日本の「緊急事態宣言」とアメリカの「国家非常事態宣言」の違い

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月10日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。愛知県と京都府が緊急事態宣言の対象地域への追加を要請したニュースについて解説した。

新型コロナ・京都 マスク姿で四条大橋を行き交う人たち=2020年4月9日午前、京都市 写真提供:産経新聞社

愛知県が緊急事態宣言を追加指定で調整~京都府と京都市も対象地域への追加を要請

国内で確認された新型コロナウイルス感染者の累計が5000人を超えるなか、緊急事態宣言の対象地域への追加を要請する自治体が相次いでいる。愛知県の大村知事は9日午前、緊急会見を開き、緊急事態宣言の対象地域に愛知県を加える前提で政府と調整を進めていることを明らかにした。また京都府と京都市は、緊急事態宣言の対象区域に京都府を加えるよう政府に要請する模様で、10日午前にも西脇知事と門川市長が共同記者会見を開き、表明するとのこと。

飯田)愛知でも、感染経路のわからない感染者が2割ほど。東京、大阪と比べて低いということもあり、最初は指定されませんでした。

宮家)日本は面積の小さな国ですから、隣の都道府県が指定されたら、こちらに来るかも知れないと思うのは当然です。首長さんが危機感を持って、このような考え方をされるのは当然だと思います。

【新型コロナ感染拡大】東京・銀座ではマスク姿の人が目立った=2020年4月2日、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

最悪の事態が起きたら、どういうことが必要になるのか

宮家)こういう危機が来たときには「できるだけ早く厳しい措置を取りましょう、徹底的にやりましょう」という人と、「徐々に様子を見ながら慎重にやりましょう」という意見を持つ人の2つがあると思います。突き詰めて言うと、「経済を優先的に考えるか、人命を優先的に考えるか」ということなのですが、これは決して「鶏と卵」の関係ではないと思います。私は経済ももちろん大事だけれども、人命を守ってこそ経済があると考えます。そうすると私ならウイルスの怖さを過大評価してでも、悲観的にやろうとする。これがいまの各首長さんの考え方だと思います。政府が経済だけ重視しているという趣旨ではないけれども、両者のバランスをとるのは極めて難しいなと思います。

飯田)危機管理の面でいうと、最初の実施は悲観的にやる方が、被害が少ないということですね。

宮家)最悪の事態をまず考えて、それが起きないためにはどうするかということよりも、まず「最悪の事態が起きたら、どういうことが必要になるのか」を考えて、そのうえで最善を希望する。それがリーダーの仕事だと思います。

新型コロナ/閑散としたニューヨークの街並み=2020年3月17日 写真提供:時事通信

ニューヨークと日本の大きな違い

飯田)この番組は、海外に対してもPodcastやYouTubeで配信をしているので、海外からのメールやツイッターも来るのですが、やはり海外に比べると日本は緩いのではないかという指摘や、驚きを寄せられるものもあります。

宮家)今朝も起きてすぐにCNNを観ていたら、日本の映像が映っていました。ニューヨークの映像と比較しているのですが、ニューヨークは非常事態宣言を出して街には誰も歩いていないのに、日本はなぜこんなに混んでいるのかと、アメリカ人は不思議で仕方がないのだと思います。彼らにとって、非常事態宣言とは外出禁止に近いわけです。それに対して罰則もあるのだと思います。でも、日本はそうではありません。その部分のギャップがまだ日本では理解されていないという気がします。

飯田)メールも届いています。横浜市の“港のヨーコ”さん、「外出自粛を訴えながら、一方で時間短縮とはいえ居酒屋やレストランが営業して行く。やることが矛盾していないでしょうか。やるのであればきっぱり覚悟を決めて、徹底的に自粛するような対応をするべきだと思います」というご意見もいただいております。

宮家)これは先ほども申し上げた悲観的な意見ですが、間違ってはいないと思います。

飯田)新型インフルエンザ等対策特別措置法が最初にできたのは2010年ごろだったと思うのですが、そのときは私権の制限との兼ね合いで、要請がベースになるという落としどころでした。

緊急事態宣言を発令し会見で国民に協力を呼びかける安倍晋三首相=2020年4月7日午後、首相官邸  写真提供:産経新聞社

政府が強い権限を持つことに対し、戦前の記憶が残っている日本

宮家)日本には戦前の記憶が、どこかに残っているのでしょう。ですから政府が過剰に基本的人権、私権を制限するのはまかりならんと。私権制限をできるだけ抑制しなければならないというのは正しいのだけれども、このような時期には、ある程度、私権を制限してでも非常事態宣言を出して、いままで以上に締めなければいけないというときもある。その準備という点では、諸外国は非常事態宣言に関する制度や法令を予め持っていて、かなり強い権限を中央政府、もしくは地方政府に認めています。残念ながら、日本はそれがつくられて来なかった。それはすばらしいことでもあるのだけれど、いまのこういう状況では、制度設計の欠陥が若干露呈していると言わざるを得ません。ただし私は、何でもかんでも厳しく取り締まれと言っているわけではない。

米疾病対策センター(CDC)を視察するトランプ大統領=2020年3月6日、米ジョージア州アトランタ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカではこの事態に託けて政府が大きな権限を持つことの批判も

宮家)いまのアメリカの新聞、例えばニューヨークタイムズには、最近こういうパンデミックを口実に中央政府が必要以上に私権を制限している、強力な権限を持つようになっているが、これはよくない、という記事が出ています。ハンガリーの大統領がその典型例ですけれども、すべてが大統領令で決められてしまうとなると、それは行き過ぎですよね。日本が戦後、この種のことに慎重であったことは正しいと思うけれども、もう少し厳しくしてもよかったのではないかという気はしています。

飯田)諸外国の制度としては、一部権限が強すぎるというところもありますが、後で議会で検証するようなシステムを入れているところもあります。

宮家)アメリカでも既に議論が始まっています。アメリカの大統領は、何と136もの法律に基づき権限を行使できる国家緊急事態法なるものがあって、大統領が必要な権限を使えるように法的に準備されています。それに対しては補償の問題ももちろんあるのですが、法律で何がどこまでできるかを書きこんでいて、それによって民主主義のもとで、公共の利益と人権の一定の制限とのバランスを取っているのです。日本はそこがゼロだから、補償金は協力金になり、禁止は要請になる。その場、その場で臨機応変に対応しなければいけなくなる。それがいいのか悪いのかについては、現状が一段落したら、この問題についてもう1度反省し、検証する必要があると思っています。

 

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