ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(11月27日放送)にジャーナリストの有本香が出演。台湾の統一地方選の結果について解説した。
台湾の選挙結果を受け、中国政府が「中国との関係の発展を望む人々の願いだ」とコメント
台湾で24日、2020年に行われる総統選挙の前哨戦とされる統一地方選挙が全土で行われ、与党・民進党が大敗し、中国に融和的な姿勢を示す最大野党の国民党が躍進した。この結果を受け、中国政府は「中国との関係の発展を望む人々の願いを反映したものだ」とコメントを発表した。
飯田)地盤と言われる高雄でも市長選で負けたというのは大きいでしょうね。
有本)本当に痛手でしょうね。今年の8月の終わりに台湾に行きまして、国立政治大学という大学で、講演をさせてもらいました。台湾の情報はたくさん日本に入って来ますし、人の行き来も当然多いので台湾のことを知っているというイメージがあります。文化面ではすごく伝わって来るわけですよ。台湾の食事は美味しいとか、ドラマや芸能のことはよく知っている。だけど、台湾の政治がどうなっているかは、案外分かりづらいところがあります。総統選で蔡英文さんは勝ったけれども、実は政治基盤が盤石かというと、必ずしもそうとは言えなかったのですよね。
今年の夏に行ったときも、この地方選挙は非常に厳しいのではないかと、そういう感触でした。2年前に圧倒的な支持を得て総統に当選した蔡英文さんに対する、国民の心理的な支持がもの凄く揺らいでいる感じがしました。どういうことかと申しますと、蔡さんを支持した若い層の人たちからすれば、改革が生ぬるく見えているのです。
国民党政権が長かったわけですから、台湾で最大の既得権益、特に公務員の人たちに対する退職後も含めた非常に手厚い制度がある。これを改革するということで切り込んだのですが、非常に厳しいところなのですよ。いままでよりは改善されて来ていますが、皆が望むほどやるわけにはいかない部分があって、そこまでできなかった。
もう一方では蔡さん自身があらゆる層に対していい顔をし過ぎている。リベラルな層から見ると政策が生ぬるい。民進党が掲げて来た政策は、例えば脱原発であり、同性婚の容認など、すごくリベラルな政策なのですよね。これを望んでいる台湾のリベラル層から見れば、蔡さんというか民進党の一部支持をしているキリスト教保守派の人たちに配慮をして、「我々が実際に望んでいることをやってくれないじゃないか」と思うわけです。台湾の多くの人たちは必ずしも同性婚の法制化を望んでいなかったり、あるいは脱原発と言っても電気代はどうなるのだという、代替案が示されないなかでは、尖ったリベラルな政策は支持を受けていないのです。
改革が思うようにできなかった蔡氏
飯田)理想は理想としていいけれどね、と。
有本)どっちつかずになっているという点で、皆にいい顔をしようとした結果、蔡さんは非常に頭の良い総統ではある。けれど政治家としてはどんなメリットをもたらしてくれたのだ、という話になるのです。
台湾で随分感じたことは、経済そのものは指標をみればそんなには悪くない。でも、成長している実感がないのです。社会も高齢化しているし。そういうなかで、いろいろな誘惑が動く。台湾がもっと経済をよくするためには、中国との関係がこれだけ悪いと難しいのではないかという情報が、随分流されていました。
そこでぐっと踏みとどまって我慢して、中国から離れて行くことを蔡英文政権に託したはずなのだけれど、国民心理は弱いところがありますから、いろいろな誘惑にかられるのですね。
飯田)前任の馬英九政権が中国にべったりし過ぎた反動で、蔡英文政権ができた。けれども、じりじりとそっちに寄る方向もあったりする。
有本)国民党サイドはそういう情報を積極的に流していますからね。それから台湾のメディアは、ほとんどが中国の影響を非常に強く受けていますから、政治宣伝的なものが浸透しているとなると、統一地方選挙はかなり厳しいような印象はありました。
飯田)その結果が出たと。
有本)そうですね。
飯田)一方で、いまの国民党トップももう70歳だし。
有本)求心力があるとは言えない。だから国民党に期待が大きいという訳ではないのです。いまは台湾自体が迷いのときにあるということは言えると思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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