ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月29日放送)に慶応義塾大学教授で国際政治学者の中山俊宏が出演。アメリカ共和党が新型コロナウイルスの追加経済対策として、1兆ドル規模を投入する法案をまとめたというニュースについて解説した。
アメリカ共和党が1兆ドル規模の追加経済対策を提案
アメリカ共和党は7月27日、新型コロナウイルスの追加経済対策として1兆ドル、日本円で106兆円規模を投入する法案をまとめた。各家庭への現金給付を再び実施する他、7月末に期限を迎える失業保険の積み増し措置について、金額を縮小した上で延長するとしている。
飯田)感染者数、死者数ともにアメリカは世界最多となってしまっているなかで、日本からすると大盤振る舞いにも見えますが、どうご覧になりますか?
追加経済対策での対立~共和党は控えめに、民主党は積極的に
中山)これには共和党は躊躇があって、あまり支援してしまうと経済の活性化を止めてしまうということで、控えめにしたい。それに対して、民主党はガンガン出すべきだということで、対立があったようです。結果として縮小ということになりました。そこが大統領選挙に向けて争点になるのではないでしょうか。
飯田)失業保険をどうするかなど。
中山)コロナ対策そのものですね。アメリカは日本からは想像できないくらいに被害が大きく、死亡率が高く、また一部の州で伸びているようです。
飯田)対立する民主党側は、トランプさんがやっていたことはでたらめだったという主張になります。一般のアメリカの人たちは、どう見ているのでしょうか?
マスクをすると反トランプ派と見られてしまう~コロナ対策を打ちづらい
中山)アメリカは生活そのものを、政治的な党派対立が巻き込んでしまっています。日本でもコロナをめぐる党派的な対立もありますが、この状況を乗り越えなければいけないというコンセンサスはあると思います。アメリカの場合は、コロナの深刻さそのものについての意見の対立があります。そもそもマスクをするかしないかが党派案件になってしまって、トランプ氏もマスクは有効性があると認めていますが、少し前までは、一部で行われたトランプ集会で、マスクをしているとリベラル派だとか、反トランプ派だと言われるような雰囲気がありました。コロナについてどういう対策がベストなのかではなく、党派案件として、相手を攻撃するための素材となってしまっているところが、いまのアメリカは難しいな、不幸だなという感じがします。
飯田)そうすると、有効な政策が打ちづらい状態ですね。
中山)打ちづらいですし、医療関係者等が提案していることと、トランプ大統領の見方が違ったりすると、医療関係者が党派的な行動を取っていると糾弾されてしまうことがあります。その辺が状況を悪化させているのは明らかです。
90年代から始まったアメリカ社会の分断~どの大統領も抑えることはできなかった
飯田)これを社会の分断と言うこともできると思いますが、トランプさんが分断させた、というような報道の仕方もあります。社会全体の雰囲気は昔からこうだったのですか?
中山)分断自体はトランプ大統領の責任ではありません。分断を増幅させて、自分のパワーにしているところはあると思います。分断はクリントン大統領の90年代から始まって、それぞれの大統領が「自分こそが分断を乗り越えられるのだ」というメッセージを出していました。ブッシュ大統領も分断を煽ったという雰囲気ありますが、彼は2000年の大統領選挙で、「自分が分断を抑えられる」ということで出馬しました。
飯田)ブッシュ・ジュニアですね。
中山)でもクリントン、ブッシュ、オバマ大統領にしてもそうですが、分断を克服できるというメッセージを掲げつつも、結局、自分の政権が終わるときには、分断が深まっているという状態でした。一応、これまでの大統領は「分断を抑えなければ」ということでやって来たのですが、トランプ大統領の場合は分断そのものを煽っています。ただ、分断そのものを彼がつくったかと言うと決してそうではなく、元々あるものです。分断に関して言うと、誰かが来てまとめるという出口は見えません。オバマ大統領がそうでした。根拠はありませんが、「この人ならできるのではないか」いう期待があったけれど、いまは「ナイーブ過ぎたよね」というのが多くのアメリカ人の意見です。オバマ大統領に期待を託した自分自身の選択を問うているような面があります。
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