アメリカ大統領選~ポイントになるのは9月の討論会
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月20日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘を電話ゲストに招き、今後のアメリカ大統領選の行方について解説した。
アメリカ大統領選~バイデン氏の民主党はトランプ政権との政策の違いを鮮明に
11月のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指し、バイデン前副大統領を党の大統領候補に正式指名した野党・民主党は、日本時間の8月19日、全国党大会で政策の指針となる「政策綱領」を採択し、トランプ政権との違いを打ち出した。
飯田)日本時間の20日、日付が変わった辺りの時間に、バイデンさんが演説をする予定です。大統領選に向けて、日本での報道も多くなって来ました。
鈴木)結局はトランプさんが強いのではないかと言われたり、世論調査ではバイデンさんが優勢という報道もあります。
飯田)大統領選挙について、アメリカではどうなっているのか、上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘さんに伺います。前嶋さん、おはようございます。
前嶋)おはようございます。
今回の民主党全国大会はバイデン候補を売り出すためのインフォマーシャル
飯田)正式にバイデンさんが民主党の候補に指名されました。この先を、前嶋さんはどうご覧になっていますか?
前嶋)今回の党大会はオンライン開催ですので、徹底して無駄を省いているわけです。ですので、バイデンさんに指名候補として投票をするときも、まったくハプニングがありませんでした。今回の民主党の党大会は、バイデンさんをPRして売り出すためのインフォマーシャルです。バイデンさんにとっては、追い風になっているという感じです。
飯田)いろいろな有力者が演説をして、バイデンさんの性格を称え、人となりを紹介しています。1人だけ気になったのが、若手に支持のあるオカシオコルテスさんが、「私はサンダースだ」ということを言いましたよね。こうしたことは受け入れられるものなのですか?
前嶋)現職が出るとき以外は、党大会までは2~3人の候補を出すのが普通なのです。通常ならば、各州で「何票がサンダース、何票がバイデン」というようにやって行くのです。ただ、オカシオコルテスさんの言葉にしろ、与えられた時間にしろ、かなり抑制されていたように見えます。
飯田)そうなのですね。
前嶋)最初から「この時間でやってくれ」という形でスケジュールされていたと思います。通常の党大会であれば、ここで1つ揉めて、「やはりサンダースさんだ」ということをもっと言うものですが、あまり言いませんでした。
飯田)前回は「本当にヒラリーさんを支持するのか」ということで揉めましたよね?
前嶋)まさにそうです。
飯田)やはり、その辺りが反省になっているのですか?
前嶋)なっています。今回は、いかに左派のサンダースさん、あるいはオカシオコルテスさん辺りの声をうまく入れながら、中道左派であるハリスさんと、中道であるバイデンさんをPRするかという、インフォマーシャルの4日間という感じです。
バイデン氏の追い風は「反トランプ」であること
飯田)バランスをいかにうまく取って行くのか、ということですか?
前嶋)そうですね。中道であると左派は逃げてしまう。民主党側は、オール民主党でやらなければ勝てないと思っているはずです。いま、バイデンさんは追い風です。しかし、これはバイデンさんだからというわけではなく、「反トランプ」だからです。これを「バイデンさん頑張れ」となるには、もう少し民主党側が固まって行かなければならない。それを考えると、左派を取り込まなければいけないということだと思います。
飯田)スタジオには、ジャーナリストの鈴木哲夫さんもいらっしゃいます。
3ヵ月先の大統領選~どう動くか現時点では見当がつかない
鈴木)基本的な話で申し訳ないのですが、トランプさんが負ける可能性はあるのでしょうか?
前嶋)まだ3ヵ月ほど時間がありますので、何がどうなるかはわからない状況だと思います。簡単に言うと、いまの時点と3ヵ月前を比較して、2016年のヒラリーさん対トランプさんのときよりも、もう少しバイデンさんがリードしているということは言えます。しかし、最終結果は皆さんがご存じのとおりです。3ヵ月あると、先はまったくわかりません。民主党大会の後は、もう少しバイデンさんの世論調査がよくなって、トランプさんが競って行くような状況になるのではないでしょうか。
さまざまなデータを持つトランプ陣営
前嶋)これから共和党大会ですし、いろいろな世論調査が出ていますが、いちばん重要なのは、陣営がいろいろなカスタムの調査をしています。「こことここの州を獲ったら勝てる」という激戦州があるのですが、トランプさんはいままさに激戦州を回っています。民主党の党大会を潰そうという感じで、わざわざぶつけています。トランプさん側は、11月3日という選挙のゴールを見ながら、「このようにPRしたら、この州は動いて行くな」ということを計算しているのだと思います。データの部分でトランプ陣営は、2017年1月20日の就任のときから、再選の手続きをしています。そんなことをする大統領は歴史的には初めてですので、いろいろなデータをたくさん持っているのです。
選挙戦の大きなポイントとなる討論会~中国についても大きな争点に
飯田)この先のスケジュールとして、コロナでどうなるのかという話も出ていますが、討論会はやるのですかね?
前嶋)トランプさんとしては、絶対にやらなければということでしょうね。9月末に予定されている討論会で、4歳年上のバイデンさんは受け答えなどがうまくできないだろうと、トランプさんは踏んでいます。ここで一気に対決することによって、「いまはバイデンさんがリードしていても、このころにはもう追い付いている」ということが頭にあるのだろうと思います。反対に、バイデンさんが討論会でうまく受け答えをすると、「バイデンさんでも悪くないのではないか」という雰囲気が出て来ると思います。残りの選挙戦の大きなポイントは、まず討論会だと思います。
飯田)第1回討論会は、現地時間で9月29日です。ここに注目しなければなりませんね。
前嶋)後はいろいろな形で、さまざまな政策が出て来ると思います。中国の話もあります。バイデンさんは、中国の台頭を許した20年間のときの副大統領で、上院では外交委員、委員長もやっていました。「中国の台頭を許した責任はお前にある」というのが、トランプさんの立場だと思います。一方、バイデンさんとしては、「いま中国はいろいろな問題があるが、自分が大統領になれば、さらにうまく対応をする」と。中国そのものの問題も、大きな争点になるでしょう。
日本にとってはどちらがいいのか
飯田)最後に日本としては、トランプさんとバイデンさん、どちらの方が与しやすいですか?
前嶋)なかなか難しいところです。例えば中国対策など、これだけ大きく状況を変えたのはトランプさんの功績だと思います。一方で外交というのは、ある程度の計算ができなければならないので、「思いやり予算は4倍だよ」といきなり言われると、日本もなかなか大変なところです。ですので、そうした部分でバイデン政権の方が、計算はできるというところがあるかも知れません。人権的な面だと、日本の世論としてはバイデンさんの方が、と見ている人もいます。しかし、ビジネスの方からすると、やはりトランプさんだと思います。減税や規制緩和など、人によって2人に対する期待が変わって来ると思います。
飯田)それぞれの立場で、ということですね。
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