香港返還から半世紀はいまの態勢を維持しますよ」ということを約束していたはずだけれども、半分が過ぎた時点でそうではなくなっている。中国がいろいろな形で香港を支配して行く。そして香港が持っていたはずの自由がなくなって行くということを意味しているわけですから、台湾が受け入れられるはずがない。
飯田)民主的な選挙をやっているからと言うのだけれど、その前段の立候補すらさせないという状況。当選してもそれを取り消すとか。
有本)反体制派という人がいたら、中国側の当局の人が入って来て拘束して、身柄を持って行ってしまうみたいなことになるわけですから。
飯田)香港のなかで中国本土の警察権が行使される。「これ二制度じゃないじゃん」って話ですよね。
有本)実はその蔡英文政権も政権基盤が揺らいでいますよね。総統になって2年経って、いろいろ選挙の結果も厳しかったわけですけれども。
飯田)この間の統一地方選は厳しかったですね。
香港の現状を見て、台湾が「一国二制度」を受け入れることはない
有本)統一地方選は負けました。与党としての党首選をやったりしています。これは蔡英文さんが支持している人が勝ちました。でも、中国側の習近平国家主席が一国二制度を言い始めると、逆に蔡英文政権に利する結果になると思いますよ。台湾の人たちが絶対そんなもの受け入れるはずないですから。
飯田)経済はつながっているので現状維持まではありだけれど。
有本)いえ、そういう政治的な言葉を発した時点で逆の作用が生まれますよ。
飯田)92年コンセンサスは1つの中国は認めるけれども、統治の仕方は各々考えがあるということではないですか。一国二制度ということは、全面的に中国の主張を台湾も受け入れろということなのですよね?
有本)そうですね。中華人民共和国の主権に入るということですから、そんなこといまの台湾の人たちが受け入れられるはずがないですよ。
飯田)いままでは中国側が92年コンセンサスを維持せよと言って来たけれど。
有本)逆に、自分たちが破棄しているという話なのです。
TPPにおいて、日本がアジアでどうイニシアチブをとるか
有本)92年といまとでは、台湾と中国の経済力を中心にした国力の関係が大きく違っているということです。ですから、あの当時と直後に関して言うならば、中国にとってみればあれを大事にしろと言うしかなかったのだけれども、いまやそうではない。明確に台湾を「飲み込むぞ」となって来ているわけです。
ただ日本側が考えなくてはいけないのは、一見違う話なのですが、去年の年末からTPPが発効しましたよね。TPPは日本に事務局が置かれているので、事実上日本が事務局のようなものです。去年国会でもやり取りがありましたけれど、いくつかの国が入りたいと言っている。アメリカはどうしていくのだという点はありますが、入りたいと希望している国のなかに台湾も含まれています。このあたりを日本がどのようにするかということもあります。
一方では米中の鍔迫り合いが激しくて、中国が困って日本側に助けを求めて来たという状況です。日本がそれを半分受け入れた。これに関して、韓国の外交通と呼ばれる論客たちからは「日本はいま凄く良い立場だ。それに対して韓国は全く外交が機能していないから、今後どうなるか不安だ」という声が出ています。TPPのことをなぜ言ったかというと、TPPに関しては韓国も色気があるわけです。これが中国にとっても、TPPは中国を外して自由で公正なルールにのっとった貿易圏を作ろうという狙いですから、ある意味安全保障の体制なのですよ。そういうなかで考えると、日本側がここでどういうイニシアチブを発揮して、そして台湾や韓国をどういう風に入れていくのか、あるいは外していくのか。こういうところも考える年になって来ると思います。
台湾を日本がどこまで支援できるかが問われる
飯田)シーレーンという面でも、経済という面でも、台湾は大変重要ですね。
有本)90年代から私もずっと思って来たのですが、日本は朝鮮半島に関しては中国との間にあるということで、日本の安全保障にとって重要な場所であると言う人はかなり多かったのだけれども、台湾はどうですかと言う話です。台湾はとても重要な場所で、一部の保守論客だけが台湾は日本にとっての生命線だということを言っていた。それを茶化すような向きもあったのだけれども、それはとんでもない不見識で、台湾は日本にとっての生命線になる国です。それでいて、戦前には50年にわたって運命を共にして来た国で、最も日本に近しい国です。この運命に関して、日本の政治がどこまで深く関与できるかということ。そしてそれが多くの台湾の人たちにとって幸せな未来を切り開く、そういうものに対してどこまで日本が支援できるかということが、いま本当に問われていると思います。
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